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【弁護士が解説】高知県土佐市とNPO法人が地域おこしで入居したカフェを強制退去? 立ち退きを求められた時に知っておくべきこと。

2023年05月12日 2023年05月25日

コラム 契約 不動産トラブル
#私文書偽造罪 #不法行為責任 #迷惑防止条例 #風評被害 #セクハラ #ハラスメント #定期賃貸借契約 #誹謗中傷 #賃貸借契約 #立ち退き
【弁護士が解説】高知県土佐市とNPO法人が地域おこしで入居したカフェを強制退去? 立ち退きを求められた時に知っておくべきこと。

5月10日にTwitterに投稿されたカフェ店長が高知県土佐市とNPO法人から店舗の強制退去を迫られた件が話題を呼んでいます。こういった強制退去は果たして可能なのでしょうか? 当サイトとしても興味深い内容の投稿であり、当サイト監修弁護士の武山茂樹先生の見解を交えながら解説していきたいと思います。

この記事の監修弁護士

新橋虎ノ門法律事務所

武山茂樹 弁護士

問題として上がっているのは5月10日に崖っぷちカフェ店長( @kurumi121422 )さんが投稿した上記のツイートと一連のツリーです。

投稿内容のポイントを抜粋

  1. 過疎に悩む高知県土佐市が「地域おこし協力隊」を利用し飲食店経営の人材を募集
  2. 高知県が好きだった崖っぷちカフェ店長(以下店長)がオファーを受け同市に移住
  3. 市が所有する施設「南風(まぜ)」でカフェを開業
  4. 地元食材を用いた手作りメニューが人気を博し人気店に
  5. 地元の権力者(同ビルを管理しているNPO法人理事長)からハラスメントや高圧的な要求を受け始める
  6. 反発したところ、同理事長が捏造したとされる退去通告を店長に提出
  7. 店長が土佐市に助けを求めるも、市が過去に理事長に助けてもらった経緯がゆえに頭が上がらないため助けを得られず
  8. なぜか土佐市が店長に退去勧告(退去事由不明)
  9. 新たにビルに入る公募が店長に秘密裏に行われ、別の業者に決まる

上記が崖っぷちカフェ店長のツイートから読み取れる一連の流れであり、この言い分だけ見る限りかなりの問題が含まれているように思われます。

投稿内容から見る法的問題点を弁護士が解説

NPO法人の理事長に偽造されたとされる書類は有効?

上記ツイートによると、理事長は総会も開かずに個人の独断でNPO法人が全員一致の印鑑を押した退去勧告書類を作成したとされています。もし、理事長が、総会も開かずに、また、NPO法人のメンバーの承諾も得ずに、勝手にそのメンバーの印鑑を押した場合は私文書偽造罪に問われるおそれがあります。

しかし、本件では、理事長が虚偽の説明や強要をしたとしても、メンバーそれぞれが印鑑を押しているように思えるので、犯罪は成立しないでしょう。

一方で、退去勧告が適法か否かは犯罪成立とは別の問題です。NPO法人の定款も参照して回答する必要があります。ツイートではNPO法人名が明らかになっていませんが、高知県のWebサイトに同施設(南風)の指定管理者として「新居を元気にする会」と記載されておりました。情報が古い可能性などもございますが、こちらで仮定してお話を進めさせていただくと、同法人の定款は以下になります。

内閣府に公開されている定款を見ると、22条の社員総会決議事項に使用許可の撤回や賃貸借契約の解除は挙げられていません。一方で31条の理事会決議事項に「その他社員総会の議決を要しない会務の執行に関する事項」が掲げられていますので理事会決議は必要だったでしょう。理事会決議があったか否かは、この記事だけではわかりません。ただ、理事会決議がなかったとしても「仮に理事会を経たとしても結論が変わらない場合」は法的に有効とされる余地があります。理事会を経ても結論が変わらない場合は、この点は退去に関してはそこまで問題にならないでしょう。

高知県土佐市からの強制退去勧告を受けた?

