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予防法務や戦力法務、臨床法務とは? 企業における法務に対する取り組みの重要性と具体例

2023年11月27日 2023年11月27日

会社経営・事業経営 企業法務・法律
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予防法務や戦力法務、臨床法務とは? 企業における法務に対する取り組みの重要性と具体例

予防法務は平時において、企業の法的リスクへの対処に当たる活動全般のことです。一旦、法的トラブルが発生すると、紛争解決のために多大なコストと時間がかかる上、企業の社会的なイメージが下落してしまいます。最悪の場合は、企業の倒産に直結します。法的紛争が起きてから、弁護士に相談したり、対処したりしても遅いのです。この記事では、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主でも予防法務に取り組むことが大切であることをお伝えします。

予防法務とは

予防法務とは、企業法務の一つで企業が法的トラブルにより疲弊することを防ぐための取り組み全般を指します。
大きく分けると、次の二つの観点から予防法務に取り組みます。

  1. 企業が法的紛争に巻き込まれることを防ぐ。
  2. 企業が法的紛争に巻き込まれた場合でも速やかな解決が図れるようあらかじめ策を講じておく。

企業が締結する契約書のチェック、企業の知的財産権、債権の管理、就業規則や法令遵守体制の整備などの活動がこれに当たります。

予防法務と戦略法務、臨床法務の違い

企業における法的取り組みのことを企業法務と言います。企業法務は、予防法務、戦略法務、臨床法務と言った分類もできます。

戦略法務は「攻め」の法務

戦略法務は、企業の積極的な戦略を法的な面からサポートする取り組みです。例えば下記のようなものが挙げられます。

  • 新規事業を立ち上げる際に、事業内容が法規制に抵触しないか調査したうえで必要な法的サポートを行う。
  • 企業が海外進出する際に、現地の法規制を調査し、法人設立などの法的サポートを行う。
  • 企業の合併、買収等M&Aを行う際に、対象会社の調査、契約書類の確認などの法的サポートを行う。

戦略法務は、企業の積極的な戦略を後押しするいわば「攻め」の法務と言えます。

臨床法務は「治癒」の法務

臨床法務は、企業が法的紛争に巻き込まれてしまった場合に解決を図るための法律事務のことです。例えば下記のようなものが挙げられます。

  • 取引先等が売買代金を支払わない場合に、法的手段により債権回収を図る。
  • 他の企業から知的財産権の侵害を理由に損害賠償請求を求められた場合にその対処に当たる。
  • 元従業員から不当解雇を理由に訴えられた場合にその対処に当たる。

臨床法務は、企業に生じた損害を回復するためのいわば「治癒」の法務と言えます。

予防法務は「守り」の法務

それに対して、予防法務は平時における企業の経営をサポートするいわば「守り」の法務になるため、戦略法務、臨床法務に比べると地味な活動と言えるでしょう。それだけに予防法務の重要性が気づかれにくいという特徴があります。

パソコンで例えれば、セキュリティソフトのおかげで普段、安全に使えているのに、そのありがたみにあまり気付いていないようなものです。一旦、セキュリティソフトが解除されてしまうと、危険性は増大します。予防法務を全く行っていない企業は、セキュリティソフトのないパソコンを利用しているようなものなのです。その危険性を想像していただけるのではないでしょうか。

予防法務の重要性

予防法務に取り組んでいない企業は、実際にどのような損害を被ってしまうのでしょうか? いくつかの例を紹介してみましょう。

取引先から示された契約書をチェックしていない

予防法務の代表例として挙げられるのが契約書のリーガルチェックです。

相手側から手渡される契約書は、往々にして、相手方に有利な条項が盛り込まれているものです。しかし、契約書には普段見慣れない言い回しが盛り込まれているので自社にとって不利なのかどうかよく分からないこともあるでしょう。そのような場合に、契約内容をしっかりチェックしないままに署名押印してしまうと、後で相手方から自社にとって不利な要求を突き付けられてしまいます。もしも、その要求が不利だとすれば「そんな要求は法律的に認められないから弁護士に頼めば、なんとかなるでしょ。」と思っていませんか?

