【弁護士監修】客を選ぶ権利は法律に存在する? 入店拒否・出禁が違法になる場合とは。
2023年03月12日 2023年05月10日
コロナ禍によるマスクの着用拒否などで注目を浴びた入店拒否。堀江貴文氏(ホリエモン)の一件でも話題を呼びましたが、果たして入店拒否は法的に可能なのでしょうか?
本記事ではお店側視点・カスタマー視点の両面から入店拒否や出禁といったお店側が客を選ぶ権利について法的見解を解説していきたいと思います。
入店拒否・出禁は可能です
結論から述べると入店拒否は法的に認められています。
読者の皆さまがもっとも思い浮かべやすいのはドレスコードではないでしょうか? 高級ホテルのレストランではジャケットの着用を義務付けられていたり、サンダルや短パンはNGというのを耳にしたことがあるかと思います。
もしもドレスコードに引っかかる服装で来店された場合、お店側は入店を拒否することができます。それではどのような適法性があり入店拒否が可能なのでしょうか?
契約自由の原則
民法において「契約自由の原則」という制度が存在します。これは「誰と誰が」「どんな内容で」「契約をするのかしないのか」という契約に関わる内容は当事者同士が自由に行うことができると根本的な制度となっています。
飲食店や小売店での契約って?
では店舗における契約とはどういったものがあるでしょうか? 店舗と客の契約とは店が商品やサービスを提供し、客が代金を支払うという契約関係にあります。
例えば飲食店であれば「どんな料理を提供するか」「いくらで提供するか」「どういったお客様を入店させるか」などを店側が自由に決定することができます。
そのため、前述のようにドレスコードを設定し店は客を選ぶことが可能となっています。しかし、全てが全て好き勝手に拒否できるわけではありません。次項では拒否するのが違法になる可能性のあるケースを解説していきます。
入店拒否が違法になる可能性があるケース
入店拒否が違法になる判断基準は不合理な差別か否かです。店側のサービス提供や周りのお客様に影響が出ないにも関わらず拒否をすることは、通常不合理な差別とされるでしょう。
1.身体的な特徴や障害を理由に拒否した場合
目が見えない、言葉が話せないなど障害を持っていることを理由に入店拒否すると障害者差別解消法に抵触する恐れがあり、不合理な差別と言えるでしょう。
しかし、店舗がとても狭く車椅子だと入れない、ヘルプが必要だが人員が足りないなどやむを得ない事情がある場合はしっかりとその旨をご説明し、ご家族の方などのご理解を得ることで拒否することもやむを得ない場合もあります。
2.人種や国籍を理由に拒否した場合
たまに海外などで一部国籍を拒否するホテルなどのニュースを見るかと思いますが、こういった人種や国籍だけを理由に拒否することは人種差別・人権侵害と捉えられ不合理な差別と判断される可能性が極めて高いです。
しかし、どうしても国柄や文化の違いで日本的には迷惑行為に当たる外国人がいるのも事実。そういった場合は、事前にしっかりと禁止事項を説明したうえでそれでも守られなかった場合は退店していただくなどといった対応をしましょう。そうすることで人種や国籍を理由にした拒否ではなく、迷惑行為を理由とした拒否になります。
また、外国人のお客様が母国語しか話すことができずコミュニケーションが不可能な場合などは「メニューを説明することができない」などを理由に入店をお断りすることはできます。あくまでも差別ではなく、サービスに影響が出る明確な理由があるということが重要となります。これも、人種や国籍を理由とした拒否ではなく、コミュニケーションができないことを理由とした拒否です。なお、日本での公用語は日本語のため、日本語以外の対応をする義務は、お店側にはありません。
3.同性カップルやLGBTなどを理由に拒否した場合
客が同性愛者・LGBTだからなどという理由だけで入店を拒否すると非合理な差別となり、違法になる場合があります。昨今ではLGBT理解増進法案などの議論も積極的に行われており、国際的にLGBTの方々を差別から守る方向に進んでいます。当該差別は、特に現代ではSNSで炎上しやすいものとなっています。
入店拒否が認められるケース
では、入店拒否が認められるケースとはどういったものがあるでしょうか?
店側は良質な客に出来る限り居心地よく過ごしてもらうための企業努力をしています。そのため、営業の妨げになる、売上・評判が落ちるなどの可能性などを考慮して店側がルールを策定して入店をお断りすることができます。ただし大前提として不合理な差別になってはならないというルールがありますので注意しましょう。
1.コロナ禍でマスクを着用していない
店は感染防止対策として様々な努力をし、その中でマスクの着用を義務付けるお店も増えました。これは来店した客や従業員の健康を守るという観点から当たり前の処置です。もしも、マスクをしていない客の入店を許してしまうと、他の客もマスクをしていない客がいることに不安になり不快感を抱き早々に退店してしまう、悪評が広がるなどという事態も危惧されますので、正当な理由として入店拒否することができます。
なお、お店の中の管理権はお店側にあるので、「マスク着用」などのルールを定めることも、そのルールが不合理と言えない限りは、お店の自由となります。これは、国側のガイドラインにおいて公共の場で「マスク着用を求めない」となっていたとしても、お店の管理権は国とは別ですから同じにせずに店内のマスク着用を義務付けても問題ありません。
2.ドレスコードやマナーを守っていない
高級レストランなどではある程度のマナーが問われます。それにより店は店内の雰囲気を作り出し、特別感を演出しています。そのため、ドレスコードを守らなかったり、泥酔して大声を出すなど、店の雰囲気を損なう可能性がある客を入店させることは、他の客の不信感や居心地を損なう可能性があるため、拒否することができます。
タトゥーお断りはどうなる?
