誹謗中傷に関する3つの注意点:サービス提供者(プロバイダー、プラットフォーム)向け
2020年11月02日 2022年12月01日

近年、SNSやサービスにおいて、ユーザーから誹謗中傷が含まれたコンテンツが投稿され、それが炎上に繋がったり、ブランド棄損に繋がるケースがあります。
ここでは、サービスを作る経営者・個人事業主が、何を気を付けるべきかを紹介します。
誹謗中傷とは
「誹謗」とは他人へ悪口を言ったり罵ったりする行為を,「中傷」とは根拠のない嘘やでたらめを述べる行為をそれぞれ意味しています。
「誹謗中傷」はデマや揶揄,罵倒,愚弄,嫌がらせなどを含む「言葉による暴力」と同じ意味として捉えられることが多いです。
法律の側面では、「誹謗中傷」行為そのものが違法になることはほとんどなく、誹謗中傷の結果、引き起こされる権利侵害(名誉毀損,侮辱,信用毀損)や業務妨害などが焦点になります。
誹謗中傷が違法と判断されてしまうケース例の紹介
ここでは、誹謗中傷の結果、違法の判例が出たケースを紹介します。
下記は、一般的な誹謗中傷のイメージとは違いますが、他者に対する攻撃的な言動が名誉棄損の実害があると判断され、損害賠償に至ったという事例になります。
■事例の要約
・学生が「原告の研究不正疑惑の解消 を要望する会(フォーラム)」というホームページを設立、某大学の総長を、論文の捏造・改竄があるのではと告発
・大学の総長は、こちらを名誉棄損として訴えを起こした
■判例の要約
・結果として、名誉棄損であることが認定され、学生が損害賠償の命令を受けるとともに、謝罪に至った
■判例のポイント
・学生の告発は、科学的合理性が認められず、告発は不受理となった
・その為、学生の告発は、誹謗中傷と捉えられ、名誉棄損の実害が出ていると判断された
判例の詳細:平成22(ワ)1314 損害賠償等請求事件等https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/796/083796_hanrei.pdf
プロバイダー・プラットフォームに求められる責任
作っているサービスの中で、ユーザーが誹謗中傷をした場合、それはユーザーのみの責任になるのでしょうか?過去の判例によるとそうとは言い切れません。
名古屋地判H20.3.28、名古屋高判H20.11.11、最決H21.10.27における、オークションサイトにて詐欺にあったユーザーがサービス提供者を訴えた裁判では、プロバイダー・プラットフォーム側には、ユーザーに対して「欠陥のないシステム」を構築してサービスを提供すべき義務を負っている、として安全なサービス提供の義務を求めるという方針が出ています。
これを誹謗中傷の件に置き換えると、プロバイダー・プラットフォームを作る際には、誹謗中傷が発生することを出来る限り避ける為の仕組みや取り組みがされることが求められると考えられます。
プロバイダー責任制限法についての解説
また、近年では、社会情勢に影響を受けて、プロバイダー責任制限法が設立されています。誹謗中傷に対して、何らかの関与をしないと、法的に不利になる可能性が増していると言えます。
■プロバイダー責任制限法とは
特定電気通信による情報の流通(掲示板、SNSの書き込み等)によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任が免責される要件を明確化するとともに、プロバイダに対する発信者情報の開示を請求する権利を定めた法律です。
■簡単にいうと・・・・
インターネット上に他人の権利を侵害する情報が流通した場合、プロバイダ等は、以下のように権利を侵害されたとする者又は発信者から法的責任を問われるおそれがあります。
① 他人の権利を侵害する情報を放置 → 権利を侵害されたとする者から損害賠償請求を受ける可能性② 実際は権利を侵害していない情報を削除 → 発信者から損害賠償請求を受ける可能性
プロバイダー・プラットフォームにて気を付けるべきこと
①ユーザーを誹謗中傷から守る&ユーザーの権利を守る為の仕組みや注意喚起をしているか
明確にどの程度の基準まで、ユーザーの権利を守るべきか、注意喚起をすべきかという基準はありません。社会情勢・関連法規・システムの技術水準・システムの構築&維持管理にかかるコスト・システム導入による効果・システム利用者の利便性を総合考慮すべしという指針があるのみです。
その為、会社・個人として、どの程度まで費用をかけることが出来るかを検討した上で、
最大限出来る仕組みの導入&注意喚起を実施しておくと、何かあった際にも対策を施していたということが出来るのではないでしょうか。
②内部にて、何がOK・NGかの基準を整理しているか
①の運用をしていく為にも、内部にて、どのような発言・言動が
誹謗中傷に当たってしまうかの基準を定めておく必要があると言えます。
そのような基準を定めた後、実際に誹謗中傷が発生しないように、監視・対応出来る体制も必要になります。例えば、投稿監視サービスを提供している会社も多くありますので、是非、検討してみましょう。
ネットパトロール(投稿監視)有人監視サービス
https://www.e-guardian.co.jp/service/net-patrol/manned/
③法律的な最新のアップデートをしていこう
この分野のサービスはITサービスが多いことから、新しい事件・事例がとても速いスピードで生まれています。近年では、「DeNAのキュレーション問題」などが記憶に新しいのではないでしょうか。
■DeNAのキュレーション問題とは
DeNAのヘルスケア情報キュレーションサイト「WELQ」(ウェルク)において、不正確な内容や著作権侵害・医師による監修がない医療記事が大量に存在するという問題に端を発し、DeNAの他のキュレーションサイトも同様の問題が次々明らかになった。
DeNAのキュレーション問題はこちらから
これから、情報発信をしていく、サービスを作っていくことを検討している経営者・個人事業主の方は、それらの状況を把握&相談をすることが可能な弁護士や法律に長けた方とネットワークを持つことが推奨されます。
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