フリーランス・個人事業主が知っておきたい労働基準法の考え方と適用される要件
2024年04月10日 2024年04月19日
日本では、“労働条件の最低基準”を定めている「労働基準法」に則って働く必要があります。サラリーマンとして働いている時は、この労働基準法を会社や上司が守ろうという意識のもと労働時間や賃金などが定められていますが、個人事業主やフリーランスの方々の場合はどうでしょうか? この記事ではフリーランスや個人事業主の方に向けた労働基準法の考え方を解説していきます。
目次
労働基準法とは
- 賃金の支払の原則
- 労働時間の原則(週40時間・1日8時間)
- 時間外、休日労働
- 割増賃金(時間外・深夜・休日)
- 解雇予告 など
労働基準法は「労働権」に基づいて労働者のための保護法という位置づけのもと、さまざまな規定がされています。ここで規定されている項目は労働条件として最低限度定められているもので、有名なものでは「1日の労働は8時間まで」や「アルバイトやパートタイマーの最低賃金」などがあります。つまり使用者(会社側)は、労働者との労働契約を結ぶ際に、労働基準法が定める労働条件以下の水準にしてはいけないのです。これは、仮に労働者と使用者の間で合意があったとしても認められていません。
また、労働基準法は罰則のある法律です。違反した場合には、懲役刑・罰金刑などの刑事罰に処されることがあります。労働基準法に加え、労働組合法、労働関係調整法の2つを加えた3つの法律は「労働三法」と呼ばれており、労働に関する基本的な権利について規定されてある重要な法律であることを覚えておきましょう。
個人事業主やフリーランスには労働基準法適用されない
労働基準法が適用されるのは「労働者」
労働者の権利を守る労働基準法ですが、この「労働者」とは基本的に会社などと雇用契約を結んでいる社員やアルバイトを指します。そのため、契約基である会社の経営者(社長)や個人事業主、フリーランスは労働者に当てはまらないため基本的に労働基準法が適用されません。
無制限に働くことができてしまう
労働基準法が適用されないということは、時間など無制限に働くことが出来てしまうということ。これは働けば働くだけ稼げる業種であれば、ある意味メリットと言えるかもしれませんが、無理に働き心身に支障をきたしてしまうおそれがあります。
労働基準法が適用されるケースもある
前述で「基本的に」とつけたのは例外として個人事業主やフリーランスでも労働基準法が適用されるケースもあるためです。
労働基準法における「労働者性」と「使用従属性」
前項でわかりやすく「雇用契約を結んでる社員やアルバイト」と記述しましたが労働契約法では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われるもの」と定義されています。そのため雇用契約がなくても労働者性が認められれば労働者として扱われるため、労働基準法が適用されるわけです。以下がその判断基準となります。
使用従属性の判断基準 | ●「指揮監督下の労働」であること 1.仕事の依頼や業務の指示を拒否することができるか 2.仕事を監督されているか 3.勤務時間や場所などが拘束されているか 4.他人と替えが効くか ●報酬が成果物ではなく労務に対してであるか |
---|---|
労働者性の補強要素 | ●専業者性の有無 ●専属性(他社との仕事の制限)の程度 |
労働者性とは「本来はフリーランスとして仕事を請けているはずなのに、実際はその会社の社員のように働かされている」というものです。以下で上記表の内容をさらに詳しく解説していきます。
1.仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
仕事のやりかたなどに具体的な指示があった際に、受託者が受託の可否を決められる場合、指揮監督関係を否定する要素となります。しかし、業務内容的に従わないと遂行が難しい内容の場合や、契約上そうなっている場合などは例外になるケースもあります。
2.業務遂行上の指揮監督の有無
業務の内容や遂行方法に対して具体的な指示や、業務内容を監督されている場合は労働者性を肯定する要素となります。例えば、クリエイターが作業内容や作業をしているかどうかをオンラインで監視されている場合などは監督されているため、労働者性が高まります。
3.拘束性の有無
発注者から勤務場所や勤務時間が指定・管理されている場合、労働者性が認められる要素となります。例えば、フリーランスのクリエイターが発注元の会社で何時から何時まで働いてほしいという指示が出された場合などは該当します。ただし、アーティストにコンサートの依頼をした際など会場や時間を指定せざるを得ない場合はこの限りではありません。
4.報酬の労務対償性
基本的にフリーランスの場合「成果」に対して報酬が払われます。そのため、作品1点に対して定められた報酬が支払われる場合が普通ですが、時間に対して報酬が増減する場合などは労務対償性を肯定する材料となります。
不利な契約を結ばないことが大切
個人事業主・フリーランスはすべてが個人の責任になるのに対し、労働者は会社に守られている立場にあり、一定の収入や労働時間、福利厚生などの保証などさまざまなメリットがあります。まったく同じ労働内容なのに、そういった恩恵が受けられないとならないように、契約時には内容をしっかりチェックしましょう。契約書の内容に不安がある場合や、実際に仕事してて不安になった場合などは弁護士に相談することをおすすめします。
詳しくは以下の厚生労働省が出しているガイドラインも御覧ください。
TIPS 雇った従業員には適用されるので注意! |
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個人事業主といってもさまざまで、飲食店などのお店を従業員を雇って経営している方もいるかと思われます。法人ではなくとも、週30時間以上の労働、31日以上の雇用をした段階で労働者に該当します。その従業員には労働基準法が適用されるため、遵守しなければなりません。 |
個人事業主に労働基準法が適用された場合
このように契約内容や作業の実態次第で、たとえフリーランスや個人事業主でも労働者となり、労働基準法が適用される場合が多々あります。もしも、自身が「もしかして労働者扱いでは?」と思ったらどうしたらいいでしょうか?
