内部通報と公益通報者保護法(経営者向け):オリンパス配転無効事件に学ぶ
2021年01月31日 2022年12月02日
会社が少し大きくなってくると、経営者が知らないところで、社内で不正が発生している可能性が高くなります。不正・不祥事は、内部関係者からの告発で明らかになるケースがあります。その際に、内部告発をした方をどのように待遇するのか、それに大きな示唆を与えた事件があります。
目次
平成23年8月31日判決をされた通称:オリンパス配転無効事件
精密機器メーカー「オリンパス」の社員の浜田正晴さんが会社、及び、上司に対して、配転命令の無効と、パワハラによる人格的利益侵害を理由に損害賠償を求めた事案になります。
上記に至った背景、かつ、大きな論点になったのは、配属命令やパワハラの要因になったのが、「取引先企業従業員の雇入れについて意見を述べたり、コンプライアンス室に通報したこと」にあるのではということにありました。
「取引先企業従業員の雇入れについて意見を述べたり、コンプライアンス室に通報したこと」がコンプライアンス室から、男性社員の上司にそのまま伝わり、その上司が配転・パワハラをしたという経緯である。
結果として、訴えた男性側の主張を認め、配置転換の無効、及び、会社、及び、上司1名に損害賠償:220万円を命じました。
判決の詳細はこちらから
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08818.html
争点になったのは、配転命令権を濫用したかどうか
この争点に対して、以下の考察がされています。
①配置された職務の担当者として訴えた社員を選択したことには疑問がある
②配置転換は、相当な経済的・精神的不利益を与えるものであることなどの事情が認められる
上記の2点が、上司による制裁による結果であり、不法行為として認識されたことになります。
また、オリンパス社では、内部告発に対して、以下のようなルールを設けていました。
オリンパスの「コンプライアンスヘルプライン運用規定」では通報内容として「法令違反」だけでなく、「行動規範に反する、または反する可能性があると感じる行為」「業務において生じた法令違反等や企業倫理上の疑問や相談」を挙げている。また、「コンプライアンスヘルプライン運用規定」には次のように書かれている。
コンプライアンス室の担当者は、通報者本人の承諾を得た場合を除き、通報者の氏名等、個人の特定されうる情報を他に開示してはならない。国内オリンパスグループは、通報者に対して、ヘルプラインを利用したという事実により不利益な処遇を行ってはならない。
その為、内部規定したルールを破り、能力として不自然、及び、経済的・精神的不利益を与えることを目的とした可能性が高い人事をしたという認識になります。
内部告発をした者を会社による不利益な取扱いから保護しなければならない
労基法第104条では、
労働者は、事業場に労基法等の法令に違反している事実があるときには、その事実を労働基準監督署や労働基準監督官に申告できる。 使用者は、申告したことを理由として、その労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをしてはならない。
また、内部告発をした労働者を守る為に、公益通報者保護法もあります。
公益通報者保護制度は、国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、公益のために事業者の法令違反行為を通報した事業者内部の労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止するものです。
その為、会社である以上、経営者として、内部告発があった際に、適切に対応する仕組みを整える必要があります。
会社の名誉や信用を傷つけ、会社の評判が落ちてしまうリスクも
このオリンパス転籍無効事件は、様々なメディアで内容が報道されました。通常の新聞方法などだけでなく、NHKでエンターテーメントとして特集されたこともあります。また、訴えた本人による書籍も出版されています。
例)逆転人生 「現役社員が語る!内部通報の悪夢 上司たちとの1000日戦争」(NHKオンデマンド)
オリンパスの闇と闘い続けて(浜田正晴さん自身による著書)
内部告発を適切に処理することが出来ないことは法令違反であるだけでなく、会社の評判が大きく失墜して、実際の営業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。
経営者としては、会社が少しでも大きくなってきたら、いかに内部告発を受け止めて、会社経営に繋げるかということを検討する必要があるといえるでしょう。
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