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最安値・日本一は禁止?広告出稿時に気をつけたい景品表示法の注意点と違反事例

2025年12月21日 2025年12月21日

インターネット・SNS 企業法務・法律
最安値・日本一は禁止?広告出稿時に気をつけたい景品表示法の注意点と違反事例

企業が商品やサービスを広めるために欠かせない「広告出稿」。今ではGoogleを始め誰でも手軽にネット広告を出稿することができるようになりました。しかし、その広告表現が問題となり、事業の信頼を損なうリスクになることもあります。特に、消費者を誤解させる広告表現や過剰な景品提供は、消費者庁が定める「景品表示法」によって厳しく規制されています。

本記事では、景品表示法の基本から、広告出稿時に特に注意すべきポイント、そして違反を避けるための実践的なチェックリストまで徹底解説します。企業が広告を通じて信頼を築き、法律違反のリスクを回避するための知識を身につけましょう。

景品表示法とは?

景品表示法の基本的な定義

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、事業者が消費者に向けて商品やサービスを提供する際、その表示内容や景品の提供が消費者を誤解させないように規制する法律です。ここで注意したいのは「景品表示」というのはプレゼントのことではなく広告や商品パッケージを指します。この法律は、特に以下の2点を防止するために制定されています。

1.不当表示の防止

事業者が自社商品やサービスを宣伝する際、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」など、実際よりも優れていると誤解させる表現を規制します。例えば「日本一効果がある!」「◯◯が必ず治る!」など、実際にそんな効果がないのにコピーに使うと違法となる可能性があります。

2.不当景品類の防止

景品として提供される商品の価値や量が過剰である場合、消費者の正常な取引判断を妨げる恐れがあるため、これを規制します。例えばプレゼントキャンペーンで1億円プレゼントなどは条件をクリアしていない場合は過剰とみなされる可能性が高いです。

誰に適用される法律か?

個人・法人問わず、商品や広告を取り扱う事業者に適用される法律となっており、広告を直接出稿する事業者だけでなく、広告作成や運用に関わる代理店・業者も対象となり、広告表現が不適切である場合には連帯責任を問われる可能性があります。

法律の目的とその意義

景品表示法の最大の目的は、消費者の利益を守ることです。具体的には、以下の3つの目的が挙げられます。

1.不当表示の防止

広告や景品が虚偽や誇張である場合、消費者が誤解し無駄な支出をしてしまうリスクを回避するためです。

2.公正な競争の維持

一部の企業が過度な景品を提供し、他社が市場競争で不利益を被ることを防ぎます。

3.信頼性の向上

企業が正確かつ適正な広告を行うことで、ブランド価値を守り、消費者からの信頼を得ることにつながります。

違反するとどうなる?

景品表示法に違反すると、消費者庁や公正取引委員会から厳しい制裁を受けることがあります。具体的には、以下のような措置が取られます。

措置命令 不当表示が認められた場合、企業に対し違反行為の停止や是正措置の実施を命令します。
課徴金納付命令 誤認表示による売上額に応じて最大3%の課徴金が科されます。
行政指導や注意喚起 初犯や軽微な違反の場合には、指導や注意で済むケースもありますが、繰り返し違反すれば厳罰化されます。
信用失墜 違反が公表されると、企業イメージの悪化、売上減少、ブランド価値の低下につながります。

 

TIPS 法改正による確約手続きの導入
2024年に法改正され確約手続きが導入されました。それまでは、景品表示法違反があった場合は意図せずに表示してしまった場合などでも処分の対象になっていましたが、法改正後は対象の違反に通知が入ったあとに是正に必要な措置に関する計画(是正措置計画)を作成し申請し認められることで措置命令や課徴金納付金命令を受けないことが確約されるようになりました。

不当表示規制とは

わかりやすく言うと事実に反する虚偽の表現の禁止です。景品表示法の中核をなす「不当表示規制」は、消費者に誤解を与える広告表現を防ぐための規制です。事業者は広告やパッケージでの表現において、商品やサービスの品質、価格、内容を実際以上に優れているように示してはなりません。以下では、代表的な3つの不当表示について解説します。

