不動産オーナー・経営者が知っておきたい事故物件への対処方法:予防が最大の自衛策

不動産経営に携わっていると、なんらかの形で関わってしまう可能性の高いトラブルのひとつとして「事故物件」があります。どのような事例があるのか、裁判などではどのように判断されるのか、よりよい対応策はあるのか。デリケートな問題だけに取り扱いがむずかしいこれらの物件についての対処法を、凡例を挙げてまとめました。

「事故物件」にはどのような例があるのでしょうか

ひとくちに「事故物件」といっても、パターンはさまざまです。文字通り「事故」が起きた物件だけでなく、広い意味で「なんらかの支障や欠陥=瑕疵(かし)のある物件」ととらえたほうがよいでしょう。まずはどのような例があるのか、以下に挙げます。

●物理的瑕疵物件

物件の建造物そのものに、ひび割れや雨漏りがある、シロアリなどの被害が出ている、過去に浸水などがあった、アスベストが使用されている、などの欠陥がある物件を指します。また、建物だけではなく、地盤沈下や土壌汚染、埋設物などがあるといった、土地に問題がある物件も含まれます。

●法的瑕疵物件

建築基準法、消防法、都市計画法などの法律により、なんらかの制限のかかっている物件を指します。構造上、安全基準を満たしていないこと、火災報知器やスプリンクラーなどの防災設備が整っていない、計画道路指定を受けている、接道義務に違反していること、開発が認められない市街化調整区域内に存在するといった例があります。

●環境的瑕疵物件

物件の近隣に、交通機関や幹線道路などに近く騒音や振動がある、大きな建築物があることによる日照や眺望に問題がある、ごみ焼却場や火葬場、墓地がある、また、暴力団の事務所やごみ屋敷などがあるといった物件を指します。物件そのものに問題があるわけではありませんが、注意が必要な問題です。

●心理的瑕疵物件

一般的に「事故物件」と言った場合にもっともイメージしやすい、自殺や殺人事件、自然死などによる死亡事故などがあった物件を指します。

所有する物件で事故が起こってしまったら

心理的瑕疵にあたるような事故は予見がむずかしいため、防ぎきれない部分があることは否定できません。ただ、どのような経緯で事故が起こってしまうのかを知っておくことは、迅速な対応や、善後策を立てる上でとても重要です。

平成29年12月、京都地裁での判決
賃借人共同住宅の一室で自殺をしたとみられる件。賃貸人は心理的瑕疵が生じたとして事故の3カ月後に、連帯保証人である賃借人の親に対し、損害賠償を請求。

請求の内容は、連帯保証契約に基づき、賃借人の債務不履行による貸室の修理・リフォーム費用、室内クリーニング費用12万円余、逸失利益として10年間分の賃料相当額468万円余の損害に加え、当該建物とその敷地を、通常の価格の約5割減額して第三者に売却したとして、当該減額相当額の損害賠償と原状回復費用、賃料の逸失利益として害1340万円余。

京都地裁は当該減額相当額の損害賠償請求は排斥し、逸失利益の一部、及び原状回復費用を認容した。

その他の例として、平成26年の東京地判として賃借人の同居人の自殺事故が発生して隣室居住者から賃料減額要請があり、貸主は応じたが、当該減額を逸失利益として認めなかった事例、平成27年に仙台地裁で、賃貸住宅の一室のバルコニーで発生した自殺事件が、他の貸室の賃料額や駐車場使用料にも影響したとして建物全体のリフォーム費用を請求した賃貸人の主張を棄却した事例がある。

賃貸住宅の賃貸人が、貸室で自殺事故が発生したことによる損害として土地建物全体の減価額や、他の貸室の賃料減額を主張して、連帯保証人・相続人等に賠償を請求した事案の裁判例はいくつか見られますが、認容された例は見受けられないようです。

裁判で事故物件と判断されたとしても、当該の部屋以外の部屋や賃貸の減収までは損害賠償の対象とはならないのが通例です。いかに事故物件と関わらないようにするか、あるいは事故物件にさせないための工夫をしていくことが重要となります。

判例の詳細はこちらから
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/112-122.pdf

もし事故物件を購入してしまったら

注意をしていても、さまざまな理由で購入した物件が事故物件であったということを完璧に防ぐことはむずかしいでしょう。では、もしも事故物件を購入してしまったらどうなるのか、実例をご紹介します。

