電通過労自殺事件に学ぶ:過労死防止のために経営者が行うべき取り組みとは
2021年02月28日 2022年12月01日

企業には、従業員の生命や身体の安全を確保する責任があります。しかし、その企業が過労死を引き起こしてしまう事件は、枚挙に暇がありません。なかでも、大きな関心を集めたのが、「電通過労自殺事件」です。この事件から、従業員の過労死を防ぐために、経営者が取り組むべきことを考えます。
事件の概要
1991年8月27日、電通に入社2年目の男性社員Aが自殺した。遺族は、会社に強いられた長時間労働によりうつ病を発生したことが原因であるとして、会社に損害賠償請求を起こした。
判例の結果
Aは、1991年7月頃には、心身ともに疲労困ぱいした状態になっていたが、それが誘因となって、遅くとも同年8月上旬頃に、うつ病に罹患した。そして、業務上の目標が一応達成されたことに伴って肩の荷が下りた心理状態になるとともに、再び同様の長時間労働の日々が続くことをむなしく感じ、うつ病によるうつ状態がさらに深まり、衝動的、突発的に自殺したと認められた。
事業者は、労働者が業務を遂行するにあたり、心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うべきだが、それがなされていなかったと見なされた。その結果、二審の損害額の算定(減額)についての判断を破棄、差戻しの判断が下される。その後、差戻審(東京高裁における審理)において、会社が約1億6,800万円を支払うとの内容で和解が成立した。
判決のポイント
この事件での3つ争点と、それぞれの争点がどう結論付けられたかについては、次の通りです。
(1)業務と自殺との間に因果関係が認められるか
…【因果関係は認められる】長時間労働によってうつ病が発症し、うつ病罹患の結果として自殺したという一連の連鎖が認められる。
(2)会社に注意義務違反があったか
…【注意義務違反があった】Aの上司らは、Aが恒常的に長時間労働に従事していること,
健康状態が悪化していることを認識していた。しかし、その負担を軽減させるような措置を取らなかったとして、会社の注意義務違反があったとされた。
(3)損害額算定の際にAの性格や両親の対応を減額事由として考慮すべきか
…【減額事由として考慮すべきでない】二審では、Aの真面目、完璧主義、責任感が強いといったうつ病親和的性格や、同居していた両親がAの勤務状況を改善する措置を講じなかったことが減額事由とされた。
しかし、本判決では「労働者の性格が個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格を賠償額の算定にしんしゃくすべきではない」「両親の対応についても、Aが独立の社会人として業務に従事していたのであるから、勤務状況を改善する措置を取り得る立場にあったとは、容易にいえない」として、二審での損害額の減額は違法であると判断した。
経営者が考えるべき「過労死を防ぐために必要なこと」
労働者の過労死を防ぐためには、事業者が労働者に対して、業務における過重な負荷をかけないように取り組まなくてはいけません。そのために必要なのは、まず、「労働者の労働時間を正確に把握すること」。時間外・休日労働協定(36協定)の内容を労働者に周知し、
週労働時間が60時間以上の労働者をなくすよう努めましょう。また、労働者の健康づくりの支援や、メンタルヘルス対策の積極的な推進、労働者が医師などの専門家に相談に行きやすい環境づくりに向け積極的に支援することなどが望まれます。
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