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経営者が覚えておきたいマタハラ(マタニティハラスメント)を防ぐポイント

2021年02月19日 2023年05月10日

会社経営・事業経営 雇用・労働・従業員 企業法務・法律
#マタハラ #解雇 #ハラスメント #不当解雇 #判例
経営者が覚えておきたいマタハラ(マタニティハラスメント)を防ぐポイント

妊娠や育児に伴う従業員の業務転換などは、十分配慮して行わなければなりません。今回の記事では、マタハラに関する裁判事例をもとに、企業は従業員に対してどのようにケアしていくべきかについて考えていきます。

裁判事例のご紹介

(裁判要旨)

A病院で副主任として勤務していた理学療法士の原告人は、妊娠中の軽易な業務への転換を機に降格を言い渡され、育児休業後も副主任に任用されなかった。

これは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張し、管理職手当の支払いと債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を求めた。

(結果)
原審を破棄して(高等裁判所に)差戻し。

(判例のポイント)
・原審では、「副主任を免じた措置は、本人の同意があったうえで人事配置上の必要性に基づき、その裁量権の範囲内で行われたもので、妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって、その裁量権の範囲を逸脱して均等法9条3項が禁止する取り扱いがされたものではないから、同項に違反する無効なものであるということはできない」と原告の請求を棄却した。

・最高裁では、「妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる措置は、原則として均等法9条3項の禁止する取扱いに当たる。ただし、当該労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらない」と示したうえで、

・原告人が、軽易な業務への転換と降格措置によって受けた有利な影響の内容は程度は明らかでない一方、不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものであるうえ、その後副主任への復帰を予定していないといわざるを得ず、原告人の意向に反するものであったというべきである。

・原告人は、育児休業終了後の副主任への復帰の可否等について事前の認識を得る機会を得られないまま、降格措置の時点では副主任を免ぜられることを渋々ながら受け入れた。

・原告人は、病院側から適切な説明を受けて十分に理解したうえでその諾否を決定したものとはいえず、自由な意志に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできないというべきである。

・以上の結果、「被告人における業務上の必要性の内容や程度、原告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り、均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできない」とした。

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf

知っておきたい重要な事実

育児・介護休業法第10条等では、育児休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。

第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

※育児休業の他、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置について申出をし、又は制度を利用したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いについても禁止

判例から知っておきたいこと

■妊娠中の女性労働者が、軽易な業務への転換を求めた場合は応じて、それに伴う降格措置は原則行わないようにしましょう。

■降格措置を行う場合は、以下の2点に注意が必要です。
①労働者の自由意志に基づく合意であることを証明するため、同意書をとっておく。

②降格措置を行わないと業務等にどういった支障をきたすか、具体的に説明できるようにしておく。

 上記の判例から、妊娠中の労働者に対する軽易な業務に伴う降格措置は、原則として違法となることを理解し、業務転換などを行う際は、しっかりと説明義務を果たし、十分理解してもらったうえで承諾を得ることが重要となるでしょう。

以下は、厚生労働省が出しているハラスメントに関する資料です。もし宜しければ、併せてご確認頂ければ幸いです。


厚生労働省
「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシャルハラスメント対策は事業主の義務です」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137179.pdf


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