老人ホーム・デイケア・介護施設でよくある事故・トラブルとは?
2024年01月26日 2024年01月26日
介護事業は、利用者やその家族から訴訟を起こされてしまうリスクが高い仕事の一つです。老人ホームや大規模の介護施設はもちろんのこと、街中のデイサービスや訪問介護でも、訴訟リスクがあります。それらを防ぐにはどのような方法があるのでしょうか? 実際の判例を基に詳しく解説していきます。
目次
介護事業で訴訟を起こされるのはどのようなケースか?
老人ホームや介護施設の利用者やその家族が介護事業者を訴えようとする場合は、物損被害と身体被害の2つのパターンが考えられます。
利用者やその家族の所有物をヘルパーに壊された場合(物損被害)
例えば、訪問介護においてヘルパーが利用者の部屋の掃除をしている時に、利用者が宝物にしている高級なインテリアを落として壊してしまった場合です。壊した物が高価であれば当然、弁償となり訪問介護事業者側に損害賠償請求がなされてしまいます。しかし、こうした事案が裁判にまで発展してしまうことは稀で、多くの場合は示談などの形で解決できます。
利用者が介護サービス中に怪我を負った場合(身体被害)
介護事業で圧倒的に多いトラブルは利用者の転倒事故です。例えば、利用者が介護サービスを受けている間に転倒してしまい、大怪我を負ってしまった。その結果、寝たきりになったり、亡くなったりする場合です。老人ホームや大規模の介護施設はもちろんのこと、街中のデイサービスや訪問介護でも起こりうることです。このような場合は、示談で解決できず裁判に発展してしまうケースもあります。
介護事業者が訴訟された場合のリスク
利用者やその家族から訴訟された場合は、介護事業者はさまざまなリスクを背負うことになります。
1.訴訟のために費用と時間・労力がかかる
小規模のデイサービスや訪問介護事業者の場合、こうした訴訟に対しては、経営者自身が対処しなければならないケースも多く、裁判所に出向いたり、訴訟のために様々な準備に追われたりして、本業の介護事業が支障が生じてしまいます。損害賠償額によっては介護事業の廃業に追い込まれてしまう事態になりかねません。
2.風評被害が生じてしまう
裁判を起こされても、介護事業者側に責任がないのであれば損害賠償をする必要はありません。しかし、裁判を起こされたことにより、風評被害につながってしまうこともあります。介護サービスの利用者はほとんどが地域の住民です。地域において悪い噂が広がってしまうと経営面で大きな打撃を受けてしまいます。
介護事故が発生したら直ちに弁護士に相談すべき
利用者転倒事故などにより、利用者や家族から損害賠償請求を求められる事態になったとしても、裁判に発展しないようにすることが当面の目標と言えるでしょう。それには弁護士に交渉してもらい、裁判前の段階で和解できるようにするのがおすすめです。万が一訴訟されてしまった後もそのまま弁護士に弁護の依頼をするといいでしょう。
介護事故の発生から訴訟提起までの対処法
利用者側が介護事業者に、民事上の損害賠償訴訟を提起することを前提に、訴訟までの間、介護事業者側がどう対処すべきなのかを確認しましょう。
介護事業者に有利な証拠を整理する
利用者側は、介護事業者を訴えるに先立ち、介護事故に関する客観的な証拠の収集を行います。具体的には、介護記録や診療録、事故報告書、介護保険認定調査票等を取得し、利用者側にとって有利な証拠を集めようとします。改ざんの恐れを懸念して、裁判所を介して、証拠保全の手続きを行うこともあります
介護事業者側としても、訴えられた場合に備えて、介護事業者側に有利な証拠を集めておく必要があります。もちろん、証拠の改ざんは論外ですが、様々な資料を突き合わせれば、介護事業者側に有利な証拠もあります。
例えば、転倒事故の場合は、介護事業者側が利用者の転倒を予見できたかどうかがポイントになりますが、訪問介護計画書等に「転倒しやすい」と書かれていないのであれば、転倒を予見できなかったという証拠になります。
このように、どの資料のどの部分が有利な証拠になるのか、当該訴訟に事故において争点はどのになるのかなどは、専門家である弁護士に相談するのがベストです。
内容証明郵便が送られてきた場合の対処法
利用者側の弁護士は、介護事業者を訴えるに先立ち、損害賠償請求の内容をまとめた内容証明郵便を送付してくることがあります。「法的措置を講じます」「訴えを提起する」と言った文言があることが多く、介護事業者側は慌ててしまうかもしれませんが、利用者側も、本音は裁判よりも示談で解決したいと思っていることが多いものです。まず、内容証明郵便を確認したうえで、利用者側の要求が
- 妥当なものであるかどうか
- 要求に応じられる損害賠償額であるかどうか
