労働基準法に関する「よくある質問」まとめ(経営者向け)
2021年02月28日 2022年11月30日

目次
- 労働基準法とは
- Q&A集
- Q.残業の上限規制がない業務があるのか?
- Q.「始業前に制服に着替える」はあり?
- Q.「暇なときは休憩OK」の規則を作りましたが大丈夫?
- Q.従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。
- Q.我が社では従来、希望者にのみ給料を銀行振込にしていたのですが、事務経費削減のため、全社員を対象にしたいと思います。この場合、注意する点はありますか。
- Q.年休取得率向上のために、積極的に年休の取得を促しているのですが従業員が気を使ってなかなか取得してくれません。何か良い方法はないでしょうか。
- Q.副業や兼業をする人にも上限規制があるんですか?
- Q.欠勤日を年休にしたいと事後に言ってきました、それはOKなの?
- Q.忙しい時に年休をとる従業員がいますが、それはOKなの?
- Q.台風襲来の休業でも休業手当を払う必要はありますか?
- Q.重要な仕事をしている者からの退職の申し出を拒否したいのですが・・・
労働者を雇い、賃金を払う立場の経営者にとって、絶対に押さえておきたい基本的な法律が労働基準法です。労働基準法とは、労働者の権利を守るために、会社側が守らなくてはならない最低限の労働条件を定めたものです。今回は、Q&Aを通じて労働基準法についてわかりやすく紹介していきます。
労働基準法とは
労働者が持つ生存権の保障、終戦後の民主化の一環として、1947年に労働者保護を目的として制定されたのが労働基準法です。労働条件や賃金、労働時間、労働契約、休日および年次有給休暇、就業規則、災害補償などの項目について、最低基準を定めています。
労働基準法上の労働者とは、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」とされています。正社員と呼ばれる労働者はもちろん、契約社員と呼ばれる有期契約労働者、アルバイトやパートタイマーなどの短時間労働者、派遣労働者についても同様に適用されます。
しかし、独立系フリーランス(法人経営者や個人事業主等)は、労働者には該当しません。ここでは詳しく触れませんが、公正で自由な競争のための独占禁止法や下請け事業者保護のための下請け法が代わりにあります。
Q&A集
Q.残業の上限規制がない業務があるのか?
A.あります。専門的、科学的な知識や技術がある人が従事する新技術、新商品などの研究開発の業務については、上限規制がありません。なお、建設業務と自動車運転業務、医師については残業等の上限規制の適用が2024年3月31日まで猶予されています。
Q.「始業前に制服に着替える」はあり?
A.会社が制服着用を義務付けている場合は、着替える時間は労働時間です。従業員が始業前に制服や作業服に着替え、保護具などを付け、現場に移動するまでがそれと認められます。同様に、終業後、着替える時間も労働時間に含まれます。
Q.「暇なときは休憩OK」の規則を作りましたが大丈夫?
A.暇であっても、仕事ができる体制を保つ待機状態は労働時間です。販売店などにおいて、来客が途切れたときは休憩時間をとっていいとの規則を作ったとしても、来客があればすぐに接客しなければならない状態は、休憩時間ではなく労働時間です。完全に業務から離れているわけではないからです。この場合は、他に休憩時間を与える必要があります。
Q.従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。
A.前借りに応じる義務はありません。労働基準法第25条には、出産、結婚、病気、災害等について、給料日前でも給料を払うように定めていますが、この条文ではすでに行った労働に対して給料日前でも支払うように定めているのであって、これから行う予定の労働に対して給料を払うように求めているものではないです。
Q.我が社では従来、希望者にのみ給料を銀行振込にしていたのですが、事務経費削減のため、全社員を対象にしたいと思います。この場合、注意する点はありますか。
A.銀行振込に同意しない労働者に強制することはできませんので注意してください。労働基準法第24条で賃金の支払については、原則として通貨(現金)で労働者本人に直接手渡さなければならないと定められていますが、給料の銀行振込については、個々の労働者の同意を得て、労働者が指定する本人名義の預金又は貯金の口座へ振り込まれること、振り込まれた給料の全額が所定の給料支払い日に引き出し得ることを満たせばできることとされています。
Q.年休取得率向上のために、積極的に年休の取得を促しているのですが従業員が気を使ってなかなか取得してくれません。何か良い方法はないでしょうか。
A.労働基準法の原則としては年次有給休暇は労働者の指定する時季に与えなければなりませんが、労基法第39条第6項により、経営者は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(当該労働組合が無い場合には労働者の過半数代表)との書面による協定により、年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、労使協定の定めにより計画的に付与することができます。労使でよく話し合った上で効率的な年次有給休暇の取得に務めてください。
Q.副業や兼業をする人にも上限規制があるんですか?
A.あります。副業や兼業をする人は、自社以外の残業との合計で上限規制が適用されます。自社以外の残業時間の把握は、従業員からの自己申告により把握すればよいことになっています。
Q.欠勤日を年休にしたいと事後に言ってきました、それはOKなの?
A.必ずしも年休とする必要はないですが、従業員の事情を考慮し、申し出があったのなら、欠勤を年休と認めることは差し支えありません。しかし、従業員が理由もなく事前連絡をせずに会社を休むことは無断欠勤となりますので、事後にその日を年休にしたいとの要望があっても、それを拒否することもできます。
Q.忙しい時に年休をとる従業員がいますが、それはOKなの?
A.事前に連絡を受けた年休を断ることはできません。年休が、従業員が事前に申し込めば、会社は無条件で与えなければならず、「多忙だから」「代わりの人かいないから」との理由だけでは年休を断ることはできません。ただし、どうしても会社の経営に支障をきたすという場合は、「時季変更権」が使えます。これで、別の日にすることができます。
Q.台風襲来の休業でも休業手当を払う必要はありますか?
A.仕事ができる状態か否かで対応が変わります。台風により、事業場設備に損害が生じ、事業の運営ができず休業を命じたのであれば、休業手当を支払う必要はありません。しかし、仕事はできそうだけれど、安全を考慮して休業を命じた場合は、会社の判断で決めたことになるので、休業手当を支払う必要があります。
Q.重要な仕事をしている者からの退職の申し出を拒否したいのですが・・・
A.特段の取り決めがある場合でも、従業員の退職の自由が優先されることもあります。従業員に重要な仕事を任せているという理由だけで、退職の申出を拒否することはできません。有期契約などで退職しないという合意を得ていれば、合意は尊重されるべきですが、やむを得ない場合は除かれ、無期契約で特段の取り決めがなければ、退職の申出は拒否できません。
労働基準法は、安心して従業員が働くために重要な法律です。雇用のルールを守り、経営者、従業員共に快適な職場環境を作っていきましょう。
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