虚偽広告事件に学ぶ、景品表示法・薬機法第68条
2021年01月13日 2023年05月19日
商品・サービスを販売する為に、経営者であれば、広告は避けては通れないもの。しかし、広告は一歩間違えると、裁判になってしまうようなトラブルになることがあります。ここでは、事件から、経営者が知っておきたいことをご紹介します。
虚偽の広告の配信は、景品表示法違反のリスクがあり
■事案の要約
2020年3月19日に、ニュース配信のGunosy(グノシー)の完全子会社が化粧品などで虚偽の広告を制作し、配信。外部からの指摘を受けて、内部調査を実施、判明&公表した。
具体的な内容としては、商品の効果について架空の口コミを創作したり、関係のない写真を掲載したとされている。
■何が問題だったのか?
虚偽の広告は、景品表示法違反(優良誤認)となるリスクがある。
■関連する法律:景品表示法
景品表示法とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」という法律になります。景品表示法の目的は、商品やサービスついて不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止し、一般消費者の利益を保護することにあります。
特に、優良誤認表示(5条1号)にあるものが、虚偽広告に抵触すると考えられます。
景品表示法第5条第1号は、事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています(優良誤認表示の禁止)。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/
商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が該当します。
また、故意でなくても誤って上記の内容が表示されている場合にも規制対象になります。
■景品表示法に違反した場合の罰則
刑事罰として罰金の対象になります。 措置命令に従わない場合、2年以下の懲役又は300万円以下(法人は3億円以下の罰金が科せられる)とされています。
また、罰金とは異なり、課徴金が課されるケースがあります。行政庁が法律に違反することで不当に利益を得た法人・個人から、その利益を没収する(金銭的不利益を科す)処分を適用します。課徴金の金額は、課徴金対象期間における対象商品・役務の売上額の3%とされています。
健康食品の虚偽の広告は、薬機法違反に
■事案の要約
健康食品通販を行うステラ漢方の従業員、取引先の広告代理店社長ら6人を薬機法違反の疑いで逮捕された事件。第三者の体験談を装った記事風の広告で、「肝臓疾患に対する予防効果がある」などと医薬品的効果を表示していた疑い。
ステラ漢方が販売する健食「肝パワーE+(プラス)」について、医薬品の承認を得ていないにも関わらず、ウェブ広告で「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」、「ズタボロだった肝臓が半年で復活」などと広告したことが問題とされた。
■何が問題だったのか?
未承認医薬品の広告の禁止に抵触。薬機法第68条違反。
■関連する法律:薬機法第68条
薬機法第68条は以下のように記載されています。
何人も、第14条第1項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/kenkou/iyaku/sonota/koukoku/iya_cos_ki/y_bassui.html
今回のケースでは、本来、医薬品でないものを、医薬効果があると訴求した広告であったことが問題視されました。更に、上記は、上述した景品表示法違反や薬機法第55条違反容疑(未承認医薬品の販売・授与)にも問われるリスクがあります。
■薬機法に違反した場合の罰則
第66条、第68条に違反した場合、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(または併科)」、第55条2項等に違反した場合は、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(または併科)」が科されます。
また景品表示法とは同様に、課徴金を課す検討も始まっています。
経営者が意識したいこと
嘘をつかない、不当表示しない
上述した2つの事件を考慮すると、当たり前ですが、広告において虚偽・不当な表示をすべきではないということを確認することが出来ます。
また、虚偽・不当な表示をして利益を上げたとしても、課徴金の制度が導入されている、もしくは、され始めているので、それらの利益も回収されてしまうことが予測されます。
刑事罰も課されるリスクがあることから、社会的信用リスクも大きく、とにかく、虚偽・不当な表示をしないことに細心の注意を払うことが必要です。
業務委託をしている広告会社などの過失も、事業会社の責任になる可能性が。チェックを怠らない。
また、ステラ漢方事件の際には、広告を作成していた広告会社が罪に問われただけでなく、共謀関係である疑いから、事業主も罪に問われています。その為、広告会社の配信する内容については、事業主側の責任が問われる可能性があると考え、しっかりチェックしましょう。
いかがでしたでしょうか?費用保険の教科書Bizでは、様々な中小企業・個人事業主の方に役立つ法務情報を弁護士とともに発信しているので、是非他の記事も参考にしてみてください!
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