金銭の請求
労働者となった場合、最低賃金、および残業代などを請求できる可能性があります。そのためには、どの程度の時間の拘束があったかが重要となりますので、そういった指示や実態となる証拠を残すようにしておきましょう。
仕事中に怪我をした
仕事中になんらかの怪我を負った場合、労災認定を受けることができる可能性が出てきます。
突然契約を終了させられた
労働者の場合は、業務委託契約ではなく雇用契約となるため「解雇」に相当します。解雇は相応の理由がない限りおこなうことができませんので、理由をしっかりと聞き、場合によっては解雇無効を勝ち取れるケースが出てきます。
上記のように、労働者であれば労働基準法により、あらゆるケースから保護を受けることができます。もし自身が労働者ではないか?と思った場合は法律の専門家である弁護士に相談するといいでしょう。
個人事業主が労働者として認められるケースと裁判での判例
個人事業主が労働者として認められ、過去に同様の問題が争点として争われた裁判がありますので、内容と判例をご紹介します。
大手メーカーが販売する住宅設備機器や建材のアフターメンテナンスを主な事業としているX社と、CE(カスタマーエンジニア)として業務委託契約を結んでいたAさん。X社の修理や補修業務などを請け負っていました。後にAさんは労働組合に加入して、X社に対して労働条件等の団体交渉の申し入れを行いました。しかし、X社は「CEとは雇用契約を結んでおらず、個人事業主がとして業務委託契約をしているため労働者としては認められない」という理由で交渉を拒否。この一連の騒動に対して労働組合側が、不当労働行為にあたるのではないかと裁判を起こしました。
判例と判決の見解ポイント
最高裁まで争われたこの裁判では、労働組合側の主張が全面的に認められ「労働組合法上、労働者として認められる」という形になりました。これは、X社が業務委託契約を結んでいたCEを事業遂行上不可欠な労働力として、組織に組み込んでいたことが大きな理由でした。X社は数百人規模で抱えているCEを管理し、全国の担当地域に振り分け業務の日時、場所、方法に関しても全て会社の指揮監督下においており、制服着用の上各種マニュアルに沿った作業内容が指定されていました。さらに、業務委託契約の内容もX社が定めた「業務委託に関する覚書」にて決められており、CE側が変更する余地もなく一方的な取り決めだったのです。これらの背景を顧みても、CE側がX者の依頼を断ることは事実上困難である専属的拘束関係。CE側が受け取る報酬は「労務対価性」が認められるがゆえ、CEとX社の関係は「労働組合法上の労働者である」と判断されたのです。
会社との力関係によっては個人事業主が「労働者」として認められる場合もあるが…
上記の裁判のように、契約している会社との力関係や実際にあたっている業務内容によっては個人事業主が労働者として認められるケースもあります。さきほどの判例のように、業務遂行にあたっての細かい指定がある、作業日などの時間的拘束がある、服装規定等の就業規則が適用される等の場合は、労働者性があるとみなされることもあるのです。
そのため、業務委託契約を結ぶ際は、契約締結時に内容を十分確認するのが何よりも大切となります。しかし、会社との力関係で契約中にも不当な要求をされながらも、なかなか申し出るのが難しい状況も考えられます。その際はまず一度労働者視点に立ち、弁護士に相談して見るのがベストな方法だといえるでしょう。
とはいえ、会社側と争うことになるのは、なるべくは避けたいところ。リスクを回避するためにも、労務管理・健康管理を自身で行うことも個人事業主としては大切な能力の1つ。契約を締結する際には、今一度しっかりと契約内容を確かめてトラブルにならないよう心がけてみてください。
もしもに備えて弁護士を付けられる保険があります
このようにフリーランスや個人事業主が不利になる契約を結ばされそうになったり、実際に行っている仕事が実は労働基準法の適用内だったというケースは多々あります。そうなった時にあらかじめ相談できる弁護士をつけておくことが大切ですが、弁護士に相談したことのない方からすると、弁護士探しや費用、相談の仕方など不安なことも多いと思います。そこで当サイトがオススメしているのが弁護士保険です。弁護士保険は月額数千円で弁護士への相談費用や、訴訟に発展した場合の弁護士費用などが補償されるため、気兼ねなく弁護士に相談できるようになります。
弁護士保険に入れば各種弁護士費用が補償される
1.トラブルに発展する前に予防できる
弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることで無断キャンセルの抑止力となります。
2.弁護士への電話相談が無料で出来る
弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
3.弁護士費用・裁判費用が補償される
それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
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