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生成AIを事業に使う時に気をつけたい著作権と商用利用の問題

2025年12月12日 2025年12月12日

インターネット・SNS 企業法務・法律
生成AIを事業に使う時に気をつけたい著作権と商用利用の問題

近年、生成AI(以下「AI」)ツールを活用したデザイン制作や文章作成が急速に広がり、企業の業務効率化やコスト削減に大きく寄与しています。一方で、AIが学習に用いるデータや生成物そのものに著作権問題が潜み、無自覚に使うとトラブルに発展するリスクがあります。本記事では、事業者視点でAIによる画像・テキスト・音声生成時に押さえておくべき著作権・商用利用のポイントを法的観点から整理し、具体的な注意点と対策をご紹介します。

生成AIの生成物に著作権はある?

基本的には著作権保護の対象外

日本の著作権法(著作権法第2条第1項)では、「思想または感情を創作的に表現したもの」が“著作物”として保護対象です。具体的には小説・絵画・映像・プログラムなどが該当し、著作権の発生には登録手続きは不要で、創作した時点で自動的に発生します。AIが自動生成したテキストや画像には「人間の創作性」が直接認められないため、現行法上は著作権保護の対象外と解されています。しかし、実際には以下のような問題が顕在化しています。

AIで生成した映像やイラストなどを商用利用することはできる?

商用利用とは

商用利用とは端的にすると「そのコンテンツを使って利益を得る」ことを指し、法人であれば社内資料への利用など直接的な利益を得ない場合も商用利用とみなされる可能性が高いです。以下は商用利用とみなされる可能性が高い例です。

営利を目的とした使用

  • 生成コンテンツを自社商品やサービスの広告、Webサイト、カタログ、パンフレット、動画コンテンツなどに用いて、売上や集客を図るなど
  • AIで作成したイラストをECサイトの商品パッケージに印刷する、AIが生成したキャッチコピーを広告バナーに利用するなど
  • AIで作成したイラストで「制作料」を請求する
  • AIで作成した動画をそのまま販売したり、自社商品や作品に組み込む

再販・再配布

  • 生成した素材自体を「素材集」「テンプレート」「ストックコンテンツ」として他社に販売、または有料でダウンロード提供するなど

サービスへの組み込み

  • 生成AIの出力結果をAPIやプラグインを通じて自社製品や業務システムに組み込み、顧客や社内で利用できる形で提供する。

生成AIの利用が法的に問題となるケース

著作権侵害

学習データ由来の無断利用

AIのトレーニングに際に、ウェブサイトや電子書籍、イラストなど著作権者の許諾なく学習素材に使用した場合、著作権法第21条(複製権)、第27条(翻訳・翻案権)に抵触する可能性があります。学習データの著作権者がAI生成物中に元著作物の特徴的表現を発見すると、複製権・翻案権侵害などを主張される可能性があります。

生成物そのものの無断転載

AIが生成した文章や画像を、自社コンテンツとして加工・配布する際に、生成物の帰属条件を確認せずに利用した場合、AIサービス利用規約で「非商用限定」「帰属表示義務あり」など規定されている場合は契約違反となる可能性があります。その場合、利用規約(契約)違反に基づく損害賠償請求、アカウント停止などのペナルティが課せられる可能性があります。

パブリシティ権・肖像権の侵害

有名人や実在人物の肖像生成

AIに有名人の名前を入力し、肖像風の画像を生成・広告に利用した場合、日本では肖像権は明文化された規定がないが、判例上「私生活上の権利」として保護。パブリシティ権(商業的利用権)侵害の恐れがあり、権利者(本人または遺族)からの使用差止め請求や損害賠償請求される可能性があります。

実在の人物の会話や音声を真似た音声生成

政治家や著名人のスピーチ風音声を生成し、プロモーションに使用した場合、著作権法第20条(氏名表示権)、第2条(著作者人格権)相当の保護、電気通信事業法による不正競争防止規定の類推適用とされる場合があり、名誉毀損、肖像権侵害、パブリシティ権侵害、場合によっては詐欺罪適用の可能性があります。

プライバシー・個人情報の侵害

個人情報を含むテキスト生成

顧客リスト(氏名・住所・購買履歴など)をプロンプトに含め、パーソナライズされた文面を生成した場合、個人情報保護法第16条(利用目的の特定)、第23条(第三者提供の制限)に抵触する恐れがあり、情報主体の同意なしに個人情報をAIサーバーに送信すると、「安全管理措置義務違反」に問われ、50万円以下の罰金などが課せられる可能性があります。

データ漏えいリスク

AIプロバイダーが提供するクラウドサービスにアップした機密情報(社外秘資料や個人情報)が、想定外に第三者へ流出した場合、不正競争防止法、第20条(営業秘密として保護)に抵触し、機密保持義務違反での損害賠償、企業ブランド毀損の恐れがあります。

不正競争防止法違反

顧客企業の内部マニュアルや仕様書を無断でAIに学習させ、他社にも同様の機能提案を行うなどをした場合、不正競争防止法第2条第6項(営業秘密の定義)および第21条(営業秘密侵害の差止め)に抵触し、差止請求、損害賠償請求。営業秘密として管理していた情報をAIサーバーにアップロードした時点で「漏えい」に該当する可能性があります。

医療・法律など専門分野での誤情報提供

医療アドバイスの自動生成

AIに病気の治療法を相談させ、そのままパンフレットやウェブサイトに掲載したりすると医師法第17条(医業の独占)、薬機法(医薬品・医療機器の広告規制)非医師による医療行為の無資格提供とみなされ、行政処分や刑罰の対象になる可能性があります。

法律相談の自動生成

弁護士資格のない人間がAIに法律相談し、そのまま顧客に提供したり、リーガルアドバイスを使用した場合、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)に該当する恐れがあります。