上記の2点を確認します。この判断は、経営者だけで行うのではなく、弁護士に相談することが非常に大切です。裁判で争って請求額を減額させるべきか、示談によって妥協できる額まで減額してもらうかなど、さまざまな観点から、弁護士のアドバイスを受けてください。
裁判を提起された場合
利用者側から民事訴訟を提起された場合は、介護事業者側も応じなければなりません。裁判を無視した場合、利用者側の主張だけが認められて判決が下されてしまうためです。弁護士に委任していれば、裁判自体は弁護士に対応してもらえますが、当事者本人および証人の尋問手続きが行われる段階では、経営者や介護に当たった職員本人の出頭が求められます。
宣誓書を読まされて署名させられた上で発言しなければならないので、弁護士のレクチャーを受けて、話す内容を決めておくことが大切です。また、利用者側の弁護士から厳しい追及を受けることがありますが、この点についても、弁護士があらかじめ相手の質問内容を想定し、主張すべきことをまとめた問答集などを用意してくれることもありますので、しっかりと頭に入れておきましょう。
裁判に発展しやすい介護事故
介護事故のすべてが裁判になるわけではありませんが、介護事故のために死亡した、介護事故をきっかけに寝たきりになった等の重大な結果が生じてしまった場合は裁判になることが多いです。裁判に発展しやすい事例を紹介します。
介護サービス中の転倒事故
最も多いのが、介護サービスを提供している間に利用者が転倒してしまう事故です。例えば、次のような事故です。
- 介護施設内で利用者が転倒し頭を強打した結果、頭がい骨骨折、脳挫傷となり死亡してしまった。
- 介護施設内でベッドから車椅子へ移乗する途中で利用者が転落してしまい、外傷性くも膜下出血となり死亡してしまった。
- 訪問介護サービスで利用者を自宅から病院に送る際にヘルパーが手を離した隙に、利用者が転倒してしまい、大腿骨頸部骨折などの重傷を負ってしまった。
高齢者が転倒すると受身を取れないために、頭などの重要部分を強打してしまい、重傷を負いがちです。そのため、介護事業者側としては、利用者が転倒しないように気を付けるべき注意義務を負っています。介護事業者側が注意義務を怠ったと判断された場合は、多額の損害賠償義務を負うことになります。
死亡した場合は、死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費用、遺族固有の慰謝料など、いずれも数百万円単位の損害賠償を求められる可能性があります。重傷の場合でも、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料などで、やはり数百万円単位の損害賠償を求められます。
介護サービス中の誤嚥(ごえん)事故
高齢者の誤嚥事故は肺炎の原因になる他、窒息による死亡につながる危険もあります。例えば、餅を食べている時に喉を詰まらせてしまい、窒息状態となって死亡してしまう。死亡に至らなくても、低酸素脳症、意識障害となり、植物状態となってしまうこともあります。
介護事業者側としては、高齢者が餅を喉に詰まらせてしまうことは予見できるわけですから、餅を提供することを中止するか、餅を食べさせるにしても注意深く見守るといった注意義務があります。
これらの注意義務を怠っていた場合は、介護事業者側が損害賠償責任を負わされてしまいます。
介護事故が発生してしまった直後の対処・対応
介護事業者側がいくら注意していても、介護事故が発生してしまうこともあります。介護事故が起きることを前提に、発生した場合の対応策を日頃から検討しておくことが大切です。
直ちに応急措置などを講じる
介護事故が発生した場合は、直ちに医療機関へつなぎましょう。この時点で介護事業者側が必要な措置を講じない場合は、その点についても損害賠償責任を負うことになります。
介護事故が発生した状況について記録を残す
何をしていて介護事故が発生したのか文章や状況を撮影するなどして、正確に記録します。介護事業者側に有利な記録だけをまとめるのではなく、正確に記録することを心がけてください。
利用者や家族への報告と謝罪
介護事業者側に責任があると言えない状況だったとしても、状況を説明したうえで道義的な面からの謝罪を行いましょう。この時の対応が蔑ろだと、利用者や家族の印象が悪くなり、結果として裁判に発展しやすくなってしまいます。
弁護士に相談する
介護事故について、明らかに介護事業者側に責任がある事案は、直ちに弁護士に相談しましょう。弁護士から利用者や家族に連絡してもらい、示談などの話し合いでの解決を目指しましょう。
もしもの介護事故に備えて弁護士保険がおすすめ