こちらに関しては契約内容や退去勧告の内容が定かではないので一概には言えません。契約期間や更新の条件など様々な要因が絡み合ってきます。しかし、仮に「契約期間が残っていた」「更新に問題なかった」などごく一般的な賃貸借契約で契約期間が残っていたり、更新に問題がなかった場合は原則として退去請求できません。退去請求ができる場合は、賃借人に賃料未払いその他の債務不履行があり、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに至った場合に限られます。もし契約期間が残っていた場合で、このツイート内容が真実だとすると退去請求は違法でしょう。

ただ、この建物は行政財産なので、おそらく通常の賃貸借ではなく行政法上の「使用許可」の形になっていた可能性が高いと思われます。

その場合、仮に使用許可期間の定めがなくとも行政側にこの建物を必要とする事由ができた場合、使用許可の撤回ができますので、一般の賃貸借よりも利用者に不利になります。そうは言っても、あくまでも通常の契約に比べれば不利というだけであり、使用許可の撤回を行政が自由にできるわけではありません。ここのツイートにあるように、NPO法人の理事長の理不尽な要求に従わなかったことが理由なら行政の使用許可撤回は裁量の逸脱濫用になり違法になる可能性が極めて高いです。

なお、使用許可の期限が決まっていて、その期限が過ぎて更新されないだけだと、さらに使用者に不利になります。原則、退去しなければならないでしょう。ただし、更新がある程度の期間反復継続されていると、使用許可が更新されることの期待が利用者に生じていますので、正当な理由がなければ退去請求は認められないことになります。この場合も、更新がある程度の期間反復継続されているにも関わらず、NPO法人の理事長の理不尽な要求に従わないことが退去の理由なら、使用許可を更新しないことは違法になる可能性が高いです。

NPO法人理事長からハラスメント行為が行われていた?

上記ツイートによると同店は理事長から様々な嫌がらせやハラスメントを受けていたとされています。これが真実なら、理事長には迷惑防止条例違反等の犯罪が成立しますし、また不法行為責任も生じます。ただ、一般論で言うと立証のための証拠収集をしていたかどうかがカギになります。証拠収集に関しては以下の記事で取り扱っていますので合わせてお読み下さい。

【弁護士監修】相手に許可のない録音・盗撮は違法? 電話や会話の証拠を録音・録画する方法と機器を紹介

市役所側の言い分

5月12日に東スポWEBにおいて市役所側が法的措置を検討しているというニュースが掲載され、ハラスメント行為はなかったなど両者の言い分が食い違っているようです。

同市役所はどう対応するのか。同市担当者は「事実ではないところも多数ありますが、それら全部に反応するのではなく市の顧問弁護士に相談して対応することになります。後日、調査結果を市のホームページに掲載します」と話した。

という記載があるため、続報は市のホームページを見てみるといいでしょう。

立ち退きを求められたら応じる義務はあるのか?

今回の件は行政やNPO法人が絡んでいるため少しややこしいですが、一般的には「立ち退きトラブル」と呼ばれるものです。これは賃貸借契約をしている事業者なら誰しもが遭遇する可能性のある身近なトラブルですので、ここからは立ち退きについて少し解説させていただきます。

立ち退きとは

立ち退きとは貸主(貸した側)が主体となり賃貸借契約を終了し、借主(借りた側)に退去してもらうことを指し、本件では土佐市がオーナー店長に立ち退きを求めたとなっています。

しかし、一般的に立ち退きは物件の老朽化や地域の再開発のための物件の取り壊しなどで止む無くされることが多く、補償など相応の費用が借主に支払われます。

また、借主は物件を借り続けることで生計を建てているため、借地借家法により強い保護を受けており簡単に貸主都合での契約終了はできないようになっています。

立ち退きの種類

一般的に立ち退きには以下の3種類が考えられます。

1.合意による終了

貸主と借主、両者の合意があれば、どのような条件であっても契約の解除が可能です。通常、立ち退き時は移転などにかかる費用、休業補償などの他、退去時にかかる原状回復費用などを免除するなどを条件に交渉が行われ、それらに借主が納得した場合は両者合意による解除となることが多いです。