しかし、契約自由の原則と言い、基本的にどのような内容の契約を結ぼうと、当事者が納得していれば問題ないとされています。契約書に署名押印したということは、不利な内容であっても、納得したものと推定されるわけですから、後から不服を唱えたところで手遅れなのです。確かに、契約関係の根拠法である民法には、信義誠実の原則だとか、権利の濫用は許さない。公序良俗に反する契約は無効といった趣旨の条文があります。しかし、契約の無効を主張できるのは、よほど理不尽な場合に限られていて、単に自社に不利な内容だからという理由で無効を主張することはできません。そのため、あらかじめ、相手側から示された契約書を弁護士に確認してもらうことが大切なのです。

弁護士に契約書のリーガルチェックを頼むことで、費用は掛かりますが、後で不利益を被ってしまうことを考えれば大した額ではないはずですし、その契約を締結することによりもたらされる利益によって十分カバーできるものなのではないでしょうか。

自社の商品が他社から商標権侵害を理由に訴えられてしまう

自社でアイデアを出して商品名を設定し先行して売り出していたのに、後発の他社から商標権侵害を理由に訴えられてしまうことがあります。せっかくよいネーミングを考えても、商標登録を受けていないと、後発の他社に先に商標登録をされてしまいます。

このような事態を防ぐためには、新商品を売り出す時は同時に、商標登録をしておくことが大切です。商標権は知的財産権の一つですが、他にも特許権、意匠権、著作権などがあります。いずれも、自社でアイデアを出したならば、他社に先を越される前に登録を受けることで権利を保護する必要があります。

また、他社が有している知的財産権を使わせてもらうこともあるでしょう。このような場合は使用許諾契約を締結して、一定の利用料を支払わなければなりません。その契約交渉ではどこまで利用を許諾するのか、契約当事者間で食い違いが生じないように契約条項を念入りにチェックする必要があります。このように知的財産権をめぐるトラブル防止のための活動も予防法務の一種になります。

問題社員を解雇したのに逆に訴えられてしまう

最近は労働者側の権利意識が高まっており、従業員が会社に様々な要求をしたり訴えを起こしたりすることが増えています。従業員の要求が正当なものであれば、会社としては適切に対処しなければ裁判に発展したり、外部の労働組合の介入を招いたりする事態になりかねません。

従業員には問題社員やモンスター社員と呼ばれる厄介な人がいることもあります。例えば、非違行為を繰り返したり、会社の指示に従わなかったり、無断欠勤をしたり、ハラスメントをしたりする社員です。こうした問題社員に対しては指導などにより改善を求めることになりますが、それでも改善が見られない場合は退職してもらう形になるでしょう。ただ、その手順や、やり方を間違えると逆に問題社員から訴えられるリスクがあります。

例えば、会社の上司などが問題社員に指導する場面でも、その指導の度が過ぎる場合はパワハラに当たるとして逆に訴えられかねません。また、退職してもらう場面でも退職を無理強いしたり、解雇の形にしたりすると不当解雇だと訴えられかねないわけです。裁判になったり、外部の労働組合が介入したりする事態になると、会社としてはその対応のためにリソースを割かなければなりません。何より厄介なのは、労働問題で訴えられたことが世間に知られることでブラック企業などという烙印を押されてしまい、採用活動や取引にも影響が出かねないことです。その様な事態を避けるために、どの程度の指導まで許されているのかや、不当解雇と訴えられないためにはどのような形で退職してもらうべきなのかを弁護士がアドバイスすることも予防法務の一種なのです。

以下の記事では漫画で紹介しているのでぜひご覧ください

モラルの低い従業員のSNS発信により会社が不利益を被る

最近はSNSの炎上がきっかけで会社の社会的な評判が大きく下落してしまう事案が増えています。例えば、飲食店の従業員が衛生上問題のある行為をしているシーンをSNSに投稿する。本人は注目を浴びたいだけかもしれませんが、お客様から見れば気持ち悪いだけでしょう。その投稿が炎上してしまうと、その飲食店が敬遠されるようになり、多大な損害をもたらしてしまいます。

こうした事態を避けるためには、ソーシャルメディア利用規程によりSNSでやってはいけないことを定めておくことが大切です。迷惑行為だけではなく、差別発言、誹謗中傷、機密情報や個人情報の漏洩を禁止する規定も合わせて盛り込む必要があります。もちろん、ソーシャルメディア利用規程を定めても、迷惑行為をする従業員が出て、炎上してしまうこともあるかもしれません。そのような事態を想定して、あらかじめ対処フローを定めて、迅速に解決できるようにしておくべきでしょう。

