セクハラはどこから? 従業員に周知させたいセクシャルハラスメントの定義と防止策
2025年03月12日 2025年03月12日

「軽い冗談のつもりだった」「悪意はなかった」——こうした言い訳が通用しない時代が到来しています。
2024年、フジテレビのセクハラ問題 が世間を大きく騒がせました。社内でのハラスメントが明るみに出たことで、企業イメージの失墜や関係者の処分、スポンサーへの影響など、多方面にわたる打撃を受けました。テレビ局という公共性の高い企業だけでなく、あらゆる業界において、「職場におけるセクハラの基準」 が厳しく問われる時代になっています。
では、どこからがセクハラに該当するのか? 「この程度なら大丈夫」と思っていた行為が、法的リスクを引き起こす可能性 があります。企業が適切な対応を怠った場合、使用者責任を問われる可能性もあり、被害者が訴訟を起こせば、会社が法的責任を負うリスクも考えられます。
本記事では、セクシャルハラスメントの定義と基準、そして企業が講じるべき防止策 について詳しく解説します。企業の信頼を守り、従業員が安心して働ける環境を整えるために、今すぐにできる取り組みとは何か? 具体的な対策を考えていきましょう。
セクハラとは
セクハラとはセクシャルハラスメントの略語で、セクシャル(性的な)ハラスメント(嫌がらせ)という意味を持ちます。本記事では職場におけるセクハラについて解説していきます。
「職場におけるセクハラ」の要件・定義
「職場」において行われること
ここで言う「職場」とは労働者が業務を遂行する場所を指します。そのため「会社」ではありません。通常の就労先以外でも「取引先」「出張先」「業務による移動中」など業務中であれば職場と定義されます。ただし「飲み会」や「社員旅行」などは実務業務の延長線上と考えられる場合は職場に該当しますが、職務との関連性、参加者、参加への経緯、参加が任意か強制かなどを考慮して判断されます。
「労働者」の意に反した「性的」な言動であること
「労働者」とは事業主が雇用する労働者のすべてを指し、正社員のみならず契約、派遣、アルバイトなどすべての労働者が含まれます。「性的」な発言というのは客観的に性的な意味を含む発言や行動を指します。
これらの要件を満たし、性的な言動によって職場環境を害する行為をセクハラと定義されており、男女雇用機会均等法11条1項では以下のように定められています。
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第11条
1 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。2~5 (略)
※引用元 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
セクハラのタイプと判断基準
セクハラでは大きく分けて2つのタイプに分類されます。
対価型セクハラ | 労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること。 |
---|---|
環境型セクハラ | 労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。 |
では具体的にどのような言動が「性的な言動」にあたるのでしょうか? 以下で解説していきます。
容姿に対する言及
- 最近痩せたね
- 今日のメイク決まってるね
- ◯◯さんって昔モテたでしょ?
一見するとただの褒め言葉でしかありませんが、関係性によって相手が不快に思った場合はセクハラに該当する可能性があります。
性別を用いた言及
- 女の子(男)なのにそんなことできるんだ
- ◯◯は女性がしたほうがいい
- 女子だから大変でしょ
性別を用いて言及することもセクハラと捉えられる可能性があります。
デリケートな話題
- ◯◯さんって恋人作らないの?
- 子どもはいつ作るの?
- 出産って大変だよね
恋人・結婚・妊娠・出産・生理など、デリケートな話題は相手が不快になりやすいため、よほどの関係性でない限りは言及することを控えましょう。
性指向に関する発言
- どんな男性(女性)がタイプなの?
- ゲイって気持ち悪いと思わない?
異性愛者と決めつけての発言は受け手が同性愛者を隠しているなどの場合は苦痛に感じてしまう場合があります。
性的な発言
- ◯◯さんって胸大きいよね
- 最近いつした?
- こういう行為好きそうだよね
性行為や性的な発言は冗談でも高確率でアウトです。会社の飲み会などでお酒が入ったからといって冗談で済まされることもありません。友人同士であれば済まされるかもしれませんが上司と部下、同僚など職場の関係性を考慮しましょう。
間接的な行動
- 目に見えるところでヌード写真を閲覧していた
- 性風俗店の話を周辺に聞こえるように話していた
- 男性社員同士が自慰グッズをプレゼントしていたのを目撃した
上記のように直接的な言動ではなくても、目に見える、聞こえる範囲で性を連想させる言動はセクハラに該当する可能性があります。
身体的接触
例えば、成績がよかったから頭を撫でるなど身体的な接触はいかなる場合でもセクハラに該当する可能性があります。安全上の理由で身体を支える必要がある場合などは、しっかりと接触してもいいか、どういった理由で接触する必要があるのか確認を取ってからにしましょう。
TIPS セクハラは女性だけの問題ではない |
---|
セクハラといえば女性だけが対象になるイメージがありますが、もちろん男性も対象になります。「男なんだから〜」「男なのに〜」「男のくせに〜」と性別を盾にした発言により苦痛を感じた場合や、女性から男性への身体的接触も相手が不快に思えばセクハラに該当します。 |
セクハラの判断基準は?
