判例に学ぶ、経営者が知っておきたい就業規則の効力と周知の必要性
2021年02月19日 2023年05月10日

就業規則は経営者ならしっかり考えて作っておきたいもの。ただし、作っただけでは、ダメで、周知をしないと効力が認められないケースがあります。ここでは、判例を見ながら、効力と周知の必要性についてお伝えしたいと思います。
そもそも「就業規則」とはどういったものなのか?
まずは、就業規則の基本について解説していきます。就業規則とは、従業員が働く上で定められている様々な決まりごとのことです。就業規則で定められている項目として代表的なものは、労働賃金や労働条件、労働時間などが挙げられます。労働基準法により、会社にて労働者を10人以上雇用している場合は、就業規則の作成と届出が義務として定められています。
また、就業規則は作成するだけでは意味がありません。効力を持たせるために、労働者に対して周知させる必要があるのです。作成した就業規則は、労働者が内容を把握できるような状態にしておくことが必要になってきます。
就業規則には、必ず記載しなくてはならない「絶対的記載事項」と、任意で記載すればいい「相対的記載事項」があります。絶対的記載事項は、勤務形態・労働時間・労働賃金・定年に関する定期・解雇条件・退職に関する手続き・休日休暇制度。一方、相対的記載事項は賞与や一時金の制度・退職金の制度・懲戒処分に関して・災害補償・職業訓練・安全や衛生面についてなどになります。
「就業規則」に関する判例について
日本では、これまでにも就業規則が原因となって行われた裁判が多数あります。以下では、いくつかの裁判・判決例を紹介します。
① 就業規則内の「定年退職」に関する項目の事例について
バス会社Aで主任として働くYさんが、就業規則で新たに設けられた「55歳での定年制度(一般職員は50歳)」を根拠に解雇されたことに対して、会社に対して起こした裁判の事例です。これまでは定年制度が適用されていなかったため、「本人の同意がない就業規則の変更には拘束される必要がない」との根拠の元、解雇の無効と雇用の継続を求めた裁判になります。
判決の結果
判例では「就業規則内の項目が合理的なものであれば、労働者個々の同意がなくとも適用を拒否することはできない」として、Yさんの申立てを棄却しました。
判決のポイント
本来であれば、労働条件に関しては会社側と労使が対等な立場で交渉を行い決定すべきものです。しかしながら、多くの従業員を抱える会社の場合は会社側が決めたルールに対して従うのが一般的となります。そのため、就業規則の内容が合理的なものであれば、従業員側が就業規則を知らず個人の同意がなかったとしても、就業規則が適用されるものと判断されるのです。
本件では、裁判が行われたのが昭和40年代だったという時代背景に加え、一般就業員の定年が50歳と定められていた事を考えても、常識の範囲内であり定年年齢が低いとはいえないと判断されたことがポイントとなります。また、会社が側は解雇後も嘱託社員として採用する意思があったこと、Yさんを含めた中堅幹部で組織する社内会でも「後進社員たちのために、席を譲ることを仕方ない」として、おおむね就業規則内容を認めていたのです。今回の場合は、就業規則の合理性が認められ、個人個人が同意をしなかったとしても規則の有効性を裁判所が認めたということになります。
② 就業規則内の「懲戒解雇」に関する項目の事例について
B社で働くXさんが、懲戒解雇を違法なものだとして起こした裁判の事例です。Xさんは、得意先の担当者たちへの十分なヒアリングができておらず要望に応えられていなかったことでトラブルが発生。これに対してXさんは、上司に暴言を吐くなど反抗的な態度をとったことで懲戒解雇になりました。しかし、懲戒解雇に関する新しい就業規則が施行されたのはわずか2ヶ月前。労働基準監督署に届け出をされたのが解雇直前の出来事であったということから、「従業員に対しての周知がされていない就業規則は無効であり解雇は違法」という根拠の元裁判は争われました。
判決の結果
判例では「懲戒解雇に関しては、就業規則の根拠において適用される。労働者に周知されている必要があるが、本件では周知されていなかった」としてXさんの主張を認める形となりました。
判決のポイント
今回の事例では、新しい就業規則が有効か無効かが争点となりました。この事件が起きた際には、既に新就業規則が労働基準監督署に提出されていることが事実としてありましたが、従業員に対して周知されていなかったことが裁判所によって認められました。就業規則は、作成・提出だけでは効力がなく従業員に周知されていなければなりません。従業員の申し出があればいつでも確認できるように、職場に設置しておかなくてはならないのです。トラブルの元になったXさんは解雇されてしかるべきだと考えるかも知れませんが、このケースでは、従業員に対しての新就業規則の周知がなされていなかったため、Xさんの主張が認められたというわけです。
2つの裁判の判例からわかること
いずれの裁判でも、就業規則を従業員が周知しているかどうか、効力があるかどうかが争われています。特に解雇に関する問題は、会社側の不当解雇にあたる可能性があるためセンシティブに扱わなくてはならない問題です。どちらのケースも、従業員に周知しており同意を得られていれば大きな争いにはならなかったと考えられますよね。トラブルを避けるために、経営者としてはしっかりとした就業規則を作成するだけではなく、いかにして従業員に周知させるかまでを考えなくてはいけないのです。
従業員に対して就業規則を周知させるための方法としては、「職場の見やすい場所に掲示するorいつでもみれるように備え付けておくこと」「就業規則を書面化して従業員に交付すること」「データとして記録しておき、従業員がいつでもアクセスできるようにしておくこと」の3つが法律上で認められていますので、いずれかの対策をとってみてください。しかし、法律上の周知フローを踏んだとしても、従業員が理解していなければ、それはルールとしてあまり意味を果たしません。経営者としては、個人面談を行い説明を行う、全体研修のような形で説明を行うなどの責務を果たすことが必要とされるでしょう。
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