スパ施設や温泉などのタトゥーお断り。暴力団を連想させることから他の客に恐怖心を与えるため入店拒否してる施設も未だに多いです。こちらもドレスコード同様となり、店側の判断で拒否が可能ですが、近年では外国人旅行客も増えていることから禁止していない施設も増えています。
3.不当なクレームを入れてくる(モンスタークレーマー)
お店側に一切落ち度がないにも関わらず不当な要求を文句を訴えてくる悪質なクレーマーも入店拒否・退店させることが可能です。しかし、悪質なクレーマーはヒートアップしていることも多く、お店の中で大声を出したりしつこく何らかの要求を続ける可能性もあるため、場合によっては早々に警察を呼ぶなど毅然とした態度で対応しましょう。
4.営業の妨げになる可能性のある客
明らかに泥酔してる客は他の客とトラブルを起こしたり、嘔吐やふらつきで店舗を破損したりなどの可能性が危惧されます。他にも大勢で大声を出したりして、他の客に不快感を与えたりする場合なども評判に関わるために注意しても改善が見られない場合は退店を促すことが可能です。
また、前項で障害者や外国人について触れましたが、例えば外国語での対応や、その他特別な対応が必要な際に店側でその対応が不可能な場合は拒否することができます。
入店拒否を伝えるための適切な方法
しかし、入店拒否をする際は客側も門前払いに腹を立ててクレーマーになってしまったりトラブルに発展するケースも多々あります。そういった場合の予防方法や対応策の方がいくつかあるのでご紹介しておきます。
1.Webサイトなど文書で事前に告知をする
ドレスコードがある場合やマスクの着用義務、車椅子での来店など店側が制定しているルールがある場合は、Webサイトなどで事前にしっかりと告知をしておくことで、そのお客様だけではなく一律禁止している事実を明確化することができます。また、Webサイトだけでなく、店舗の入り口など入店前の客の目につく位置にも可能な限り掲示しましょう。
また、事前に判断してもらえることで実際に来店されて口頭で伝え、トラブルに発展するかもしれないストレスからも解放されます。
入店拒否の文章は弁護士にチェックしてもらっておくと安心
理由の明示や言い回しで誤解を招いたりする場合もありますので、できることなら掲載する文章は弁護士など法律の専門家にチェックをしてもらうことがおすすめです。弁護士保険に加入しておけば無料で法的な文書をチェックしてもらえる付帯サービスが付いてくる商品もありますので、ぜひチェックしてみましょう。
2.理由を明確にして伝える
すべての客がWebサイトや告知文書を見てから入店するわけではありません。もしも来店してしまわれた場合などは、ただお断りするのではなく「店の雰囲気を損なうため」「他のお客様にご迷惑がかかるため」「スタッフが確保できないため」など理由をしっかりと伝えましょう。
入店拒否でトラブルになってしまったら
それでも客が言うことを聞き入れず悪質なクレーマーになってしまう場合もあります。そうすると、その対応に人員が割かれるだけでなく他の客から見える場所だと不快感を与えることになってしまいます。そうなった場合は以下のような対応が考えられます。
1.録音・録画をする
防犯カメラの映像や双方の発言は客観的な証拠として大変重要となります。可能であるなら出来る限り会話の録音・客の動向の録画をするようにしましょう。
2.警察に通報する
大声で怒鳴り散らしたり、無理矢理の入店は業務妨害罪、金銭や土下座の要求などは脅迫罪や恐喝罪に該当する可能性があります。速やかに警察に通報し、可能なら具体的な犯罪名を一緒に伝えるとスムーズです。
3.トラブルの予防策を取る
とはいえ、警察に通報することそのものが注目を浴びたり、店の評判にも影響を与えかねないので出来ることならそういう事態にならないことが最善でしょう。弁護士保険に加入すると「弁護士保険加入ステッカー」がもらえます。これを店頭に貼っておくことで「この店には弁護士が付いている」と認識させることができるため、トラブル悪化の抑止力となります。
4.法的措置を取る
また、その場は無事に収まり、帰ったとしても後からネットで店の誹謗中傷を書き込んだりされる可能性もあります。そうなると店の評判が落ちて売上に直結するため早急に対応を取る必要が出てくるでしょう。正当性のない誹謗中傷は名誉毀損罪に該当する可能性が高く、それにより売上が落ちた場合、損害賠償を請求できる可能性も高いです。迅速に弁護士に相談し書き込みの削除や加害者の情報を特定しましょう。
もしもに備えて弁護士保険に加入する
しかし、いざ弁護士を使うとなると「誰に相談したらいいかわからない」「費用が高そう」「裁判って難しそう」などいろいろな不安や心配から泣き寝入りしてしまう方も多いです。そこでおすすめなのが弁護士保険になります。
弁護士保険に入るメリット
1.トラブルに発展する前に予防できる
弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルに発展する前の抑止力となります。
2.弁護士への電話相談が無料で出来る
弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
3.弁護士費用・裁判費用が補償される
それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
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