【弁護士監修】ネットの誹謗中傷や嫌がらせには開示請求! 発信者情報開示請求のやり方や流れ、費用、条件などを紹介。
2024年10月10日 2024年10月11日
近年SNSを中心に炎上事件が増えていますが、その中で問題視されているのが無関係な第三者による誹謗中傷やネットストーキングです。SNSという特性上匿名性があり、どこの誰かも知らない人間から攻撃されるストレスは耐え難いものでしょう。そこで今回はそういった攻撃に対する防衛・反撃の方法である「発信者情報開示請求」について解説していきます。
目次
発信者情報開示請求とは
発信者情報開示請求(以下、開示請求)とは特定電気通信役務提供者に対して「発信者=書き込みした人物」の情報を開示請求し、どこの誰が書き込みを行ったのかなどを特定することを指します。本請求はプロバイダ制限責任法という法律を根拠にしています。
用語解説 特定電気通信役務提供者 |
---|
X(旧Twitter)ならX社、掲示板なら管理人などそのサイトを管理している会社や人間、メールの送信などであればサービスプロバイダーなど、IPアドレスなど書き込みの情報を所有しているサービス提供者のことを指します。 |
発信者情報開示請求が可能となる条件は?
開示請求を行うためにはいくつかの要件があります。
1.特定電気通信による情報の流通であること
わかりやすくいうと「インターネットによる情報の流通である」ということで、掲示板への書き込みや、SNSへの書き込み、口コミ機能を使った書き込みなどを指します。そのため、チラシなどを使った誹謗中傷などには使えません。ここで注意すべきは発信者情報開示に用いられる「プロバイダ責任制限法」では不特定多数が閲覧できる書き込みのみを対象としており、メールやDMなど特定の人物のみしか閲覧できないものに関しては対象外となっています。
2.請求先が開示関係役務提供者に該当すること
開示請求する相手がインターネットを利用した特定電気通信役務提供者でなければいけません。あくまでも開示請求先ですので、発信者(加害者)が特定電気通信役務提供者である必要はありませんので混同しないように気をつけましょう。
3.自己の権利を侵害されたとする者であること
誹謗中傷などにより、権利侵害を受けた被害者本人が開示請求可能となります。そのため、誹謗中傷を見かけただけの第三者などはできません。しかし、権利侵害を受けた被害者本人は代理人として弁護士に依頼や未成年であれば親が代わりに請求することはできます。
4.権利が侵害されたことが明らかであること
一般的に「権利侵害の明白性」と呼ばれる要件で、その書き込みが名誉毀損や恐喝・脅迫に該当することが明らかである必要があります。これは匿名性のあるインターネットならではのもので、通常の損害賠償などとは異なり立証するハードルが高くなっています。
権利侵害が明らかである例
著作権侵害 | 権利者の作品の画像を上げ、自分の作品だと主張・販売していた |
---|---|
名誉毀損・誹謗中傷 | 東京都◯◯区在住で◯◯社で働いている鈴木太郎は不倫をしている |
脅迫 | ◯◯のラーメンが不味くてムカついたから放火する |
権利侵害が明らかでない例
ただの意見 | ◯◯のラーメンは不味い |
---|---|
個人を特定出来ない | 鈴木は不倫している |
公共性がある | ◯◯党の◯◯議員は過去に不正を行った事実がある |
これら、権利侵害の有無の判断は難しいため、弁護士に相談し請求可能かどうかを判断してもらうといいでしょう。
5.正当な理由が存在すること
発信者開示請求をするには正当な理由が必要となります。そのため、ただなんとなく「悪口を書き込んだのが誰か知りたい」や「復讐するために家に押しかけたい」などが理由では棄却されることになります。
発信者情報開示請求をする正当な理由とは?
今この記事を読んでいる方は何らかの理由で発信者開示請求をしようとしている方も多いと思います。では、要件を満たす正当な理由とはどんなものがあるでしょうか?