・平成18年12月大阪高裁での判決

購入した土地に過去に存在し、その後は取り壊された建物内で殺人事件があったことが判明。購入者は本件建物で殺人事件があった事実が民法570条の「隠れた瑕疵」に当たるとして、売り主に対し損害賠償を請求して提訴。瑕疵担保責任が認められた。

 ただし、訴えが起こされたのが事件後8年経過していることや、建物がすでに取り壊されているなどの理由から、損害額は売買代金の5%相当額とされた。

当該建物が既に取り壊されているとはいえ、その土地で殺人事件があったという事実は、一般的に嫌悪の度合いも大きく、居住用に購入しようとする消費者はそう多くないと思われるため、判示は妥当であろう。一方、損害額の割合については様々な見方があり双方が納得する結果に至るとは言い切れない。

このように心理的瑕疵と呼ばれるものについて損害が認められた判例は稀ではない。平成元年9月横浜地判では、自殺があった建物について解約が認められた事例、平成11年6月東京地判での土地の真向かいに暴力団事務所があり、売主が9%の損害賠償を命じられた事例などがある。

判例の詳細はこちらから
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/80-140.pdf

事故物件と知らずに購入した場合、損害が認められる場合もあれば、それが軽微な影響しかないという判断をされた事例もあり、自衛策としては、あたりまえのようでも事前にしっかり調べることを怠らないようにすることが大切です。

(事故物件には告知義務があるとされます。「契約者の判断が揺らぐような事柄について、説明しなかったり虚偽を言ったりする行為を禁ずる」ということが法律にて定められていますが、事故物件であることの定義は解釈が含まれてしまうので、売主の判断次第では、告知されない可能性があります。)

事故物件を売却するには

事故物件の売却にあたっては、同じ地域の同様の条件の物件より売却価格が低くなってしまうことは避けられません。心理的瑕疵に類する事故の場合には不測の事態の色が濃く「事故物件」になってしまったとしても、基本的には所有者に非はありません。

しかし、民法第1条第2項に定められている信義則上の義務により、心理的瑕疵は告知しなければなりません。明確に期間が定められているわけではあり前戦が、過去の判例などからも、約10年は説明が必要とされているのが現状です。後々トラブルになるとかえって困難な状況になりかねません。売却するにあたり、条件的に不利になることがあるとしても、正確に、丁寧に、説明することを心がけましょう。

売却価格については、事故から年数を経ればある程度減額が小さくできるので、時を待って売却するという形が一般的なようですが、トラブルを抱えるより価格を下げても早く手放すという選択もあります。どちらを選ぶかは所有者の運営の判断によります。

予防が最大の自衛策と心得ましょう

さまざまな事例がありますが、やはりトラブルはないにこしたことはありません。最大の自衛策は所有する物件が事故物件にならないようにすることです。予知、予見がむずかしいとはいえ、工夫の余地は残されています。そこで予防策をまとめてみました、

物件の建造物そのものに、ひび割れや雨漏りなどの欠陥がある場合や、地盤沈下など土地に障害がある物理的瑕疵物件、建築基準法、消防法、都市計画法などにより、なんらかの制限のかかっている法的瑕疵物件、騒音や振動、近隣の施設や住宅に問題がある場合などの環境的瑕疵物件については、少なくとも購入時点の状況については予知、予見が可能ですので、物件購入前によく調査するとともに、実踏による確認を怠らないことです。購入後に問題が発生した場合には、都度対応していくしかありませんが、近隣の区画整理や道路の変更、建設計画などについては、直近の予定は公開されているはずなので、調査項目については近未来についての項目もリストに入れておくようにしましょう。

予見の難しい、自殺や殺人事件、自然死などによる死亡事故などの心理的瑕疵物件になるのを回避するためには、まず大切なのが入居の際の審査です。詳しく丁寧な審査により、事故を起こす可能性の低い人をフィルタリングすることは、ある程度まで可能です。また、近年は連帯保証人を不要とする例も増加する傾向にありますが、安心、安全のためには、借り主の身元を保証する連帯保証人を立てることを課すこともひとつの手段です。


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