- 受け手が不快に感じたか
- 職場環境に悪影響を及ぼしたか
- 社会的に不適切な言動であるか
前項では主なセクハラのタイプを解説しましたが、すべてが必ずしもセクハラに該当するわけではありません。相手との関係性次第では冗談で済まされる可能性ももちろんありますが、それを判断するのは言動をした本人ではなく、あくまでも受け手側ですので「これくらいなら大丈夫でしょ」と安易に考えるのはやめましょう。
ただし、すべてが受け手側の主観的意識で判断されるわけではなく、社会的・平均的意識によって最終的に判断されます。例えば「安全装置を装着するためにやむを得ず身体的接触があった」場合などは、本人が不快と思っても業務上必要な接触だったと判断される可能性が高いです。
社内でセクハラが発生した時のリスク
企業は労働者に対して快適な職場環境を提供し、整える「職場環境配慮義務(安全配慮義務)」を負っています。セクハラが発生した際、適切な対応をしなかった場合、企業も法的責任を問われることになります。
労働契約法 第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
この第五条による「生命、身体等の安全を確保」とは、身体だけではなく心の健康も含まれています。そのため、セクハラが原因で鬱・PTSDになったなどの場合は、この安全配慮義務違反に当たります。他にも以下のような法令違反に問われる可能性があります。
法令違反 | セクハラをした当人は不法行為、使用者は使用者責任・債務不履行責任などが問われる可能性があります。悪質な場合は強制わいせつ罪などの刑事責任を問われる可能性もあります。 |
---|---|
損害賠償責任 | セクハラにより心身に支障をきたした場合などは、加害者だけでなく、それらを防止することを怠った会社の責任を問われ、被害者に訴訟される可能性があります。 |
企業イメージの失墜 | 社内でのセクハラの横行がSNSなどで拡散されることにより、企業のブランド価値を大きく損なう恐れがあります。 |
職場環境の悪化 | セクハラが横行・放置されることにより、社員のモチベーションの低下やメンタル面の悪化により、離職・求職の増加や業務成績の低下に繋がる可能性があります。 |
優秀な人材の流出 | 上記の離職もそうですが、優秀な人材が加害者または被害者となり離職した場合、業績に大きな影響を及ぼします。また、セクハラが横行していることが知られることで求職も難しくなるでしょう。 |
セクハラを予防するための対策
このようにセクハラは今では会社の環境や業績に大きな悪影響を及ぼす可能性があるため、企業においてセクハラを予防することは、法的リスクを回避し、健全な職場環境を維持するために不可欠です。
1.ハラスメントポリシーの策定
どういった言動や行動がセクハラにあたるのか、セクハラの定義と具体例を明確に示します。そのうえで、それらを行ったら会社としてどのような処分を下すのか明確に定めた文書を社員に配る、もしくは就業規則や契約書に盛り込むといいでしょう。
2.従業員の教育と意識改革
上記の文書だけでなく、定期的な「ハラスメント研修」を実施し、本記事で触れているようなセクハラの定義や法律、具体的にどのような行動がNGなのかを研修します。全社員が難しい場合は管理職だけでも実施し、管理責任者がセクハラを発見した時に適切な対応を取れるようにするようにしましょう。
3.相談窓口の設置
被害者が安心して相談できる環境が整っていなければ、セクハラ問題は表面化しません。ただし、相談すべき上司がセクハラの加害者になっているケースや、職場の環境次第では相談相手がいないケースもあるため、専門の相談窓口や、匿名通報システム、弁護士などの外部相談機関を用意しておくことで、被害者が気兼ねなく相談できる環境作りをしましょう。
4.セクハラが発生した際の対応フローの策定
- 被害者からのヒアリング
- 第三者による調査
- 加害者へのヒアリングと処分
- 被害者へのアフターケア
- 再発防止策の策定と周知
セクハラが発生した場合、企業は迅速かつ適切に対応しなければなりません。その際にただ加害者にだけ事実確認をして口頭注意だけにするなど軽率な対応は絶対にしてはいけません。あくまでも被害者の目線に立ち、加害者の解雇や、被害者の配置転換など被害者が安心して就業し続けられる結論に導かなければいけません。
月額数千円から気軽に弁護士を使えるサービスがあります
このようにセクハラは「個人の問題」ではなく「企業全体の課題」です。ただし、いくら予防策を取っていてもセクハラが発生し会社が訴えられる可能性はゼロにはなりません。そうなった際に、すぐにでも弁護士に相談する必要があります。しかし、いざ弁護士を使うとなると「誰に相談したらいいかわからない」「費用が高そう」「裁判って難しそう」などいろいろな不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか? そこでおすすめなのが弁護士保険になります。月額数千円で手軽に弁護士に相談できるようになるうえに、契約書のリーガルチェックや万が一訴訟に発展したい際の弁護士費用が補償されます。
弁護士保険に入るメリット
1.トラブルに発展する前に予防できる
弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルに発展する前の抑止力となります。
2.弁護士への電話相談が無料で出来る
弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
3.弁護士費用・裁判費用が補償される
それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
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