1.損害賠償請求訴訟を行う
例えば爆破予告などによって営業を停止せざるを得なかった、著作権侵害によって損害が出たなどの場合は損害賠償請求訴訟を行うことになるため、正当な理由として認められます。
2.刑事告発をする
爆破予告などの脅迫・恐喝や盗撮動画などをアップされるのは明確な犯罪となります。そのため警察に被害届を出すためには相手を特定する必要がありますので、正当な理由として認められます。ただし、この場合は被害者が請求しなくても警察が請求してくれることが多いため、まずは警察に相談するようにしましょう。
3.削除要請をするため
権利の侵害がされているが、訴訟までは考えてない、しかし削除はしてほしいということもあると思います。しかし、特定電気通信役務提供者に対して削除申請しても削除してもらえないこともあります。そういった場合、書き込んだ人物を特定し、直接削除要請をすることで削除してもらえる可能性もあります。
発信者開示請求のやり方と流れ
接続者のIPアドレス | 接続者の個人情報 | 例 | |
---|---|---|---|
コンテンツプロバイダ (サイト管理者) |
所有 | ー | X社・Google社など |
サービスプロバイダ (接続事業者) |
所有 | 所有 | ニフティ・GMOなど |
1.証拠の保管
- 書き込みのスクリーンショットやWebサイトのコピー
- 投稿されたURLやサイト名、掲示板番号
- 書き込みがされたタイムスタンプ など
まずはインターネットに投稿された該当書き込みの証拠を集め、保管します。
2.サイト管理者にIPアドレスの開示請求・ログ保存の依頼
次にサイト管理者(コンテンツプロバイダ)に対してIPアドレスの開示とログの保存を依頼します。この時点で請求に応じるかどうかは任意となりますので、一般の人間がメールなどでお願いするだけでは応じない可能性が高いです。弁護士を通じてお願いすれば応じる可能性は高まりますが、それでも応じてもらえない場合は次の2-2に進みます。応じてもらえた場合は直接3に進むことができます。
2-2.仮処分手続き
サイトの管理者が開示請求に応じない場合は、裁判所に「発信者情報を開示して欲しい」という仮処分手続きの申し立てをします。この申請が通れば、サイト管理者は裁判所の命令に従いIPアドレスなどを開示しなければいけません。
3.IPアドレスからプロバイダを特定し開示請求
IPアドレスが開示されたことで利用しているプロバイダーが判明するので、プロバイダーに対して発信者情報開示請求の訴訟手続きをします。この訴訟で勝訴することができれば、プロバイダーから利用者の氏名や住所といった情報を受け取ることができます。
4.特定した情報をもとに訴訟や削除要請
書き込みを行った人物の氏名や住所が判明したので、それらの情報を使って内容証明による削除要請や、損害賠償請求訴訟を行います。
これらをするのは大変な労力と知識が必要なため、できれば書き込みなどを発見した段階から弁護士に相談しておくとスムーズに事が運ぶでしょう。
発信者情報開示「命令」が新設 |
---|
上記では発信者情報開示「請求」について解説しましたが、その手順や事務負担が多いことから新たに「発信者情報開示命令」が新設されました。これはこれまでの発信者情報開示請求ではサイト管理者→プロバイダーとそれぞれ順番に手続きをしなければいけなかったものを、発信者情報開示命令では1度にまとめて手続きをすることが可能となりました。 |
発信者情報開示請求Q&A
ここからは、発信者情報開示請求についてよくある疑問をまとめて行きます。
Q.開示請求って自分だけでできる?
可能です。ただし、相応の知識や煩雑な事務作業・手続きをする必要があり、請求方法を間違えたりすると棄却される可能性が高かったり、後述する担保金が取られてしまう可能性があるため、できるだけ弁護士を利用することをおすすめします。
Q.開示請求にはどのくらいの期間がかかる?
通常は半年〜10ヶ月ほどの期間がかかります。手続きが簡略化された発信者情報開示命令でも3,4ヶ月はみたほうがいいでしょう。
Q.開示請求にかかる費用は?
裁判所に払う費用は、仮処分申し立てに約1万円、開示請求訴訟の提起に約2万円ほどかかります。ただし仮処分申し立てには担保金という、仮処分が通れば後で返還されるお金を収める必要があり、そちらが約10万円〜かかります。他にも、弁護士を利用した場合は、弁護士費用が20万円〜30万円程度かかると思われます。
Q.開示請求にかかった費用って相手に請求できる?
可能です。開示請求がされた後に損害賠償訴訟をする際「調査費用」として請求することができます。ただし、全額が認められるかは裁判の結果次第のケースバイケースとなりますので、詳しくは弁護士に相談してみてください。
開示請求の弁護士費用が補償される弁護士保険に注目
このように開示請求にはかなり複雑な手順が必要となるため、弁護士を利用することが望ましいです。しかし、弁護士を利用すると数十万円の弁護士費用がかかってしまうため、ネットの誹謗中傷に対して泣き寝入りする方が多いのも現実です。そこでおすすめなのが「弁護士保険」です。弁護士保険に加入していれば、誹謗中傷された際に発信者情報開示請求や相談料などの弁護士費用が補償されるため、気兼ねなく弁護士を利用することができますし、初期の電話相談を無料で行うことも可能です。開示請求に限らず、あらゆる法的トラブルに備えて加入しておくことをおすすめします。
弁護士保険に入れば各種弁護士費用が補償される
1.トラブルに発展する前に予防できる
弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルの抑止力となります。
2.弁護士への電話相談が無料で出来る
弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
3.弁護士費用・裁判費用が補償される
それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
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