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立ち退き交渉5つの心得(不動産経営者、オーナー向け)

2020年09月30日 2022年12月02日

不動産トラブル
#立ち退き #判例
立ち退き交渉5つの心得(不動産経営者、オーナー向け)

立ち退きとは

立ち退きとは、賃貸物件のオーナー(賃貸人)から、居住者などの賃借人に対して賃貸借契約の解約を申し入れ、物件から退去してもらうことです。

立ち退きを求める理由としては、
・建て替えを行い、建物の資産価値を高めたい
・これまでは貸していた土地に自分が住むことにした
・建物が老朽化し、立て直す必要がある
など様々なものが考えられますが、正当事由であることが重要です。正当事由とは、一般社会の常識的な範囲で認められる事由のことです。

立ち退きは不動産オーナーにとって、不動産活用の重要なプロセスであり、費用も少なからず発生します。また、トラブルに発展することもあるので、しっかりと準備をして計画的に行いましょう。不動産会社や弁護士など専門家に依頼すると安心です。

立ち退きの際に知っておきたいこと①
立ち退きには手間がかかる!

まず、立ち退きにはかなりの時間と労力がかかります。借地借家法では、借りる側(賃借人)の立場が強い内容となっています。なぜなら、入居者などにとって、急に「出て行ってほしい」と言われてしまうと困るからです。

そのため一般的な賃貸借契約の場合は、契約期間が満了しても退去の強制はできません。また、立ち退きの理由に関しても、仮に賃借人から拒否され、訴訟に発展した際、正当事由と認められない場合もあります。(建物の老朽化による建て替えを理由にしていたが、建て替えが必要な程度ではないと判断される場合など)

円滑な立ち退きを図るためにも、トラブルに発展しないよう、借り主には理由を充分に説明し、交渉しながら手続きを進めましょう。

立ち退きの際に知っておきたいこと②
立ち退きの大まかなスケジュール

賃貸物件の契約では、 オーナーからの解約の申し入れ(退去勧告)は、借家人に対し、少なくとも契約満了の6ヶ月前までに行わなければなりません。実際には余裕をもって、1年程度前から交渉を始めたほうがベターです。

なぜなら、居住者の代替物件(転居先)を提案する必要があるケースもあるからです。入居者がなかなか転居先を探してくれない場合、またなかなか転居先が決まらない場合、いつまでも立ち退きが進まないため、期間には余裕を持って臨みましょう。

建て替えの場合は、大まかなスケジュールは以下のとおりです。
① 計画:着工の2~3年前が理想
② 入居ストップ:解体の2年前が理想
③ 立ち退き:遅くとも契約満了の6か月前
④ 着工

立ち退きに時間と手間がかかることが示唆される判例
東京地判 平26・7・1 ウエストロー・ジャパン
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/98-144.pdf

東京地判 平25・6・14 ウエストロー・ジャパン
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/94-092.pdf

立ち退きの際に知っておきたいこと③
立ち退きをなるべく減らすには

立ち退きの手間や費用の負担を極力抑えるためにも、立ち退きを求める時期の見極めは重要です。アパートであれば、空室率が5割以上になった段階で少しずつ検討を始めるとよいでしょう。

空室率が3~4割で経営が苦しく、収益改善のため建て替えたいと思っていたとしても、その段階で動き始めてしまうと、入居者が多いため立ち退き料も多くかかり、交渉も難航する可能性があり、さらにオーナーの首を絞めることにもなりかねません。

空室率が5割以上になった段階で、入居者の募集をストップし、入居者が自然と減っていくことを待ち、残りの入居者が2割くらいになったところで、立ち退き交渉を開始して本格的に建て替えを進めて行くとよいでしょう。

また、現在の入居者(賃借人)との契約を定期借家契約※へ切替え、期間満了時に退去してもらうという方法もあります。
ただし、2000年3月1日以降に締結された賃貸借契約でないと普通借家契約から定期借家契約への切替えはできないため、昔からの居住者が多い場合には、実行が難しいかもしれません。

空室部分は、建て替えまでの期間、定期借家募集をするというのも手段のひとつです。
※契約期間に定めがある借家契約。書面による説明及び契約により、1年未満の契約期間の定めも有効。

有効活用をしたいという目的のもと立ち退き交渉をした場合について分かる判例のご紹介
H12.3.23 東京高裁
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/48-081.pdf

立ち退きの際に知っておきたいこと④
立ち退き料について

オーナーの都合で立ち退いてもらう場合は、立ち退き料を支払うのが通例です。立ち退き料を、正当事由を補完するものと裁判所が認めた例もあります。ただ、立退き料の支払いは、法律で定めがあるものではありません。一般的には、賃借人が新しい住居を探すための費用(保証金・敷金・礼金・仲介手数料など)や、引越しするための費用として、家賃の5~6カ月分を支払う例が多いようです。建物の耐震性に問題がある場合は正当事由があるものとみなされ、立退き料がもっと安くなることもあります。いずれにしても金額は交渉次第という側面があり、ケースによって様々です。

なお、店舗やテナント・事務所などは、立ち退きで「事実上失う利益」の保障も必要になり、住居よりも立退き料が高額になります。店舗やオフィス併用の賃貸住宅の場合は、交渉にも注意が必要です。

立ち退き料の例について分かる判例のご紹介
311万円の立ち退き料
東京地判 平24・11・1 ウエストロー・ジャパン
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/90-144.pdf

立ち退きの際に知っておきたいこと⑤
専門家に相談しながら進めるのがおすすめ

立ち退き問題には過去に様々な事例や判例が存在しますが、オーナー自身で対応することが困難なケースも発生します。そういった場合は弁護士などの専門家に解決を依頼しましょう。トラブルにならずとも、手続きを進める際の疑問や困りごとなどを相談できるという観点からも、専門家に相談しながら進めると安心です。

適切な専門家に相談することが大事なことが分かる判例のご紹介

依頼したコンサルティング会社が弁護士法違反、及び、不法行為に?
大阪高判 平28・10・4 判例タイムズ1434‐101
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/107-106.pdf

立ち退き交渉を行った業者が弁護士法違反
最高裁 平22・7・20 判時2093-161
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/81-102.pdf


いかがでしたでしょうか?費用保険の教科書Bizでは、様々な中小企業・個人事業主の方に役立つ法務情報を弁護士とともに発信しているので、是非他の記事も参考にしてみてください!

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