2.債務不履行による終了

深夜営業禁止なのに深夜営業をした、飲食店以外はしては行けないのに小売店を始めたなど、なんらかの契約違反があった場合は債務不履行を理由に一方的に終了させることが可能となるケースがあります。もっとも身近なのは、長期間の家賃滞納を理由とした債務不履行ですが、こちらも「信頼関係破壊の法理」というもので借主は守られており、1ヶ月程度の滞納では難しいです。

3.更新拒絶による終了

一般的に賃貸借契約には契約期間が定められており、期間の満了とともに更新していきます。その更新を貸主が拒絶することで、契約を終了するケースです。

しかし、借地借家法には法定更新というものがあり、契約書の内容や貸主の意思に関わらず自動で更新されることになっています。この法定更新を拒絶し、解約するためには正当事由が必要となるのですが、上記の債務不履行のようなよほどのことがない限り、正当事由を満たすことは難しいです。(※定期借地契約の場合はこの限りではありません。)

 

上記のように、立ち退きというものは両者が合意しない限りよほど大きな過失が借主にない限り不可能に近いものとなっており、本件の場合、店長は営業継続の意思があるため、よほどの理由がない限りは立ち退きは難しいと考えられます。

立ち退きを拒否することのリスク

貸主との関係性

貸主の意に反することをするわけなので、長期的に営業していくことを視野に入れた時に貸主との関係が悪化することが考えられます。ただ家賃を支払っているだけの関係ならいいのですが、建物の補修や更新時など様々な場面で連絡を取り合う場合、気まずい思いをするなどが考えられます。

なんらかの嫌がらせを受ける可能性

上記のように関係性が悪化した場合、本件のような貸主の場合は嫌がらせをしてくる場合があります。例えば不要な工事を行い騒音を出したり、必要な連絡をしてこないなどが考えられます。

また、近年は少なくなりましたが昔は暴力団関係者による地上げが行われるケースが多く、そういった嫌がらせを受ける可能性もあります。

風評被害や誹謗中傷

今回のケースで問題視しなければいけないのが店長が地元住民から「よそ者」扱いされているという点です。地方の小さい都市では地元出身者による仲間意識が高く、噂が回るのも早いため、なんらかの嘘が流布され風評被害に合う可能性や内容の真偽などに関わらず「あそこは揉めてるらしい」とネガティブな印象を抱かれる可能性が考えられます。

立ち退きを求められたら必ず弁護士に相談

立ち退きを迫られた場合、迅速に弁護士に相談することが重要です。合意する意思がある場合は問題ありませんが、今回のケースのようにこちらの意思に反した立ち退きの場合、最終的に裁判なども視野に入れなければなりませんし、合意するにしても建物や経営の状況で条件の交渉や解約手続きが一般の方には難しいケースが出てきます。

今回はたまたまSNSで話題になりましたが、このような立ち退き問題は少なくありません。本件のようなひどいケースではなくても、突然の退去通告というのは身近に存在しているものであり、このようなリスクに備えておく必要があります。

もしものために弁護士を活用できる体制を

しかし、いざ弁護士を使うとなると「誰に相談したらいいかわからない」「費用が高そう」「裁判って難しそう」などいろいろな不安や心配から泣き寝入りしてしまう方も多いです。そこでおすすめなのが弁護士保険になります。

弁護士保険に入るメリット

1.トラブルに発展する前に予防できる

弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルに発展する前の抑止力となります。

2.弁護士への電話相談が無料で出来る

弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。

3.弁護士費用・裁判費用が補償される

それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。

他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。

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