会社・従業員のSNS投稿が炎上！ 炎上後の対応とその予防策

SNSが普及した現代、企業のブランドイメージは、一瞬の投稿によって大きく揺らぎます。公式アカウントの運用ミスはもちろんのこと、従業員の何気ない個人投稿が炎上し、就業先が特定され、企業の信用を失墜させるケースも後を絶ちません。例えば、飲食店のアルバイトがふざけ半分で投稿した不衛生な動画が拡散し、店舗が閉店に追い込まれた事例。広報担当者が軽率に投稿した一言が差別発言と捉えられ、企業の株価が暴落したケース。こうした炎上は決して他人事ではなく、どの企業にも起こり得る問題です。

「SNSの炎上は一過性のもの」と軽視する企業もありますが、実際には、炎上による信用の低下は長期間にわたって企業経営に影響を与えます。顧客の信頼を損ない、取引先との関係悪化を招き、場合によっては訴訟や法的責任の問題にも発展、最悪の場合破産することがあります。

では、もし自社の従業員がSNSで炎上を引き起こした場合、どのように対処すればよいのでしょうか？ そして、そもそも炎上を未然に防ぐためには、どのような仕組みを整えておくべきなのでしょうか？ 本記事では、従業員のSNS投稿が炎上した際の適切な対応方法と、企業が取るべき予防策について、具体的な事例とともに解説します。あなたの会社のブランドを守るために、ぜひ最後までお読みください。

企業におけるSNS炎上の実態

SNS炎上の5ステップ

1. 問題投稿の発信
2. 問題投稿の拡散
3. 批判・炎上発生
4. 企業・関係者の対応
5. 収束or長期化

上記は、SNS炎上の典型的な流れを示しています。問題のある投稿が行われた瞬間から、拡散、批判、企業対応、収束または長期化までのプロセスが明確になります。この流れを理解し、迅速な対応をとることで、企業のブランド価値を守り、炎上によるダメージを最小限に抑えることができます。

SNSにおける企業の炎上事例

近年、従業員のSNS投稿が原因で企業が大きな損害を被った事例がいくつも報告されています。以下に、特に有名で被害額の大きいものや、個人の投稿が引き金となった炎上事例を紹介します。

回転寿司チェーン店の不適切動画投稿

ある回転寿司チェーン店の従業員が、ゴミ箱から取り出した魚を調理する様子を撮影し、SNSに投稿しました。この動画は瞬く間に拡散され、企業の信用は大きく損なわれました。抗議の電話は1000件を超え、報道によれば、この炎上により約30億円の損害が生じたとされています。また、炎上の元となって少年3人は書類送検されました。

ホテル従業員による顧客情報の漏洩

あるホテルの従業員が、著名なアイドルが宿泊していることをSNSで公開し、「アイドルの○○がうちのホテルにいる」と投稿。この情報は瞬時に拡散され、ホテルの守秘義務違反として大きな批判を受けた結果、従業員は解雇され、ホテル側は公式に謝罪する事態となりました。

メーカー従業員による未発表製品の情報漏洩

ある自動車部品メーカーの従業員が、取引先カーメーカーの未発表製品を撮影し、自身のSNSに投稿しました。この行為は守秘義務違反として批判を受け部品メーカーが批判されたのみならず、カーメーカー側の情報管理体制にも疑問が投げかけられました。投稿者は、不正競争防止法違反（営業秘密侵害）と偽計業務妨害の疑いで書類送検されています。

蕎麦店バイトテロ事件

2013年8月、個人経営の蕎麦店で、アルバイトの従業員が食器洗浄機に足を入れたり、流し台に足をかけるなど不適切な写真をSNSに投稿しました。この投稿はまたたくまに拡散され、営業できないほどの電話が殺到し、店舗は休業を余儀なくされ、その後、約2か月後に破産宣告を受ける事態に至りました。

タイツ企画で女性のイラストが炎上

あるストッキング・タイツメーカーがSNSでキャンペーンを展開し、自社製品の着用をイメージした女性のイラストを投稿したところ「女性を性的消費している」と炎上。結果、メーカーが謝罪する自体となった。

炎上する可能性のある投稿とは – タイプ別の特徴

SNS上での投稿は、一見問題がなさそうに見えても、意図しない形で炎上することがあります。特に、以下のようなタイプの投稿は炎上リスクが高く、企業や従業員は十分に注意する必要があります。

差別・偏見・侮辱的・攻撃的な発言

性別、国籍、人種、宗教、障がい、性的指向、社会的立場などに関する差別的な発言や、特定の個人に対して批判的な投稿は個人アカウントに多いタイプの投稿です。それらが炎上することで就業先の企業が特定され「こんな人間を雇ってるとはどういうことだ」という形で、個人の炎上がそのまま企業に飛び火するケースも多々見られます。

