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経営者が知っておきたい障害者雇用における障害者差別解消法と判例

2020年12月09日 2022年12月01日

契約 雇用・労働・従業員 企業法務・法律
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経営者が知っておきたい障害者雇用における障害者差別解消法と判例

障害がある方は、2018年の調査によると、日本の人口の中で、約7.4%の約936.6万人と言われています。企業の経営者として、障害がある方が従業員になっていても自然だと考えることが出来ます。

しかし、障害がある方を従業員として雇うことが未経験の経営者も多いかと思います。今回は、経営者が知っておきたい障害者差別解消法とそれに関連した判例を紹介します。

障害者差別解消法とは

障害者差別解消法は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定されたものです。

ポイントは、「不当な差別の取り扱いの禁止」「合理的配慮の提供」になります。

「不当な差別の取り扱いの禁止」

事業者が障害のある人に、正当な理由なく、障害を理由として差別をすることを禁止しています。

「合理的配慮の提供」

障害がある人から社会の中にあるバリアを取り除く為に何らかの対応を必要としている意思が伝えられた際に、事業者が対応に努めること。

「不当な差別の取り扱いの禁止」、「合理的配慮の提供」は、障害のある人とそうでない人の機会や待遇を平等に確保することが必要という考え方に依拠しています。

また、配慮の内容や程度は、障害の内容や周りの環境、配慮を行う側の状況により変わるものと考えられています。

実際の判例の紹介

■事案の要約
岡山短期大学の教授が授業の職務から外され、幼児教育学科事務に職務内容を変更させられた。

教授は、遺伝性疾患である網膜色素変性症に罹患しており、主に進行性夜盲,視野狭窄,羞明を認められる疾患を持っていた。当初は、文字の判読は可能であったものの、疾患が進行し,文字の判読が困難となったため,平成26年度以降,補佐員を雇い,視覚補助を得て授業活動及び研究活動に従事していた。

■判決の結果の要約
・教授に授業を担当させず,幼児教育学科事務のみを担当させる旨の業務命令に従う義務がない
・それに伴い、研究室の明渡しを命じる業務命令に従う義務がない

■判例のポイント
一つの争点として、授業内で「学級崩壊」に近い状態にあったことが指摘され、それが障害を理由に、教授が能力が満たないという点が争点になっていた。その争点に対しては、

「教授は、全ての授業につき補佐員の視覚補助を受けて授業を行う意向を示していた事実があり,今後,教授が卒業研究を含む全授業につき視覚補助を受けるとともに,大学側と協議するなどして,有効,適切な視覚補助の在り方に改善すれば,学生の問題行動に対しては対応可能と認められる。」

「大学の学科内で,学生の問題行動につき,全体としてどのように指導していくか,あるいは,教授に対する視覚補助の在り方をどのように改善すれば,学生の問題行動を防止することができるかといった点について正面から議論,検討された形跡は見当たらず,むしろ,望ましい視覚補助の在り方を本件学科全体で検討,模索することこそが障害者に対する合理的配慮の観点からも望ましいものと解される。」

という判断がなされた。

判例の詳細はこちら
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/828/086828_hanrei.pdf

判例から見出されること

合理的配慮の提供を、会社として正面から議論・検討する必要性

配慮を必要とする従業員から、意思表明があった際には、配慮を実施する為に真摯に検討するプロセスが必要になることが示唆されます。

障害がある従業員が働いていることは、昨今、珍しい状況ではなくなっている為、そのような仕組み・制度を持っていない会社は、仕組み・制度を整えることが必要とされています。

※実際に、民間事業者は、サービス利用者に対しての合理的配慮は努力義務であるものの、みずからが雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省の指針にて定められています。

障害があったとしても、補助があれば、職務を遂行できる場合、補助を会社として提供することを真剣に検討する

また、同様に、障害があったとしても、許容される範囲での負担での補助をつけることで、職務を十分に遂行できる場合には、事業者が合理的配慮として真剣に検討すべきことが示唆されます。

今回の判例では、「視覚障害を持つ方が資格補助の補佐をつけること」というのが具体例として挙げられていましたが、「聴覚障害を持つ方が手話サポートを受ける、その手話サポートが会社経営に影響を与えない程度の費用で済む」など様々な例が考えることが出来ます。

「障害が理由で職務を遂行出来ない」ではなく、「障害があるけど、どのようにしたら職務を遂行できるか」という視点で考えることが重要と言えます。

最後に

すべての従業員は、会社の成長と発展を支えてくれる貴重な「人財」です。障害がある方が共に働き会社を成長させる仕組みを作ることも、経営者の重要な役割ではないでしょうか。


いかがでしたでしょうか?費用保険の教科書Bizでは、様々な中小企業・個人事業主の方に役立つ法務情報を弁護士とともに発信しているので、是非他の記事も参考にしてみてください!

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