生成AI利用で違法にならないためのチェックポイント

使用するAIサービスの利用規約を確認する

AIサービスの利用規約を精査し、事業におけるAIの用途と照らしわせることが重要です。以下はチェックすべき条文例です。

・「ユーザーは、利用規約に従い生成されたコンテンツ(テキスト、画像、音声等)について、商用利用を含めた全利用権を無償かつ永続的に許諾される。」
・「ただし、本サービス提供者は、生成モデルおよびAPIに関する知的財産権を放棄せず、ユーザーには当該モデルそのものの複製・改変・第三者提供は認められない。」

ただし利用規約のみならず別紙「サービス利用契約書」の中で「サンプル生成物の利用形態」や「禁止事項例」など利用規約以外に記載されている可能性もあるので注意しましょう。

主要AIサービスの利用規約による生成物の帰属規定

生成物の著作権が「ユーザーに帰属する」か「共有ライセンス扱い」や商用利用の可否を確認しましょう。ユーザー帰属でない場合は、生成物を他者に無断利用されたとしても自社で訴訟などはできませんので、商用利用するには不向きです。

サービス名 商用利用可否 ユーザー権利 プロバイダー権利
OpenAI ChatGPT 有料プラン:可
無料枠:制限あり
・生成テキスト/画像の商用利用・再配布・改変が可能
・自社サービス、製品への組み込みOK
・モデル本体およびAPIの著作権・ロゴ・商標はOpenAIが保有
・利用規約違反時はアカウント停止・損害賠償請求の可能性
Anthropic Claude Pro/Enterprise:可
無料プラン:不可
生成テキストの商用利用・再配布・改変が可能 モデル・APIの権利はAnthropic社が保有
Midjourney 有料プラン:可
無料プラン:不可
サブスク加入時は生成画像の商用利用・二次頒布・改変が可能 ・生成モデルの著作権はMidjourney社に帰属
・無料プランユーザーの生成物は非商用限定
Stable Diffusion 商用利用可 ・生成画像の商用利用・再配布・改変が自由
・自社ホスティング可
改変が自由
・自社ホスティング可 ・モデルのライセンス(CreativeML Open RAIL-Mなど)適用
・学習チェックポイントやLoRA素材は別ライセンスに留意
Adobe Firefly 商用利用プラン:可 ・生成画像・テキスト素材の商用利用・再配布・改変が可能
・Fireflyモデル自体の再配布・再利用は禁止
・特定素材の除外事項あり
Runway Gen-2 有料プラン:可
無料プラン:不可
・生成動画/画像の商用利用・再配布・改変が可能 生成モデルの著作権はRunway社に帰属
Grok 有料:可
無料:不可
・生成テキストの商用利用・再配布・改変が可能(契約プランに準拠) 布・改変が可能(契約プランに準拠) ・Grokモデル自体の著作権はxAIが保有
・ベータ期間は商用利用不可、正式版でのプラン詳細は公式サイト要確認

※内容を保証するものではありません。詳しくは各サービスの利用規約を御覧ください。

AI生成物の利用が違法にならないかをチェック

  • 法律相談に乗ってくれるAIによる非弁行為の可能性
  • AIによる生成が薬事法や景品表示法に抵触する可能性
  • 設計図面などの生成が無資格者の作成となる不動産業法違反の可能性

無資格者がAIに生成依頼をすること自体は違法ではなくても、それを利用することで違法になるケースがあります。例えば上記の2番目のように、AIに広告やWebサイト、キャッチコピーの作成などを作成させたが、その内容が法に触れる可能性があります。生成時に「違法にならないように」などという指示を加えても100%にはならず、必ず知識のある人間や有資格者が最終的に利用の可否を確認することが大切です。

プロンプト(指示)が違法になる可能性をチェック

  • 顧客名簿を読み込ませたことによる個人情報保護法違反の可能性
  • 営業気密情報を読み込ませたことによる営業機密漏えいの可能性
  • 著作物を学習させて類似のデザインを出力

AIにエクセルなどのファイルを読み込ませて整理させたり、そのデータを利用して詳細データや分析レポートを出力をお願いすることもあるかと思いますが、顧客の個人情報を学習させることは個人情報保護法に抵触する可能性があります。そういった機密情報を学習させる際は必ずローカルでのみ駆動するAIを利用するようにしましょう。

チェックリストと規則の策定

しかし、いくら気をつけても社員がどのような利用をしているか、どれがAIで作成されたものかを見抜くのは困難です。そのため、事前に「適法性チェックリスト」や「AI利用規定」と言った社内規定を策定し従業員に周知しておくことで、上記のようなリスクを減らせるだけでなく、会社としてはしっかりと対策をしたという証拠にもなります。

生成AI利用で違法にならないために

このように生成AIの利用は事業を加速させるために大変便利なシステムですが違法となる可能性も含んでいます。そうなった場合、会社の信頼を損ねるだけでなく、最悪の場合は著作権者からの訴訟などに発展する可能性もあります。そのため、AIをビジネス利用する場合に相談しておきたいのが法律のプロである弁護士。生成物を使った事業が法に触れないか、著作物に抵触しないかといった確認だけでなく、社内規定の制定なども手伝ってもらえます。

そんな弁護士の利用におすすめなのが弁護士保険です。月額数千円から利用することができ、上記のようなAI関係のみならずあらゆる法的トラブルから事業を守ってくれます。

弁護士保険に入るメリット

1.トラブルに発展する前に予防できる

弁護士保険に加入すると、前述でも消化した弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルに発展する前の抑止力となります。

2.弁護士への電話相談が無料で出来る

弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。

3.弁護士費用・裁判費用が補償される

それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。

他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。

 

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