内部情報・機密情報の漏洩

新製品やサービスなどの公開前の情報などのリークが駄目だというのはもちろんですが、「うちの店に◯◯が来た！」などという有名人のプライベートを個人アカウントなどで投稿し守秘義務違反に触れていなくても倫理的モラルを理由に炎上するケースが多々見られます。

不衛生・迷惑行為（バイトテロ）

食材や商品を粗末に扱ったり、店内の機材などを使って悪ふざけをするタイプの炎上でアルバイトに多いことから「バイトテロ」と呼ばれることもあります。このタイプは特に飲食店に多く見られ、食材や調理機材などで悪ふざけをしている動画や写真を投稿し、不衛生を理由に炎上します。

企業アカウントの運用ミス

企業の公式アカウントで誤った情報や公開前情報を発信するだけでなく、炎上している投稿をリポストしたりイイねをすることで「この意見に同調している」と捉えられ炎上するケースがあります。また、特に気をつけたいのが個人のスマホなどを使って投稿している場合、アカウントが混同し個人アカウントと間違えて企業アカウントで投稿してしまうケースも多く見られます。

炎上の話題に触れ飛び火

すでに炎上している話題を引用して意見を述べた際に飛び火するケース。場合によっては真っ当な意見として企業イメージのアップに繋がる可能性も秘めていますが、炎上するかどうかの判断というのはとても難しく、賛同・否定問わずに炎上に発展するケースも多いので、できるだけ話題に触れないようにするのがベターでしょう。

炎上による企業への被害とリスク

SNSでの炎上は、一時的な騒動にとどまらず、企業に長期的なダメージをもたらす可能性があります。特に、企業の信頼性やブランド価値を根幹から揺るがすリスクがあるため、経営層はその深刻さを認識し、対策を講じる必要があります。ここでは、炎上による具体的な企業への被害とリスクについて詳しく解説します。

ブランド価値（イメージ）の低下

炎上によって最も影響を受けるのが、企業のブランド価値や店の印象です。特定の投稿が炎上すると、SNS上だけでなく、ニュースサイトやまとめサイトでも取り上げられ、多くの人の目に触れることになります。これにより、長年かけて築き上げたブランドの信用が一瞬で崩れ去ることも。一度失った信用を取り戻すのは容易ではなく、長期的なブランド戦略の見直しを迫られることになりかねません。

売上の減少

売上の減少も避けられないリスクの一つです。炎上によって「この企業の商品は買いたくない」「あの店には行きたくない」という印象が広がると、消費者の購買意欲は大きく低下に繋がる上に、最悪SNS上での不買運動にまで発展します。上記のブランドイメージの低下と合わせて企業利益にを大きく損ね、最悪の場合は破産まで追い込まれる可能性があります。

クレームや問い合わせ対応

企業が炎上する直後は問い合わせが殺到することが多いです。炎上中鳴り止まない電話の対応に人員を割かなければならなくなります。。さらに重要な仕事の連絡や飲食店なら電話予約の可能性もあるため、電話番号を伏せるなどと言った対応もしづらく、業務に多大な影響をもたらします。

取引先・株主への悪影響

炎上の影響は取引先や株主にも及びます。企業の信用が低下すれば、取引先は「この会社と関わって大丈夫か？」と不安を抱くようになり、過去には、ある企業のSNS炎上を受けて、取引先が契約を見直し、取引を縮小・停止するというケースも。直近ではテレビ局へのCM差し止めが話題になりました。さらに、炎上が株価に影響を及ぼし、投資家の不安を煽ることも。企業の公式アカウントが炎上したことで株価が急落し、経営層が責任を問われる事態に発展した例も少なくありません。

採用活動・社内士気への影響

炎上によって企業の評判が下がると、新入社員などの採用活動に悪影響を及ぼし、優秀な人材が集まりにくくなります。特に若年層はSNSを重視する傾向があり、「炎上した企業で働きたくない」と考える求職者も少なくありません。また、既存の従業員にとっても、炎上は大きな精神的ストレスとなります。SNS上で「この会社の社員って大丈夫なの？」とされ、社内の士気が低下や離職率の上昇に繋がるリスクがあります。

法的リスク

SNS上の投稿が名誉毀損や誹謗中傷、個人情報漏洩に該当すれば、訴訟や行政処分の対象となることもあります。特に、従業員が機密情報を漏洩した場合、企業は個人情報保護法や不正競争防止法違反の責任を問われる可能性があり、過去には、ホテルの従業員が有名人の宿泊情報をSNSで公開し、訴訟に発展したケースがあり、企業としても厳しい対応を迫られました。

