フランチャイズ契約を結ぶ際の注意点:判例に学ぶ
2020年12月31日 2022年12月02日
自身が経営する事業を拡大していく上で、1つの選択肢となるのが「フランチャイズ」です。とりわけ飲食店経営をスタートする際に利用されることが多い契約です。短期間で成果が出やすいとされる一方で、フランチャイズ契約を行う際にはそのリスクを知っておくことが必要です。
目次
フランチャイズとは
フランチャイズとは、店の名前や看板、商品やサービスノウハウなどを使用する権利をもらい、その対価としてロイヤリティを使用料のような形で本部に支払う契約スタイルです。フランチャイズ契約を行うことで、これまで未経験だったビジネスを行う際でも、最初から本部が持っているノウハウや知識を手に入れることができます。例えば、飲食店の場合は本部の看板を使うことで、既に知名度が高い状態で営業をスタートさせることができる上、仕入れルートやメニュー、レシピに加えて集客や開発に至るまでをサポートしてくれるのです。
未経験から新しいビジネスにチャレンジできるというのは、これから開業したいという人にとって、大きなメリットとなる一方でリスクやデメリットについても知った上で契約を結ぶ必要があります。実際に、フランチャイズ契約における様々なトラブルが発生しています。以下では、実際にあったトラブルと判例をご紹介します。
フランチャイズ料金(ロイヤリティ)を支払わなかった場合の判例
リハビリ型デイサービスに関するフランチャイズ契約で発生したトラブルの事例です。本部の商標を利用しての営業に対してロイヤリティを支払う一般的な契約内容になっていたものの、ロイヤリティやその他特別経費の支払いが滞ったことから、契約の解除及び未払金の請求を求めた裁判です。
フランチャイズ側が支払いを行わなかった理由として主張されたのは、「未経験者でも始めることができる」という謳い文句で勧誘が行われたのにも関わらず、この契約での業務支援では足りず、介護事業素人には経営を維持できる状態ではなかったため、本部は契約上の義務を果たしていないというものでした。しかしながら、生活指導員の派遣が行われているなどの客観的事実により本部側に債務不履行があったとは認められないという裁判所の判断が下されました。これにより、フランチャイズ側は未払のロイヤリティ約300万円と、生活指導員派遣に関する特別費用の一部である約30万円、これらの遅延損害金としての年1割の支払いが命じられました。
判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89556
フランチャイズ契約終了後に、商標を使って営業してしまった場合の判例
こちらは、飲食店のフランチャイズ契約で発生したトラブル事例をご紹介します。原告は、全国に展開している有名カレー店。原告運営のカレー店のライセンスを使用してフランチャイズ店舗営業を許諾されたA氏、及び連帯保証者のB氏、C氏に対して、未払い分のロイヤリティ等を支払うように求めた裁判です。
このケースのフランチャイズ契約内容として「指定する商品を販売するために、店舗において原告の商標・サービスマーク・その他の標章を使用することができる」「月ごとの店舗総売上に5.5%を乗じた金額に、消費税を加算した金額ロイヤリティとして支払う」「業務連絡等に用いるシステム使用料として毎月15750円を支払う」といった契約が結ばれており、これに違反した場合通常のロイヤリティとは別に違約金として直近月のロイヤリティ24ヶ月分支払うこととなっていました。しかし、A氏は3ヶ月分のロイヤリティや商品代金、システム利用料の一部を支払っておらず、この不払いを理由に契約解除する旨が伝えられていました。しかしながらも、A氏は契約解除後も各商標と同一の標章を多数表示し営業を継続。これに対しは、使用差し止めの仮処分が決定されました。
裁判中で大きな争点となったのは、A氏が支払いを行わなかった理由と、出店時の勧誘方法などです。A氏は開店当初から売上が見込みを大きく下回っており、それに対してサポートを要請しているのにも関わらず本部が何もしてくれなかった、それに加え情報をシャットアウトするなど営業妨害に近い行為があったと主張。また、開店に際して本部が初期投資額について2000万円と伝えていながらも、賃貸契約を済ませた後に大幅に上回る3200万円以上と伝えるなど虚偽発言がありA氏側も損害額があったため、未払いのロイヤリティ等金額と相殺させたいというものでした。しかしながら、裁判では原告の不法行為は認められず、A氏及びB氏、C氏は未払いロイヤリティ及び違約金として1000万円以上の支払いが命じられました。
判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=85912
無許可でフランチャイズドメインを使ってしまった場合の判例
こちらは、不動産業向けのフランチャイズ契約に関する事例です。原告のフランチャイズ本部である「〇△」は、被告であるXに対してドメインの使用停止、及び登録削除等を求めた裁判になります。裁判の争点となったのは、違反行為による契約の終了。契約では。承認店舗が東京都渋谷区であるのにも関わらず、原告への通知がないまま東京港区の販売センターにてしこの不動産営業活動を行っていました。
さらに自社独自のHPを作成する際は、限定したドメイン名のみ使用可能という契約だったのにも関わらず「○△.co.jp」というような社名を含むドメインを使用してのHPを立ち上げて営業していたそう。こういった行為に対して判決では、フランチャイズ契約の解除とドメイン削除、さらに登録抹消に至るまで月50000円の支払いが命じられました。またこの裁判では、被告Xとは別の法人であったZZ不動産の営業所が同一であること、共同で従業員募集をしていたこと、従業員が共通であったことなどから同一と認められ、原告がZZ不動産に求めていた5000万円以上の支払いもXに対して命じられました。
判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=83424
フランチャイズ契約を結ぶ際の注意点まとめ
今回の事例を見てみると、どのケースも契約内容をしっかり把握していなかったことが大きなポイントとなっています。トラブルを避けるためにも、フランチャイズ契約を結ぶ際には「どのような契約内容なのか」をしっかりと確認することが大切です。さらに、違約金や契約解除に関する項目もしっかりと目を通して理解することが重要。事業が好調な時には問題ないですが、不測の事態で契約を解除しなくてはならない場合など、契約解除金などの支払いが契約に課されている場合も少なくありません。そういったリスク面も自身の中で理解した上での契約を行いましょう。また、フランチャイズ運営を行う際に、Webでの展開など独自の施策を行う場合は、必ず本部への事前確認をしましょう。場合によっては、弁護士など法律に詳しい専門家を通しての確認を行ない、法的リスクを負わないベストな方法を選択してくださいね。
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