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再挑戦のための破産。自己破産後も守られる財産・資格・権利とは

2021年02月15日 2023年05月10日

会社経営・事業経営 債権・未払い 企業法務・法律
#自己破産 #破産法 #別除権 #動画解説 #破産
再挑戦のための破産。自己破産後も守られる財産・資格・権利とは
この記事の監修弁護士

弁護士法人パートナーズ法律事務所

原和良 弁護士

 

この記事の内容は、動画でもご確認いただけます。

 

前回に引き続きコロナ禍での中小企業経営者の破産について、原弁護士にお話いただきます。自己破産するとどうなるのか?自己破産後の戸籍・住民票・選挙権といった権利がどの程度守られるのか?そのような疑問についてもお答えいただきます。(前回の記事:破産手続きの流れ、制度の目的はこちら

今回のテーマは、コロナ禍での中小企業経営者の破産~その2~

コロナ禍での中小企業経営者の破産

前回、破産の一つの目的として「債権者に対する公平かつ適正な配当」があるといったお話をさせていただきました。
配当の進め方については破産管財人の下で破産法に従って一定のルールに沿って進めていく必要があります。
原弁護士
原弁護士

自己破産時の債権者への配当

コロナ禍での中小企業経営者の破産

1つ目のルールとして「別除権」言われるものがありまして、他の債権者よりも優先権を持ってる債権者がいます。
原弁護士
原弁護士
例えば銀行からお金を借りて、自宅の不動産に抵当権を設定してる場合、抵当権は支払いが出来なくなった場合の為に担保として設定されています。銀行はこの担保に入ってる物件については、任意売却や競売手続を行い、お金に換えて優先的に支払いを受けることが出来ます。
原弁護士
原弁護士

 

コロナ禍での中小企業経営者の破産

2つ目のルールとして、破産手続きを行う場合に破産管財人弁護士への報酬が発生します。
原弁護士
原弁護士
この管財人の報酬についても、優先的に支払われます。
原弁護士
原弁護士
また、破産手続開始決定以降に手続きを進める上で発生した、不可避的な費用を「共益債権」と言いますが、これも配当前に優先的に確保されます。
原弁護士
原弁護士
これら優先的に支払われる分を引いて、それでも余った場合は「配当原資」として扱われます。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
配当原資に至るまでに多くの金額が引かれるんですね。

税金の滞納、社会保険料、従業員への未払い賃金と退職金

コロナ禍での中小企業経営者の破産

この余った配当原資の支払われ方にも、優先順位があります。
原弁護士
原弁護士
一番優先順位が高いものは「公租公課」と言われる、税金・社会保険料の滞納分で、公租公課が優先的に支払われます。
原弁護士
原弁護士
そして、一般債権よりも働いていた従業員の皆さんの未払いの給与や退職金が優先して支払われます。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
従業員の方への未払い給与が一般債権より優先されていることは、従業員目線で考えると良いことですね。
はい。しかし実際のところは、配当に回せる原資が全く無いという破産事件はたくさんあります。
原弁護士
原弁護士

 

コロナ禍での中小企業経営者の破産

ただ、そのような場合、働いた従業員の皆さんの未払い給与や退職金が全く保障されないのかというとそうではなく、国の立替制度といったものがあります。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
どのような制度なのでしょうか?
全く財源がない場合であっても国から最大8割の立替金が支給されるといった制度です。
原弁護士
原弁護士
国が代わりに支払った立替金については、債権として破産手続きに加わる形となります。
原弁護士
原弁護士
この立替制度は「できるだけ働いていた労働者の賃金や労働債権を保障しましょう」といった制度です。
原弁護士
原弁護士
こういうものが支払われて、なおも余剰がある場合に、一般の債権者に対する配当が行われることになります。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
取引先が破産すると回収が難しいといったお話を良く聞きますが、この制度の仕組みを知ると一般債権を回収することが難しい理由が分かりますね。
はい。多くの企業の場合、税金や社会保険料の滞納に加え、労働債権の未払いもありますので、一般債権の配当まで行くケースは少なくなります。
原弁護士
原弁護士
配当がある場合でも、数パーセントあれば良い方で、これが破産手続きの実情だと思います。
原弁護士
原弁護士