優良誤認表示の禁止

  • 「100%天然成分」と表示しながら、実際は科学成分が含まれていた。
  • 「最新技術搭載」と宣伝しながら、実際は旧型技術を使用していた。
  • 「他社の10倍濃度!」と宣伝しながら、実際は3倍程度しか配合されていなかった。

商品やサービスの品質・性能について、実際よりも優れているように誤解させる表現、または事実に反して他社製品と比較して著しく自社商品が優良であるように見せる表現を禁止しています。

有利誤認表示の禁止

  • 「本日限り限定特価」と広告しながら、実際は常時同価格で販売していた。
  • 「〇〇%オフ」と表示しつつ、もともとの価格を上げた後に割引を適用していた。
  • 「1年間無料アフターサービス」と宣伝しながら、実際は電話対応が無料なだけで修理代がかかった。

消費者に「これはお得だ!」と思わせて購入・契約を促しつつ、事実は異なるような表現を禁止しています。

ステマ・誇大広告・おとり広告の禁止

広告であることを明示せず、消費者を誤解させるための宣伝行為です。特に以下の3つに分類されます

ステルスマーケティング インフルエンサーなどが広告であることを明示せずに商品を推薦する投稿を行うことで、依頼した事業者が罰せられる可能性があります。
誇大広告 実際には確認されていない効果を過剰に表現することで、例えば「一週間で-20kg!飲むだけで痩せる!」というった表現を指します。
おとり広告 実際には販売しない商品を目玉商品として広告し、他の商品を販売する行為です。よくあるのが不動産サイトなどで実際にはない物件を掲載して来店や問い合わせを促し違う物件を紹介するなどがこれに当たります。

 

TIPS ステマの条件とその回避方法は?
ここで誤解されないように説明するとインフルエンサーを使うこと自体は違法ではないということです。ステルスマーケティングとは企業が依頼したにもかかわらず、あたかも企業が関係なくインフルエンサー個人が推薦しているように宣伝する行為を指すため「PR」「AD」「この投稿は広告です」と、しっかりと企業から依頼されて宣伝されていることを示唆していればステマにはなりません。

景品規制とは

景品表示法のもう一つの柱が「景品規制」です。これは企業が消費者に提供する「景品」の価値や内容を制限することで、公正な競争を維持し、消費者を保護することを目的としています。企業が過度に高額な景品を提供することによって、消費者の判断が歪められることを防ぐための規制です。

景品規制の種類

規制の種類 適用対象 上限額 総額
一般懸賞 くじ引き・抽選式の景品 取引価格1000円未満は20倍
取引価格1000円以上は10万円
懸賞に係る売上予定総額の2%
共同懸賞 共同で実施する景品提供 取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%
総付景品(提供品) 商品購入者全員への景品 取引価格の20%
取引価格1000円未満は200円

景品規制は上記のように、種類や取引価格によって上限額が異なっています。ただし、雑誌や医薬品など特定の業種の検証では条件が異なる場合がございます。詳しくは以下のページを参照してください。

広告出稿時に注意すべき景品表示法のポイント

広告出稿時、企業は景品表示法に違反しないよう、表現やキャンペーンの内容を慎重に確認する必要があります。ここでは、広告を出稿する際に特に注意すべきポイントを具体的に解説します。

コピーやパッケージの表現に関する注意点と対策

広告のキャッチコピーや商品パッケージは消費者の注目を引く重要な要素ですが、以下の表現は景品表示法違反となる可能性があります。

危険な表現例 解説
「日本一!」「世界最高!」 「最も優れている」という表現は優良誤認や誇大広告に抵触しやすい。
「飲むだけで痩せられる!」 その商品の性能だけで効果が出るような表現
「塗るだけでシミが完全に消える!」 その商品を使うことで「絶対に」「確実に」その効果が期待できる表現
パッケージに果物の写真 実際に果汁やその果物を使ってないのにそれをイメージさせるようなパッケージ

