経営者やマネジメント層が知っておきたい「セクハラ防止のチェックポイント」

セクハラは、職業活動の様々なところで蔓延しています。健全な職場環境づくりを求められる経営者にとって、セクハラは無視できない問題です。そこで、こちらの記事では、セクハラの概念を整理するとともに、セクハラにまつわる訴訟の判例をご紹介します。

そもそもセクハラとは?

セクハラは、男女雇用機会均等法において、以下のように定義されています。

①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること

②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

①については、職場における性的な言動に対し、拒否したことで不利益を受けることから、対価型セクシュアルハラスメントといいます。

②については、職場において性的な言動があり、環境が不快となることで、支障が生じることから、環境型セクシュアルハラスメントといいます。

「職場」に関しても同様に、男女雇用機会均等法において定義されています。 

職場とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

例)取引先の事務所、取引先との打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅など

判例紹介①

■事案の要約
・会社が管理職を務めていた従業員に対して、セクハラを理由に、出勤停止、及び、降格人事を行った
・会社は当初から、セクハラに関する禁止行為の明示、研修の実施など対策を行っていた
・管理職を務めていた従業員は、出勤停止処分、及び降格人事が正当な自由がなく無効なものであり、訴訟を起こした

■判決の結果の要約
・セクハラを事由とした会社の処分は、懲戒権の乱用に当たらず、有効である

・会社は、職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付け、その防止のため、従業員らに対し、禁止文書を周知させ、研修への毎年の参加を義務付けるなど種々の取組を行っており、上記被上告人らは、上記の研修を受けていただけでなく、管理職として上記会社の方針や取組を十分に理解して部下職員を指導すべき立場にあったこと

・セクハラ等を受けた女性従業員は、勤務を辞めることを余儀なくされたこと。

■判決のポイント
・セクハラを事由とした解雇処分が妥当とされたこと
・会社として明確に基準を定めていたことにより、裁判時において、降格人事などの処分が適法と認められたこと。逆に、会社として明確に基準がなかった場合には、会社側の責任が問われていた可能性も考えられます。

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84883

判例紹介②

■事案の要約
・会社の代表が秘書に対して、1.2年にわたって性交渉を求め続けた
・被害者は、セクハラにより、その後の就労が十分にできなかった

■判例の要約
・セクハラによる不法行為として認定
・退職後3ヵ月は月収の全額、その後の9ヵ月は月収の1/3を逸失利益として認められる
・結果として、300万円の慰謝料の支払い

■判例のポイント
・セクハラの慰謝料の考え方として、セクハラによって、その後の就労に影響を及ぼしたとして、その逸失利益を支払うという点がアナウンスされたこと

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/633/034633_hanrei.pdf

判例紹介③

■事案の要約
・薬局の代表者が薬局に勤務していたパートタイマーの女性にセクハラ
・同僚に相談したことをとがめられ、解雇に。それによりPTSDが発症したとされる
・訴えに対して、薬局の代表が事実無根として、裁判に発展

■判決の要約
・セクハラ被害は、不法行為として認定
・更に、解雇は不当解雇として認定
・会社の業務時間の中で起こったこととして、会社に賠償責任を認定
・被害者の苦痛とこれによってこれまで奪われてきた原告の就労の機会、大学の通信課程修了後の新たな生活の機会、その他の無形の損害の一切を金銭評価すれば500万円を下回るものではないと判断された

■判決のポイント
・会社の責任を認定していること
・就労の機会を逸したことだけでなく、無形の損害も考慮に入れられたこと

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/607/034607_hanrei.pdf

組織・会社としていかにセクハラを起こさないか

判例をご覧頂くと分かるように、セクハラは個人だけでなく、会社としての責任が問われてしまいます。また、セクハラは裁判になると、損害賠償だけでなく、判例の詳細にあるように、セクハラの実態が公開されてしまい、会社・個人の信頼を大きく損なう可能性があります。その為、いかに組織としてセクハラを起こさない状況を作っていくかを意識する必要があります。

厚生労働省では、事業主が講ずべき対策を10個の指針でまとめています。以下にて、補足とともに紹介致します。これらの項目にて、組織・会社として実際に対応が出来ているかを確認してみてはいかがでしょうか?

1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

①セクハラ防止の方針の明確化
セクハラ防止のための社内報やパンフレットなどの作成や、研修、講習などを通して、セクハラが許されないことを周知する必要があります。

②就業規則の整備
就業規則においてセクハラをしたものに対する懲戒規定を明記し、周知することが必要です。

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口の設置
セクハラ発生時に適切な対応ができるよう、相談窓口を設置したことを周知することが必要になります。

④相談体制(相談窓口担当者)の整備
セクハラの内容や被害者の状況に応じ広く相談に対応したり、相談窓口担当者と人事部が連携できる仕組みを作る必要があります。また、相談窓口担当者への研修も行うことも必要です。

3.職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係の迅速かつ正確な確認
セクハラ被害の申告があった場合、その内容について迅速に確認する必要があります。

⑥被害者に対する配慮の措置
セクハラの内容や状況に応じ、被害者とか会社の関係改善に向けての援助や、配置転換、被害者のメンタルヘルスの相談対応などをすることが必要です。

⑦加害者に対する措置
セクハラの事実が判明した場合、就業規則に基づき懲戒を講ずる必要があります。また、被害者とか会社の関係改善に向けた援助や、配置転換などについても行う必要があります。

⑧再発防止措置
セクハラを行なった者を厳正に対処する方針を周知する社内報、パンフレットなどを作成することが必要です。また、セクハラに関する意識を啓発するための研修を改めて実施するなどの措置も必要になります。

4. 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置
相談窓口にセクハラの相談をした場合でも、プライバシーが保護されることを周知することが必要です。

⑩不利益な取扱いをされない旨を周知・啓発 
相談窓口にセクハラの相談をした場合にも不利益な扱いをされる恐れをなくす必要があります。

詳細はこちらから
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/05_1.pdf

個人としてセクハラにならないように意識したいチェックポイント

組織・会社として対応していても、自分自身や管理職のスタッフがセクハラをしてしまっては、本末転倒です。以下では、厚生労働省のサイトに掲載されている内容から、チェックポイントになりえるものをご紹介いたします。

Q:以下はセクハラに該当すると思いますか?

  • 容姿やプロポーションについてあれこれ言う
  • 性的な冗談を言う
  • 肩、手、足に触る
  • 職場の宴会でお酌やカラオケのデュエットを強要する
  • 女性労働者のみ、お茶くみを強要する
  • 「おじさん」「おばさん」「〇〇くん」「〇〇ちゃん」と呼ぶ
  • 「女性は職場の花で良い」「男のくせに」「女のくせに」という
  • 「結婚はまだか」「子どもはまだか」と尋ねる
  • 仕事に関係ない食事に誘う

A.全てセクハラに該当します。

一個でも大丈夫かと思ってしまったのであれば、危ないかもしれません。

厚生労働省のサイトはこちらから
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/08–.pdf

最後に

すべての従業員は、会社の成長と発展を支えてくれる貴重な「人財」です。セクハラ行為をする人物に気づきと改善を促すこと、セクハラを受けている人物のサポートをすることは、経営者の重要な役割と言えます。

弁護士費用保険の教科書Bizでは、すべての経営者の皆さまに、有用な判例を紹介していきます。

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