破産時に守られる財産・資格(取締役・戸籍・選挙権・年金・生活費)

コロナ禍での中小企業経営者の破産

破産という暗いイメージから、
「いろいろと人としての自由が束縛されてしまうんではないか」といったイメージや誤解があると思っています。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
そうですね。実際のところはどうなんでしょうか?
例えば、破産してしまったら
「戸籍や住民票に破産者という記載がされるのではないか」
といった話をされる方がいますが、これは全くの誤解です。
原弁護士
原弁護士
戸籍や住民票にこのような記載がされることは一切ありません。
原弁護士
原弁護士
当然、破産しても選挙権もなくなりません。
原弁護士
原弁護士
また、法改正により緩和された内容もあります。
以前は、破産手続きが終わるまで新しい会社の取締役等の役員になれないという制限がありましたが、十数年前の会社法の改正により、破産手続き中であっても、新しい会社の役員になることができるようになりました。
原弁護士
原弁護士
ですので、今の既存事業を整理をして新しい事業に挑戦しようとした場合、破産申立をした翌日からいつでも挑戦できます。
原弁護士
原弁護士
あくまで、失敗したのは事業であって、その人の人生が失敗したわけではありません。
原弁護士
原弁護士
新しい事業に挑戦することについて、今の法律では何の制約もないということになります。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
再チャレンジしやすくなったことは良いことですね。
前回詳しくお話しましたが、破産というのは、破産者・債務者の経済的再生を図るための制度です。
原弁護士
原弁護士
当然ですが債務者は、破産手続き開始決定以降にいろいろな仕事をして収入を得ないと生活をしていくことができません。
原弁護士
原弁護士
ですので、そこで得た収入について、基本的に破産手続きは関知をしません。
原弁護士
原弁護士
過去の負債については整理をしていきますが、手続き開始以降の収入については影響を受けません。自分の生活の為、あるいは次の事業の為に基本的に100%使って構わないということになります。
原弁護士
原弁護士

 

コロナ禍での中小企業経営者の破産

それから、今の実務の運用で、3ヶ月分の生活費相当額である33万円×3か月=99万円までは、自由財産として本人が現金で持っていて良いということなっています。
原弁護士
原弁護士
一文無しになるのではなくて、少なくとも99万円は手元に持って破産することは可能ですので、それを上手く利用しながら新しい仕事でも収入を得て、再建を図っていくといった制度です。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
高齢者の方が破産された場合、年金についても貰うことはできるのでしょうか?
はい。年金も貰う事が可能です。
原弁護士
原弁護士
また、これは良くある誤解なのですが、破産をするので妻と離婚をしないといけないのか?というご相談もあります。
原弁護士
原弁護士
基本的に破産は個人の債務の整理であり、個人の再生を図るものですから、親や配偶者、それから子供達の財産が破産によって取り上げられる事はありません。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
そうなんですね。
ただ、個人保証や連帯保証の契約を奥さんがしていたり、あるいはお父さんが自分の実家の自宅を金融機関の担保に入れている場合、話は別です。この場合は契約に基づいて、債務について保証義務を負うことになります。
原弁護士
原弁護士
ですので、契約上の保証債務でない限りは、ご親族の財産が取り上げられる事はありません。
原弁護士
原弁護士
むしろ経済の再生と生活の再建を図っていくために、ご親族の支援を十分に利用して貰って構わないということになります。
原弁護士
原弁護士
最後に住宅についてですが、自宅が担保に入っている場合、その担保に基づく清算が必要になります。
原弁護士
原弁護士
しかし、賃貸住宅を借りている場合は、破産しても賃貸借契約解除の原因にはなりません。
原弁護士
原弁護士
賃貸の住宅については、引き続き家賃を払うことによって借り続けることができる、という制度になります。
原弁護士
原弁護士
乗松
乗松
ありがとうございました。
次回は、生活保護などのセーフティーネットについてお話しいただきたいと思います。

関連記事

【コロナ禍での中小企業経営者の破産と再建:その1】破産手続きの流れ、制度の目的
【コロナ禍での中小企業経営者の破産と再建:その3】事業者の生活保護申請条件の緩和・助成金・再挑戦支援資金

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