エビデンスを用意する

他社より優れていることや効果を謳う場合は科学的根拠や証拠、実際のデータなどその根拠となるエビデンスを示す必要があります。逆にそれさえ示すことができれば違反ではなくなります。

注釈を記載する

よくあるのが「※効果には個人差があります」「※商品画像はイメージです」といった注釈を見かけることがあると思いますが、こういった注釈で消費者が誤解しないようにしておくことで違反となる可能性は低くなります。ただし、過度な表現や注釈が小さすぎるなどの場合は記載しても違反の可能性があるので気をつけましょう。

TIPS 果物の写真ってNGなの?
パッケージや広告に果物の写真の使用可否は厳密に定められており、例えば果物の断面や果汁のしずくを使ったデザインは果汁100%の製品以外使用してはいけないことになっています。また断面じゃなくても果物の写真やリアルなイラストを使用する場合は果汁5%以上という条件があります。他にも「ピュア」や「生」「生搾り」などといった文字の表現も景品表示法や食品表示法、薬機法に触れる可能性がありますので注意しましょう。

価格表示や割引表示に関する注意点と対策

価格に関する表現は、消費者の購買判断に大きな影響を与えるため、以下の点に注意が必要です。

危険な表現例 解説
「地域最安値!」 「最も優れている」という表現は優良誤認や誇大広告に抵触しやすい。
「期間限定特価!」「特別キャンペーン」 実際は常時価格にも関わらず安くなってるように見せるのは違反。
「00%OFF」「00円割引」 元価格を引き上げることで、安くなっているように見せるのは違反

エビデンスを用意する

実際に地域最安値であることを示すために注釈として「◯◯市内の10店舗を調査した結果(0月0日調べ)」と言った根拠を示すことで違反する可能性は低くなりますが「最」という言葉は危険なので使わないほうが無難です。特に地域じゃなく「業界」「日本」と範囲が広くなればなるほど、その根拠の正当性を示しづらくなります。

広告の期日を明確にする

期間限定などを謳う場合は割引価格が適用される期日を明確化し広告に記載する。また、期日を過ぎた場合は速やかに広告の掲載を取りやめるようにしましょう。

基準となる価格を明確にする

「当店通常価格」や「メーカー希望小売価格」など基準となる価格を明確にし記載しましょう。この通常価格は最近相当期間にわたって販売されていた価格とする必要があります。

TIPS 最近相当期間の基準は8週間ルール
「最近相当期間にわたって販売されていた価格」というのは「セール開始期間から遡って8週間(56日間)のうち4週間(28日間)以上の期間販売されていた価格」が基準となり8週間ルールと呼ばれています。ただし販売開始から8週間未満の場合は、販売期間の過半以上通常価格での販売実績が必要となります。

他者(インフルエンサーなど)に宣伝を依頼する際の注意点と対策

2023年にステマが正式に景品表示法の規制対象として制定されました。その基準が「事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」となっています。要約すると以下の2要件を満たした場合ステマの対象となります。

商品やサービスを提供する事業者による表示であること

これは事業者が依頼して第三者が宣伝しても対象となります。これはインフルエンサーという有名無名に関わらず、ブログやSNSなどあらゆる投稿が対象になります。ただし、インフルエンサーが一切の依頼を受けたわけでなく本当に個人的に「この商品は素晴らしい!」と投稿するのは問題ありません。ただし事業者というのは社員なども含まれるため、社員がその立場を隠して商品を褒めたり他社を貶めるような投稿をした場合は規制対象となる可能性があります。

事業者による表示であることを一般消費者が判別することが困難であること

これは「広告」、すなわち依頼を受けて投稿されたものだということが明確にわかるようにしなければなりません。例えば大量のハッシュタグの中に「#AD」という形で紛れ込ませている場合や読み取れないくらい小さいな文字で「これは広告です」と表示していても、判別が困難と判断される場合があります。そのため、他社に広告・宣伝を依頼する場合はしっかりと「PR」「AD」「広告」という文字を明記してもらうように依頼しましょう。