炎上をしてしまった際の対応とポイント

SNS炎上は、どんな企業でも起こり得る問題です。重要なのは、炎上を完全に防ぐことではなく、炎上が発生した際に適切な対応を取ること です。対応の仕方によっては、炎上を素早く沈静化させることができる一方で、対応を誤ると「二次炎上」や「長期化」に発展し、企業の信頼が回復困難になることもあります。本項では、炎上発生時の適切な対応について、5つのステップ に分けて解説します。

1. 迅速な状況把握

炎上が発生した際、まず最初に行うべきことは 「正確な状況把握」 です。誤った対応をしてしまうと、さらなる炎上を招く可能性があるため、焦らず、冷静に状況を整理しましょう。

• どの投稿が原因で炎上しているのか
• 批判の内容は何か（どのような理由で炎上しているのか）
• どの媒体で拡散されているか？（SNS・まとめサイト・ニュースサイトなど）
• 主要な批判者や影響力のあるユーザー（インフルエンサー、メディア）が関与しているか

上記の内容を把握することで、次の動き方が変わってきます。特にインフルエンサーが話題に触れたり、まとめサイトやニュースサイトで取り上げられることで、そのSNSをやってないユーザーの目にも止まることになり、炎上規模がどんどん大きくなります。

2. 公式声明の準備と発表

SNS炎上が起こった際に最も重要なのは、迅速に企業からの「公式声明」を発表することです。この対応次第で、炎上が収束するか、さらに拡大するかが決まります。この対応が遅れると「対応が遅い」とさらなる批判に繋がるため、状況の把握から公式声明・謝罪までの時間は1日以内に行うことがベストです。

誠実な謝罪を行う

• 言い訳をしない
• 余計な一言がないか気をつける
• 責任をあやふやにしない

もっとも大切なのは言い訳や責任逃れをせずに、炎上している事実を受け止め誠実な謝罪をすることです。ここで下手な言い訳などをしてしまうと、その言い訳や謝罪内容にさらに批判が集まり、火に油を注ぐことになります。

事実関係を整理し、正しい情報を伝える

ただし、火元となっているコメント（最初に批判を行ったユーザー）の意見が明確に事実と異なっているケースがあり、炎上が広がるにつれ曲解されて広がるケースがあります。そういった場合は、誤解を招いたことは素直に謝罪しつつ、ただの言い訳にならないように証拠を出しながら毅然とした態度で事実を伝えましょう。

3. 社内での対応・関係者への説明

説明もなく炎上している事実を後からしると社員・従業員は不安になります。まずは炎上の事実を従業員に共有し、社内の統制をとり、問い合わせ増加など今後起こりうる事態に対応できる体制を整えましょう。同時に、取引先や株主に対して、謝罪と事実関係、今後の対応について説明することで信頼を維持してもらえるように努めることが大切です。個人店や客商売などの場合、一部のユーザーが直接来店しクレームを入れたり、最悪の場合従業員に危険が及ぶ可能性もあるため、沈静化するまで閉店するなどといった対応が必要となる場合もあります。

4.被害者や関係者への直接対応

個人情報や機密情報の漏洩など、炎上の内容によっては、批判を受けた当事者や被害者に対する対応が必要です。適切な対応をしないと、さらなる炎上や法的問題に発展する可能性があります。被害者がいる場合はSNSの声明だけではなく、直接の謝罪や補償を検討しましょう。また、法的トラブルに発展する可能性がある場合は迅速に弁護士に相談しておくことで被害を最小限に抑えられる可能性があります。

5. 再発防止策の策定と公表

炎上が収束しても、それで終わりではありません。「同じ過ちを繰り返さない仕組み」を作ることが重要です。再発防止策をしっかりと策定し、必要に応じて社内外に発信することで、企業の信頼回復につながります。

次のセクションでは、この炎上を未然に防ぐための企業のSNS運用ルールと予防策について詳しく解説します。

6.法的トラブルへの対応

被害者がいる場合、訴訟される可能性もあります。逆に、従業員個人の投稿により会社が損害を受けた場合や、デマによって炎上した場合、原因となった個人に対し損害賠償請求をする必要が出てきます。炎上時は必ず弁護士に相談し、訴訟される可能性、訴訟しなければならない可能性などを予測し、備えておきましょう。

