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会社が業務上横領の被害を受けたら…発覚後の対応と防止策(経営者向け)

2020年11月14日 2023年05月09日

雇用・労働・従業員
#遺失物等横領罪 #業務上横領罪
会社が業務上横領の被害を受けたら…発覚後の対応と防止策(経営者向け)

あまり考えたくはないことですが、従業員が横領をする可能性は否定出来ません。信頼していた従業員がそのようなことをしていたら衝撃を覚えることだとは思いますが、経営者は、まさかの事態も想定して、対策を施しておくことが求められます。

例えば、飲食店のように、現金のやりとりが多い業種では、そのようなトラブルは起きやすいと言えます。本記事では、その際の対策を紹介します。

業務上横領とは

業務として他人の物を預かっている人が、その物を横領したときに成立する犯罪です。たとえば、飲食店では、レジを管理している人が、その現金を自分のものにして使ってしまうようなケースが相当します。

横領が犯罪として成立する際の要件には、「横領をしようとする意思(不法領得の意思)」が争点となります。業務上横領の構成要素は、刑法253条・254条に規定されていて、以下の3つの罰則が適用されます。

単純横領罪

単純横領罪は、自分が保管する他者の財物を横領した場合に適用され、法定刑は5年以下の懲役です。

業務上横領罪

業務上横領罪は、業務上管理している財物を横領した場合に適用され、法定刑は10年以下の懲役です。

遺失物等横領罪

遺失物等横領罪は、落とし物のように他者の占有を離れた財物を横領した場合に適用され、法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。また、占有離脱物横領罪と呼ばれることもあります。

飲食店のような業種で起きやすい業務上横領

飲食店のように、アルバイトへの給与支払いや顧客との現金会計など、どうしても現金のやりとりが発生しやすく、それにより、不正が起きやすい環境にあります。代表的な例として、以下のようなものを挙げることが出来ます。

■レジ現金の横領
・店舗のスタッフがレジからお金を取った
銀行振込する際に、一部のお金を着服

■経理処理における横領
・現金払いのアルバイト給与を多めに報告し、一部を着服
・架空の経費精算

■物品盗難
・倉庫の換金しやすいものを取得

■癒着
・納品業者に対して、会社に報告していないキックバックを勝手に取得

中には不正に手を染めるきっかけを持っている従業員もあり、「借金があった」「ギャンブル癖があった」などの要因から、出来心で横領を始めてしまい、後戻りが出来ないような状況に陥るケースがあります。性悪説に立って考えると、誰もが機会があれば、してしまう可能性を持っていると考えておいた方がいいと言えます。

判例のご紹介①:郵便局員の横領

■事案の要約
・郵便局に勤務をしていた職員が横領。現金を回収する仕事をしていた
・50万円を着服、自分の消費の為に使用する
・更に、6941万640円を着服、自分の消費の為に使用する
・更に、更に、3091万8880円を着服、自分の消費の為に使用する
・不正が発覚し、就業禁止命令を受けたにも関わらず、業務に従事しているように装い、顧客を騙し、更に現金を取得した(それらはギャンブルに消費していた)

■判例の結果の要約
・懲役6年
・未決勾留日数中150日

■判例のポイント
・以下の件の考慮があったとしても相当に悪質と判断された
 -着服した金額をギャンブルで一発当てることにより返済しようとしていた
 -難病の家族を抱えていたストレスという情状酌量はあった
 -一部の金額は返済している。一方で、9000万円以上が未返済である

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/807/089807_hanrei.pdf

判例のご紹介②:司法書士による横領

■事案の要約
・司法書士が遺言執行者としての業務中、相続財産を着服(約753万円)
・自己の消費の為に使用したとされた

■判例の結果の要約
・懲役2年6月

■判例のポイント
・被告が自己目的に消費していないと主張したものの、それを裏付ける証拠を提出することが出来ず、また消費した分の補填もなされていないことから「不法領得の意思」があったとされた

判例の詳細はこちらから
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/654/084654_hanrei.pdf

上記2つの裁判は、金額がとても大きく、裁判結果に掲載されていたものになります。

一般的には、業務上横領の事件は、裁判にならない or 示談で解決をすることが多く、飲食店に関する業務上横領の裁判の判例が少ないのも、業務上横領の裁判がいかに少ないかを物語っていると言えるのではないでしょうか。

業務上横領をされない為の会社としての対策

大前提は、業務上横領が出来ない仕組みにすることが一番効果が高いと考えることが出来ます。また、それらの施策は、従業員・経営者の双方の信頼を維持する為の仕組みとも言えます。

受発注のシステムを出来る限りオンライン化。決済も出来るだけ、クレジットカードや電子決済に

手書きの処理などは、不正が発生しやすい業務になります。

出来るだけ毎日の売上・現金・棚卸残高のチェック

出来る限り頻度を挙げることで、不正が発生した際に検知がしやすくなります。(ずっと不正をしていた場合は検知が難しいですが)また、不正がしづらいという社内空気を醸成することも出来ます。

防犯カメラの設置

防犯カメラを設置することは、透明性を引き上げることになり、逆に従業員に疑惑が持ちあがった際にも、従業員を保護する目的で使用することも可能です。

スタッフの変化に敏感になる

不正が発生する場合には、従業員の変化がある可能性があります。

判例にしても、難病の家族を持つことによるストレス、ギャンブル癖などがあがっていました。不正の前後では、必ず兆候があると考え、従業員の変化に敏感でいることが大事だと言えます。

業務上横領が発覚したら・・・・

とはいえ、業務上横領が発覚したら、何をすべきでしょうか。

横領の有無の確認と横領金額の確定

横領した事実と横領金額が確定出来なければ、横領をした従業員とも話をするのが難しいと言えます。逆に、名誉棄損などのリスクが生じる為、とにかく事実の確定が必要です。

対応を決める

対応はいくつかあります。刑事告訴・懲戒解雇に踏み切るのも一つの選択肢ですが、非常に手間と負担がかかることを覚悟する必要があります。

多くのケースでは、「示談、本人より返済を受ける」「身元保証人に請求をする」「退職金と相殺する」などの手段が取られることが多いとされています。

上記のように対応は、個々の事情により異なるので、横領が発覚した時点で、一度、弁護士に相談をすることをお奨め致します。

示談を選択した場合のメリット&注意点

法的手段として選ばれることが多いのが示談による解決です。示談による解決のは事件を公にすることなく社内で解決できることと、資金を回収できる可能性が高いことがメリットになります。(刑事告訴をしてしまうと、告訴された方の就労が難しくなるケースが多く、返済が不可能になるケースが多いことが背景です。)

示談が成立しても被害額を全額回収できるとは限りません。被害額が大きい場合には、本人の支払能力の問題から回収困難なケースも想定できます。確実に被害額を回収するためには、連帯保証人を付けたり、公正証書を作成したりなどの対策を講じることが推奨されます。

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