ソーシャルメディア利用規程は、社内規程の一種ですが、他にもハラスメント防止規程、契約書管理規程など、様々な社内規程を定めて従業員への周知を徹底することが大切です。
こうした社内規程の制定と運用について、弁護士がアドバイスすることも予防法務の一種です。

予防法務の重要性まとめ

以上に紹介したように、現在の企業は、外部との契約関係だけでなく、従業員との関係でも法的トラブルを抱えるリスクが潜んでいることから、予防法務に取り組むことが重要になっています。法的トラブルが発生した後で弁護士に相談したとしても

  1. 法的紛争解決のために多大なコストがかかってしまう。
  2. 企業の社会的なイメージが低下してしまう。

このような打撃は避けられません。企業が訴えられている場合は多額の損害賠償義務が生じて、下手すれば倒産の危機に追いやられてしまいます。金銭面ではそれほどの打撃がなかったとしても、裁判にリソースが取られますし、企業の社会的なイメージが低下することで売り上げに影響が出てしまったり、新たな資金調達が困難になってしまう恐れがあります。このような事態になってからでは、企業の損害を回復することは大変難しくなるため、トラブルが発生する前に弁護士にアドバイスを求め予防することが重要となるのです。

法務部員か外部の弁護士か

企業において、予防法務に取り組む人材としては、法務部員と外部の弁護士の2通りが考えられます。

企業内に法務部員を置く場合は、企業法務に関する豊富な経験を備えていることはもちろん、業界特有の規制法にも精通していることが求められます。例えば、金融関係であれば、金融関連法令の深い知見を有している必要があります。そのうえで、その企業の活動内容を踏まえて、リスク分析を行い、適切な解決策を立案する能力が求められます。こうした人材が企業内にいない場合は、外部の弁護士との顧問契約を結び、予防法務を依頼すべきでしょう。

法務部員がいる場合でも、外部の弁護士との連携があった方がより精密な予防法務を行うことができます。法務部員は企業内において、法的リスクをいち早く察知できる立場にいます。日常的な法的リスクへの対処なら難なくこなせるでしょう。しかし、複雑な法律問題が絡む事案になると対応が難しいこともあります。また、企業内の人間であるため、客観的な視点から企業の法的リスクを検討することが難しいこともあります。一方、外部の弁護士は、より高度な専門家として、複雑な法律問題が絡む事案に対処できますし、外部の人間なので、客観的な立場で、その企業の法的リスクを洗い出すことができます。

このように法務部員と外部の弁護士とでは、予防法務において果たすべき役割が異なります。法務部員と外部の弁護士が連携することにより、より効果的な予防法務を行うことができると期待されます。

トラブルに備えていつでも弁護士に相談できる体制を

上記のように、事業を行っていくうえで様々な法的トラブルに巻き込まれる可能性があり、常日頃から備えておくことが大切です。ただ「これだけのために弁護士に相談していいのか」「弁護士に相談するには費用が心配」「どこに相談したらいいかわからない」と、弁護士を利用するハードルが高いと考えている方も多いでしょうし、小規模事業者の場合、法務部や顧問弁護士との契約は難しいと思います。そこでおすすめなのが弁護士保険です。

弁護士保険に入れば弁護士費用が補償される

しかし、弁護士に相談したことのない方からすると、弁護士探しや費用、相談の仕方など不安なことも多いと思います。そこで当サイトがオススメしているのが弁護士保険です。弁護士保険は月額数千円で弁護士への相談費用や、訴訟に発展した場合の弁護士費用などが補償されるため、気兼ねなく弁護士に相談できるようになります。

弁護士保険に入るメリット

1.トラブルに発展する前に予防できる

弁護士保険に加入すると、弁護士保険加入者証や弁護士保険加入ステッカーがもらえます。これを提示することで「こちらはいつでも弁護士を使える」という姿勢を相手に伝えることで無断キャンセルの抑止力となります。

2.弁護士への電話相談が無料で出来る

弁護士のへの電話相談が無料で行えるといった付帯サービスが付いてきます。トラブルの概要を話し、そこからどう動くのが最善かを法律の専門家からアドバイスしてもらえます。

3.弁護士費用・裁判費用が補償される

それでも解決できずに訴訟などに発展したとしても、一般的に弁護士を使った時にかかる着手金や訴訟費用は保険で賄われますので高額な出費を恐れる心配がありません。

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