炎上の予防策 – SNSの運用ルール –

炎上を未然に防ぐためには、適切なSNS運用ルールを策定し、従業員や担当者への教育を徹底すること が不可欠です。

SNSのガイドラインを策定する

SNS運用の基本として、明確なガイドライン（運用ルール） を策定し、全従業員に共有することが重要です。ガイドラインが曖昧なままでは、個々の判断で投稿が行われ、思わぬ炎上リスクを招く可能性があります。

投稿内容のルール

差別・誹謗中傷・攻撃的な発言は行わない、政治的な発言は行わない、他社を貶める発言は行わないなど、投稿内容の禁止事項を明確にしておくことが大切です。

公式アカウントの管理ルール

公式アカウントを運用する際に、「誰が」「どの端末で」「いつ」行うかを明確にしておきましょう。

個人のスマホからも投稿できるとアカウントを間違えるリスクに繋がりますし、誰でも投稿できると問題の発言を誰がしたのか把握することができなくなります。特に重要なのは投稿前に必ず複数人で内容をチェックするようにすることで、ガイドラインを遵守することができるでしょう。

個人アカウントの利用ルール

従業員個人がプライベートで自分のアカウントを利用する際のルールも周知しておきましょう。

• 会社名や職場の情報を投稿しない
• 社内機密・未公開情報の投稿は禁止
• 会社の悪口を書かない
• 会社のイメージを損なうような投稿は避ける

上記のような内容をしっかりと周知し、できれば雇用時の契約書などに盛り込んでおくことができれば、炎上時の解雇事由などにもなります。ただし、あまりにも投稿を縛り付けるような内容だと、個人の権利の侵害になる可能性がありますので、良識の範囲内に留めるようにしましょう。この点に関してはどこまでであれば契約書に盛り込むことができるか弁護士に相談しておくことをおすすめします。

SNS研修を実施する

企業アカウントだけでなく、個人の投稿から会社の炎上に繋がることも多いため、全従業員を対象としたSNS・インターネットのリテラシーを高めることが炎上防止の鍵となります。

1.SNSの影響力とリスクを理解させる

SNSに普段触れていない層は「たかがSNS」とたかをくくっていることも多く、炎上した後も間違えた対応により最悪の事態を招くケースが多いため、SNSの炎上から対応によって、企業がどのような事態に陥ったのかを事例を交えて講習しましょう。

2.不適切投稿の危険性を伝える

どのような投稿が、どのような理由で炎上し、その結果どうなったのかを伝えましょう。特に当該従業員が解雇されただけに留まらず、損害賠償請求されたなど、個人に危機感を持ってもらえるような事例を交えつつ講習しましょう。

3.適切なSNSの活用方法を指導

ただし、危険性や禁止事項ばかりあげても萎縮してしまうだけで、SNSは活用することで企業に多大な恩恵を与えてくれるツールでもあります。ガイドラインを交えつつ、適切なSNSの利用方法を伝えましょう。

4.炎上の早期発見・対応の仕組みを作る

炎上は初期対応のスピードが命 です。炎上が拡大する前に 早期発見 し、迅速な対応を取ることで、大きなダメージを防ぐことができます。前項の炎上してしまった際の対応などを社内で共有し、炎上が発覚した際に、まず誰に連絡するのか、そこからどのように社内で共有し対応するのかといった明確なフローを整え、体制を整えておくことで被害を最小限にすることができます。

SNS炎上は、一見些細な問題に見えるかもしれないですが、その影響は計り知れません。企業の信頼低下はもちろん、売上減少、取引関係の悪化、採用難、法的責任の追及と、経営のあらゆる側面に悪影響を及ぼす危険をはらんでいます。炎上を防ぐためには、従業員への教育やSNSガイドラインの整備が不可欠であり、万が一炎上した場合には迅速かつ適切な対応が求められ、企業にとって、SNSリスク管理はもはや「避けられない経営課題」と言えるでしょう。

SNS炎上に備える弁護士保険

しかし、SNSの炎上はいくら予防措置をしたとしても、予想し得ない角度から炎上することもあり100%防ぐことはできません。炎上してしまったら損害賠償など法的トラブルに発展する可能性も高いため、すぐにでも弁護士に相談する必要があります。しかし、いざ弁護士を使うとなると「誰に相談したらいいかわからない」「費用が高そう」「裁判って難しそう」などいろいろな不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか？ そこでおすすめなのが弁護士保険になります。

弁護士保険に入るメリット

1.トラブルに発展する前に予防できる

弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることでトラブルに発展する前の抑止力となります。

2.弁護士への電話相談が無料で出来る

弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。

3.弁護士費用・裁判費用が補償される

それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。

他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。

bengoshihoken.jp

弁護士保険とは？｜企業向けお役立ち法務メディア｜弁護士保険の教科書Biz

🕒️