Web管理者が知っておきたいサイトやSNSでのクチコミ・レビューによる風評被害への対応
2020年12月10日 2023年05月19日
      クチコミは商品販売に欠かせないものになっています。一方で、間違ったクチコミは、逆に商品に対して風評被害を生むことがあります。間違ったクチコミが発生した際に、どのような対応が必要か、判例とともに、経営者が知っておきたいことを紹介します。
判例の紹介
■事案の要約
・美容クリームを販売している事業者がウェブサイトに商品を紹介されているページにおいて、①競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり(不正競争防止法2条1項21号),②原告の競業者の商品についての品質等誤認表示5 (同項20号)に該当し,また,③名誉毀損行為として一般不法行為に当たると主張
・ウェブサイトが設置されたウェブサーバーの管理者であり,契約者情報として,本件発信者情報を保有している会社に対して、発信者情報開示請求を行った
■裁判の結果
・発信者情報開示請求が認められた
■判例のポイント
・ウェブページの内容は、営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり,これにより,事業者の権利が侵害されたことが明白(プロバイダ責任制限法4条1項1号)
・本件発信者に対し,損害賠償等を請求する意向であるとするところ,その前提として本件発信者を特定することは必要不可欠であるから,事業会社には,損害
賠償請求権等の行使のために本件発信者の発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)が認められる。
判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/839/089839_hanrei.pdf
ポイント紹介:信用棄損行為になっているか、競争関係は成立するかどうかを考えるべき
信用棄損行為とは
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為が、不正競争行為にあたります(2条1項14号)。
になります。
今回の裁判のケースでは、以下の事項が信用棄損行為として認められました。
「ウェブページにおいて,原告商品と第三者商品を比較してみた,という記載の下,一見,客観的に両商品についての情報を比較・提供するような体裁をとりながら,原告商品と比較して第三者商品の利点をより多く挙げ,第三者商品の購入を勧めていること,原告商品の購入につながるリンクなどは設けない一方で,第三者商品を購入することができる訴外会社の公式ウェブサイトへのリンクを2箇10 所に目立つ形で設けており,その近くに,第三者商品を購入する場合には訴外会社の公式サイトから購入することを強く推奨する文章を記載していることなどから,閲覧者に対し,訴外会社のウェブサイトを通じて第三者商品を購入することを促すような仕組みを作っている」という認識がされた。
上記に加えて、ウェブページの運営者が、第三者商品の売上が上がることにより、利益を得ているという認識になったため、ウェブページの運営者は、「競争関係にある」と認識されました。
ポイント紹介:虚偽の事実を流布したかどうかを考えるべき
この裁判のポイントでは、「虚偽の事実を流布したか」について、争点になっています。
クチコミについて
この裁判では、クチコミに関しては、「虚偽の事実を流布していない」という判断になっています。
背景としては、本件口コミサイトにおける書き込みがそのまま転載されている形式をとっており、それに関しては、事実として認定されたことになります。
一方で、
・口コミサイトには実際に存在しない
・書き込みを,転載を装って本件ウェブページ上に虚偽の記載をした
・発信者又はその意を受けた者が本件口コミサイトに虚偽の書き込みを行い,本件発信者がこれを転載した
というケースの場合ですと、虚偽の事実を流布したという認識になっていた可能性が高いと考えられます。
サービス・プロダクト紹介について
サービス・プロダクト紹介においては、以下のような判定がされています。
・「定期コースを途中解約できない」出来ないという見出しがあり、誤解を招く可能性があるが、その下部に、詳細が書いており、よく読めば解約できないとされる商品のコースは「年間購入コース」であると理解することができるので、「虚偽の事実の流布」には当たらない
・裁判を起こした化粧品会社の商品は競合よりもちょっと高いという表現は、容量の実際の違いに基づいて表現されているため、筆者の個人的な感想又は主観的意見を述べたものにすぎないと解されるから,本件記載4は,虚偽の事実を流布するとまでは認められない
・商品に含まれる防腐剤に副作用があるおそれを述べる記載であるが,原告商品自体の危険性をいうものではなく,これに続く記述を読めば,言及されている防腐剤が「グルコン酸クロルヘキシジン」であること,その副作用は適正濃度を超えた場合に起きるおそれがあること,原告商品に含まれるグルコン酸25 クロルヘキシジンの量は明らかでないことが読み取れる為、虚偽の事実を流布するとまでは認められない
発信者情報開示をする必要がある可能性も
信用棄損行為になっているか、虚偽の事実を流布しているかという点が当てはまった場合、訴えることが必要になります。
ただし、ウェブページに関しては、発信者が正確に分からないケースがある為、その場合には、発信者を特定する必要があります。その背景にあるのがプロバイダ責任制限法4条1項2号になります。
第四条  特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一  侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二  当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
最後に
風評被害を受けたと思ったら、それが、「信用棄損行為」「虚偽の事実を流布されているかどうか」を確認した上で、弁護士に相談するのがお勧めになります。
いかがでしたでしょうか?費用保険の教科書Bizでは、様々な中小企業・個人事業主の方に役立つ法務情報を弁護士とともに発信しているので、是非他の記事も参考にしてみてください!
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