介護事故をきっかけに訴訟に発展してしまうケースは少なくありません。介護事故は、老人ホームや大規模の介護施設だけでなく、街中のデイサービスや訪問介護でも起こりうることです。介護事業者としては、転倒事故が発生した場合は、直ちに弁護士に相談できる体制を整えておくことが大切です。しかし、弁護士に相談したことのない方からすると、弁護士探しや費用、相談の仕方など不安なことも多いと思います。そこで当サイトがオススメしているのが弁護士保険です。弁護士保険は月額数千円で弁護士への相談費用や、訴訟に発展した場合の弁護士費用などが補償されるため、気兼ねなく弁護士に相談できるようになります。
弁護士保険に入れば各種弁護士費用が補償される
1.トラブルに発展する前に予防できる
弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることで無断キャンセルの抑止力となります。
2.弁護士への電話相談が無料で出来る
弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。
3.弁護士費用・裁判費用が補償される
それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。
他にも多くのメリットがありますので詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
KEYWORDS
- #発信者情報開示請求
- #発信者情報開示命令
- #フリーランス新法
- #フリーランス
- #内容証明
- #臨床法務
- #戦力法務
- #債務不履行
- #威力業務妨害
- #内定
- #始期付解約権留保付労働契約
- #アルハラ
- #法律相談
- #慰謝料
- #知的財産権
- #窃盗罪
- #カスハラ
- #クレーム
- #私文書偽造罪
- #不法行為責任
- #問題社員
- #業務委託
- #時間外労働の上限規制
- #敷金返還請求
- #器物損壊罪
- #電気通信事業者法
- #有線電気通信法
- #電波法
- #迷惑防止条例
- #証拠収集
- #労働安全衛生法
- #弁護士保険
- #事業者のミカタ
- #コロナ
- #LGBT
- #事業継承
- #起業
- #マタハラ
- #解雇
- #M&A
- #借地借家法
- #サブリース
- #風評被害
- #情報開示請求
- #特定電気通信
- #自己破産
- #破産法
- #別除権
- #外国人労働者
- #セクハラ
- #ハラスメント
- #時効
- #個人情報保護法
- #サブリース契約
- #共同不法行為
- #外国人雇用
- #競業避止義務
- #退職金
- #職業選択の自由
- #弁護士
- #下請法
- #事件
- #過労死
- #注意義務違反
- #労働基準法
- #解雇権
- #不当解雇
- #著作権
- #フリー素材
- #契約書
- #業務委託契約
- #再委託
- #Web制作
- #デイサービス
- #訪問介護
- #老人ホーム
- #動画解説
- #定期建物賃貸借
- #定期賃貸借契約
- #損害賠償
- #不法行為
- #使用者責任
- #雇用
- #障害者差別解消法
- #差別
- #障害者
- #パワハラ
- #少額訴訟
- #裁判
- #破産
- #債権回収
- #交通事故
- #労災
- #内定取り消し
- #留保解約権
- #景品表示法
- #薬機法
- #家賃交渉
- #フランチャイズ
- #うつ病
- #未払い
- #遺失物等横領罪
- #無断キャンセル
- #業務上横領罪
- #誹謗中傷
- #賃貸借契約
- #家賃未払い
- #立ち退き
- #判例
- #就業規則
- #有給休暇
- #クレーマー
- #残業
- #入店拒否
- #予防法務
- #顧問弁護士
- #健康診断
- #個人情報
RANKING
-
01
【弁護士監修】相手に許可のない録音・盗撮は違法? 電話や会話の証拠を録音・録画する方法と機器を紹介
-
02
免責事項と注意事項は何が違う? その効力から職業別の例文までわかりやすく紹介。
-
03
【弁護士監修】客を選ぶ権利は法律に存在する? 入店拒否・出禁が違法になる場合とは。
-
04
【弁護士監修】少額訴訟のメリット・デメリットとは。費用・必要書類から手続きの流れまでを解説。
-
05
無断駐車への張り紙や罰金は有効? 無断駐車の対策と対応、してはいけないこと。
-
06
フリーランス・個人事業主が知っておきたい労働基準法の考え方と適用される要件
-
07
発注者なら知っておきたいフリーランス保護新法と下請法のポイントとは
-
08
【弁護士監修】レジ金の計算が合わない! その原因と対策。窃盗が判明した際の対処法とは。
-
09
店で泥酔した客が暴れたら損害賠償は取れる? 酔客トラブルの予防と対処法
-
10
キャンセル料は取れる? 予約の無断キャンセル(ノーショー)問題の対策と法律を学ぶ
動画で学ぶ!
