発注者なら知っておきたいフリーランス保護新法と下請法のポイントとは
2024年04月19日 2024年04月19日
2023年4月28日に法案が可決された「フリーランス保護新法(フリーランス新法・フリーランス保護法)」。下請法同様に、下請けのフリーランス事業者を保護することを目的とした法律ですが、2つの法律には違いがあります。本記事では、その内容から発注者が気をつけなければいけないポイントまで解説していきます。
目次
下請法とは
下請法とは正式名称「下請代金支払遅延防止法」といい、親事業者が下請事業者に対し、優先的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律で、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的としています。例えば以下のような事案が起きないために策定されています。
- 報酬の支払い遅延
- 報酬の減額・著しく低い報酬設定
- 一方的なやり直しの要請・発注取り消し
- 権利の一方的な取り扱い
- 成果物の受領拒否・返品
- その他、取引条件の一方的な設定・変更 など
下請法の対象となる業務
製造委託 | 物品を販売、または物品の製造を請け負ってる事業者が規格・品質・形状・デザインなどを指定して、他の事業者に製造や加工を委託すること。※不動産は含まない。 |
---|---|
修理委託 | 物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託。または、自社で使用している物品の修理を他の事業者に委託すること。 |
情報成果物 作成委託 |
ソフトウェア、映像コンテンツ、雑誌・広告などのデザインコンテンツなどの成果物の提供や作成を行う事業者が、その作成作業を他の事業者に委託すること。 |
役務提供委託 | 運送やビルメンテナンスなどの各種サービス(役務)の提供を請け負った事業者が請け負った役務を他の事業者に委託すること。※建設工事は含まない。 |
上記の4種類が下請法の適用となる業務になりますが、ここで注意したいのがクライアント(発注事業者)は資本金が1,000万円以上の法人でなければいけません。そのため、資本金1,000万円以下の小規模事業者から委託を受けても下請法が適用されないので注意しましょう。
下請法におけるクライアントの遵守義務と罰則
義務項目 | 義務の内容 |
---|---|
発注時に発注書面を交付する義務 | 具体的な契約内容を記載した注文書や契約書などの書面を交付する義務。 |
発注時に支払期日を定める義務 | 成果物の受領後60日以内かつできる限り短い期間になるよう支払期日を定める義務。 |
取引記録の書類を作成、保守する義務 | 給付内容や下請代金の金額などの記録を書類として作成して2年間保存する義務。 |
支払いが送れたら遅延利息を支払う義務 | 支払期日を過ぎた場合、未払金に対し年率14.6%の遅延利息を支払う義務。 |
下請法ではクライアント(発注事業者)に上記の4つの義務が定められています。上記の義務を怠り、下請法違反となった場合、下請法第10条に基づき、50万円以下の罰金刑が科せられる可能性があります。それと同時に、下請法違反によって勧告を受けた企業は公正取引委員会から、違反内容・企業名が公表されるため、社会的信用を失うおそれが出てきます。
フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは
- フリーランス個人が安定して働くことのできる環境を整備する
- フリーランスに委託する使用者(事業者)が、業務を委託する際の遵守事項などを定める
2023年4月28日に可決された新しい法律で、正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、一般的にフリーランス新法・フリーランス保護新法・フリーランス保護法と呼ばれます。この法律はフリーランスに対して仕事を発注する事業者に取引条件の明示、報酬支払期日の設定など遵守事項を定めたもので、日本に約462万人いると言われているフリーランスの環境を整備するために策定されました。
フリーランス新法の対象者
フリーランス新法の対象はフリーランス(特定受託事業者)ですが、その定義は発注事業者が業務委託を依頼する相手かつ、従業員を雇わない事業者と定めています。ここでいう従業員とは「週労働20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」のある者を指しますので、それ以下の場合なら人を雇っていても対象となります。
TIPS 対象はBtoBの委託業務のみ |
---|
フリーランス新法が適用されるのは事業者同士の業務委託のみとなります。そのため、フリーランスが事業者に何かを販売したり、事業者ではない消費者から依頼された仕事などは対象となりませんので注意しましょう。 |
フリーランス新法におけるクライアントの遵守義務と罰則
義務項目 | 義務の内容 |
---|---|
書面などによる取引条件の明示 | 書類などで委託する業務内容・報酬額・支払期日などの取引条件を明示する義務。 |
報酬支払期日の設定・期日内支払い | 納品日から数えて60日以内の報酬支払日を設定し、期日内に支払う義務。 |
禁止事項 | フリーランスに責任がないにもかかわらず、納品拒否・報酬の減額・返品などをしてはならない。 |
募集情報の的確表示 | インターネット、SNSなどの募集で虚偽の表示、誤解を与える表示の禁止。内容は正確かつ最新のものを保つ。 |
育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 継続的業務委託について、フリーランスから申し出があった場合、育児や介護などと業務が両立できるように配慮する義務。 |
ハラスメント対策に係る体制整備 | フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講じること。 |
中途解約等の事前予告・理由開示 | 継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告すること。 |
上記がクライアント(特定業務委託事業者)に科せられる義務で、いずれかに違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣などから助言、指導、報告徴求、立ち入り検査、勧告、公表などが行われます。これらの命令違反、もしくは検査拒否などがあった場合は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
下請法とフリーランス新法の違い
下請法とフリーランス新法、どちらも下請け事業者を守るための法律ですが違いはなんでしょうか?
下請法 | フリーランス新法 | |
---|---|---|
対象 | 下請け事業者 | フリーランス |
クライアントの資本金 | 1,000万円以上 | 制限なし |
受託者の従業員 | 従業員がいても適用される | 従業員を雇っていると適用されない |
上記のように、大きな違いはクライアントである委託事業者の資本金と受託事業者が従業員を雇用しているかどうかになります。どちらも下請け事業者を守るための法律ですが、上記の違いを理解して対応するように心がけましょう。
クライアントが下請法・フリーランス新法を守るには
従業員への周知・教育
従業員に対して下請法・フリーランス新法両方の教育が必要です。特に発注担当者、支払い担当者には、発注書の交付や支払い遅延がないようにしなければいけません。担当者が違反した場合、会社、代表者が責任問われる可能性が高いので気をつけましょう。
発注書・契約書のリーガルチェック
発注書や契約書を発行する場合、内容が違反してないことを法的チェックする必要があります。特に支払期日の設定が必須。これら出来ることなら弁護士にしっかりとリーガルチェック(法的書類の内容に不備がないか弁護士に確認してもらうこと)を行うようにしましょう。
下請け事業者が下請法・フリーランス新法に違反していると感じたら
下請け事業者、フリーランスなど受託者側の立場から、委託事業者が上記法令に違反していると思ったら下記の各相談窓口に相談することをおすすめします。また、直接発注事業者にクレームをいれた場合、不当に取引停止などになる可能性もあるため、相談窓口の助言を基に、可能であれば法律の専門家である弁護士に相談、間に入ってもらって対応したほうがいいでしょう。
下請法・フリーランス新法で不安なら弁護士保険がおすすめ
クライアント側も下請け側も、このようなトラブルになる前に、あらかじめ相談できる弁護士をつけておくことが大切ですが、弁護士に相談したことのない方からすると、弁護士探しや費用、相談の仕方など不安なことも多いと思います。そこで当サイトがオススメしているのが弁護士保険です。弁護士保険は月額数千円で弁護士への相談費用や、訴訟に発展した場合の弁護士費用などが補償されるため、気兼ねなく弁護士に相談できるようになります。
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弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることで無断キャンセルの抑止力となります。
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弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
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それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
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