景品表示法に基づく法的措置の事例

以下の事例はすべて消費者庁による景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置件数の概要の公表からの引用・抜粋となります。

ダイエットサプリの不当表示

株式会社ダイエットプレミアムは、「酵素づくしのべっぴん炭クレンズ」と称する食品(以下「本件商品」という。)を一般消費者に販売するに当たり、

①複数のアフィリエイトサイトにおいて、「テレビでの放送を禁止されてた 『強力脂肪溶解術』を使ってみたら… -12kg達成する人続出で大炎上」等と表示することにより、あたかも、本件商品を摂取することで、本件商品に含まれる成分の作用により、誰でも食事制限や運動をすることなく、短期間で容易に顕著な腹部の痩身効果を得られるかのように示す表示をしていた。東京都知事が、景品表示法の規定に基づき、同社に対し、期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は当該期間内に資料を提出しなかった。

②フィリエイトサイトにおいて、「炭クレンズはアメリカのダイエット部門で第1位にも選ばれています。」等と表示することにより、あたかも、本件商品について、短期間で痩せる必要のあるセレブから支持され、米国のダイエット部門で人気第1位に選ばれたかのように示す表示をしていた。実際には、本件商品が短期間で痩せる必要のあるセレブから支持され、米国のダイエット部門で人気第1位に選ばれたという事実はなかった。

③仲介事業者を経由し、複数のインフルエンサー(以下「第三者」という。)に対し、対価を提供することを条件に、本件商品についてInstagramに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示に関し、同社が依頼した投稿であることを明らかにせずに抜粋することにより、自社販売ウェブサイトにおいて、「Instagramでも 大人気!」と記載して、本件商品のパッケージを手に持つ等した人物6名の画像等を表示していた。

当該表示は、①事業者が自己の供給する本件商品の取引について行う表示(以下「事業者の表示」という。)と認められるものであり、②表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められず、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。

マスク販売価格の不当表示による課徴処分

株式会社夢グループは、「立体マスク30枚セット」と称する商品(以下「本件商品」という。)を一般消費者に販売するに当たり、令和2年3月13日から同年4月26日までの間、全国の各地域の新聞紙面広告において、「立体マスク30枚セット3,600円(税抜)」及び「本日の広告の有効期限5日間」と表示することにより、あたかも、当該広告掲載日から5日間に限り、3,600円(税別)で、他に負担すべき費用はなく、本件商品を購入できるかのように示す表示をしていた。

実際には、本件商品を1セット購入する場合には、3,600円(税別)の他に送料や手数料を負担する必要があるものであり、当該広告掲載日から5日間を経過した後も当該条件で本件商品を購入することができるものであった。

課徴金額:6589万円

ウイルス除菌商品の根拠が認められず課徴処分

株式会社東亜産業は、「ウイルスシャットアウト」と称する商品(以下「本件商品」という。) を一般消費者に販売するに当たり、

① 令和2年2月26日に、自社ウェブサイトにおいて、本件商品及びその周囲に浮遊するウ イルスや菌のイメージの画像並びに本件商品の容器包装の画像と共に、「緊急ウイルス対 策!!」、「流行性ウィルスからあなたを守ります!」、「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が 周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」、「この時期・この季節に必携!ウイルスの気に なる場所でご使用ください。」及び「首にかけるだけで空間のウイルスを除去!」等と表示す ることにより ② 令和2年2月27日に、「楽天市場」と称するウェブサイトに開設した自社ウェブサイトに おいて、本件商品から成分が出ているイメージ画像及び本件商品を首にかけた人物の写真と 共に、「ウイルス対策 塩素成分で空間の除菌」、「この時期・この季節に必携」及び「幅広く・ 様々な環境に最適! 学校 オフィス 病院 電車」等と表示することにより あたかも、本件商品を身につければ、身の回りの空間におけるウイルスや菌を除去又は除菌す る効果が得られるかのように示す表示をしていた。 消費者庁が、同社に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料 の提出を求めたところ、同社は、期間内に表示に係る裏付けとする資料を提出したが、当該資 料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。 課徴金額:1651万円

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