事業者向け法律知識
同じカテゴリの記事
KEYWORDS
- #発信者情報開示請求
- #発信者情報開示命令
- #フリーランス新法
- #フリーランス
- #内容証明
- #臨床法務
- #戦力法務
- #債務不履行
- #威力業務妨害
- #内定
- #始期付解約権留保付労働契約
- #アルハラ
- #法律相談
- #慰謝料
- #知的財産権
- #窃盗罪
- #カスハラ
- #クレーム
- #私文書偽造罪
- #不法行為責任
- #問題社員
- #業務委託
- #時間外労働の上限規制
- #敷金返還請求
- #器物損壊罪
- #電気通信事業者法
- #有線電気通信法
- #電波法
- #迷惑防止条例
- #証拠収集
- #労働安全衛生法
- #弁護士保険
- #事業者のミカタ
- #コロナ
- #LGBT
- #事業継承
- #起業
- #マタハラ
- #解雇
- #M&A
- #借地借家法
- #サブリース
- #風評被害
- #情報開示請求
- #特定電気通信
- #自己破産
- #破産法
- #別除権
- #外国人労働者
- #セクハラ
- #ハラスメント
- #時効
- #個人情報保護法
- #サブリース契約
- #共同不法行為
- #外国人雇用
- #競業避止義務
- #退職金
- #職業選択の自由
- #弁護士
- #下請法
- #事件
- #過労死
- #注意義務違反
- #労働基準法
- #解雇権
- #不当解雇
- #著作権
- #フリー素材
- #契約書
- #業務委託契約
- #再委託
- #Web制作
- #デイサービス
- #訪問介護
- #老人ホーム
- #動画解説
- #定期建物賃貸借
- #定期賃貸借契約
- #損害賠償
- #不法行為
- #使用者責任
- #雇用
- #障害者差別解消法
- #差別
- #障害者
- #パワハラ
- #少額訴訟
- #裁判
- #破産
- #債権回収
- #交通事故
- #労災
- #内定取り消し
- #留保解約権
- #景品表示法
- #薬機法
- #家賃交渉
- #フランチャイズ
- #うつ病
- #未払い
- #遺失物等横領罪
- #無断キャンセル
- #業務上横領罪
- #誹謗中傷
- #賃貸借契約
- #家賃未払い
- #立ち退き
- #判例
- #就業規則
- #有給休暇
- #クレーマー
- #残業
- #入店拒否
- #予防法務
- #顧問弁護士
- #健康診断
- #個人情報
RANKING
-
01
【弁護士監修】相手に許可のない録音・盗撮は違法? 電話や会話の証拠を録音・録画する方法と機器を紹介
-
02
免責事項と注意事項は何が違う? その効力から職業別の例文までわかりやすく紹介。
-
03
【弁護士監修】客を選ぶ権利は法律に存在する? 入店拒否・出禁が違法になる場合とは。
-
04
【弁護士監修】少額訴訟のメリット・デメリットとは。費用・必要書類から手続きの流れまでを解説。
-
05
無断駐車への張り紙や罰金は有効? 無断駐車の対策と対応、してはいけないこと。
-
06
フリーランス・個人事業主が知っておきたい労働基準法の考え方と適用される要件
-
07
発注者なら知っておきたいフリーランス保護新法と下請法のポイントとは
-
08
【弁護士監修】レジ金の計算が合わない! その原因と対策。窃盗が判明した際の対処法とは。
-
09
店で泥酔した客が暴れたら損害賠償は取れる? 酔客トラブルの予防と対処法
-
10
キャンセル料は取れる? 予約の無断キャンセル(ノーショー)問題の対策と法律を学ぶ
動画で学ぶ!
事業者向け法律知識