かぼちゃの馬車事件から考える、不動産オーナーが知っておきたい法的リスク

「かぼちゃの馬車事件」とは?

かぼちゃの馬車事件は、株式会社スマートデイズが展開していた女性専用シェアハウスブランド「かぼちゃの馬車」をサブリースする中で発生した事件です。「敷金礼金ゼロ」「仲介手数料無料」という初期費用の安さに加え、月額の賃料は管理費を含めても4万円程度とかなり低めの設定がされていた「かぼちゃの馬車」。ベッドや冷蔵庫などの家具家電も最初から用意されていたため、地方から上京する女性を中心をターゲットに運営を行っていたようです。

この物件を投資用不動産として、販売・運営を行っていたのがスマートデイズ社。彼らは、約700名にものぼるといわれている投資家を集め、約800棟10000室もの商材を販売していたのだそう。それもそのはず、彼らが持ちかけていたサブリース契約は「利回り8%」「保証30年間」という高利回り・長期保証。これが実際に行われていたとすれば、多少の借金を負ってでも、この物件に投資すると儲かることは約束されているようなもの。不動産投資によって副収入を得たいと考える、アッパーミドル層(年収800万円〜程度)のサラリーマンの多くは、この投資話に飛びついたといいます。

しかし、2018年1月頃からオーナーへのサブリース賃料の支払いが滞るようになり、問題が発覚。実は「かぼちゃの馬車」事業が大赤字の営業スタイルのまま運営を続けていたことがわかったのです。2018年3月時点でその赤字額は60億円にものぼるとされ、4月にスマートデイズ社は東京地裁に民事再生法の適用を申請。しかし、その申請も棄却され破産手続きを行うことに。破産時の債権は1000億円にまで膨れ上がっていたのです。

サブリース契約のため、シェアハウスに入居者が残っていたとしても、スマートデイズ社からの賃料振り込みがない限りオーナーに入る収入はゼロ。これにより、銀行からのローンが返済できなくなり、自己破産をするオーナーが多数でてきてしまったというのが、「かぼちゃの馬車事件」の大まかな概要です。

「かぼちゃの馬車事件」は、何が法律的に問題視されているのか?

スマートデイズ社は、自ら締結したサブリース契約に対して違反する行為を行っています。そのため、購入者に対して債務不履行責任を負うのが一般的。しかしながら、先述の通りスマートデイズ社はすでに破産しているため、免責となってしまうと考えられるです。

この事件で問題視されているのが、オーナーが融資を受けていたスルガ銀行のずさんな体制にあります。1棟あたり、1億円ほどかかるとされていた「かぼちゃの馬車」への投資を行うためにオーナーの多くは、スマートデイズ社からの紹介でスルガ銀行から融資を受けていたのです。「かぼちゃの馬車」へ投資したオーナーたちは、不動産投資の経験が少ない人も多かったなか、スルガ銀行からの融資は簡単に通ったのだそう。これは、スルガ銀行側による不正があったからなのです。スルガ銀行の融資審査を受けるにあたり、資産状況を示す資料として預金通帳等のコピー等のプロフィールシートをスマートデイズ社に渡し、手続を任せていたそうです。そこで、通常であれば融資が通らないようなケースであっても、スルガ銀行の融資基準を満たすよう、スマートデイズ社による改ざんされていたケースが数多く見つかっていたのです。そしてスルガ銀行側もそれを黙認し、オーナーに対してローンを組んでいったと言われています。

サブリースを巡る判例の紹介

それでは、過去のサブリース契約に関する裁判の判例をみてみましょう。

この裁判では、オーナー側がそれまで貸し駐車場を運営していた土地に対して、会社がサブリース契約でのマンション建設を持ちかけ、オーナーは銀行から3億6000万円の借り入れを行いマンションを建設しました。当初、1部屋5万2000円での賃料での貸し出しが想定されていたが、賃料は後に低下。5万円以下の部屋が多くなっていったのだそう。その後、8年後の水道メーター交換や、10年後の大幅修繕の実施に対してオーナー側が負担することに対して契約と違うと感じたオーナー。実際に、会社側から受けていた収入状況の説明に虚偽があったことなどから、先の見通しが立たないと感じ建物を売却。オーナー側は、会社側に対して虚偽・不当な勧誘及び、説明義務の怠り等の不法行為を主張。会社に対して建物売却額の差額と弁護士費用の一部並びに、遅延損害金の支払いを求めて提訴したのです。

判決ではオーナー側の請求を一部容認し、損害金額の一部が支払われることになりました。サブリース契約に際して会社側が「家賃の9割を保証する」と強調した契約であったこと、また修繕費用を中心とした負担金額に関するシュミレーションが著しく過小であり、説明不足だったことがポイントとなり、オーナー側の主張が認められた判決だと言えるでしょう。

判例の詳細はこちら
https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/109-102.pdf

判例から分かること

上記の判例において、オーナー側は不法行為(この場合、契約提案書などでの修繕費についての説明での信義則上の義務に違反)を知らされていません。そのため、判決のように会社からの損害賠償を受けるなど免責される可能性は十分あるのです。

共同不法行為が成立してしまう可能性も

しかしながら「かぼちゃの馬車事件」の場合、訴状では、「残高を改ざんすることができます」「銀行の担当者もすでに知っています」など、オーナー側に事前に告げた後に、年収資料や預貯金残高を改ざんしているケースがあったそう。つまり、本来であれば投資することのできない高リスクの投資物件に投資していたこをオーナー側も認識しているということになり、共同不法行為にあたると解釈される可能性があるのです。共同不法行為とは、複数の関係者が関与することで権利侵害を発生させること。つまり、通帳の偽造等をオーナー側が知っているのであれば、不正の融資を引き出したという認定がされる可能性もあるのです。

かぼちゃの馬車事件から学ぶこと〜オーナーの法的リスク〜

2020年3月に、スルガ銀行と被害者側の弁護団は、土地と物件を手放すことで、ローンによって生じた借金を帳消しにするという和解で合意。スルガ銀行が約440億円を負担することになりました。今回のケースは、銀行側の行為が非常に悪徳だったことから、オーナー側の借金がなくなる異例の結果になりました。しかし、投資を行う際はリスクを考え、自己責任で行わなくてはなりません。

この事件から学ぶことは、いくつかあります。まず、不動産投資に際しての説明はしっかりと受け自身が投資する物件に関する情報は、しっかり把握しなくてはならないという点。実は、多くの不動産投資家は「かぼちゃの馬車」に対して当初から不信の目を向けていたといいます。高すぎる物件価格と家賃保証、立地の悪さと部屋の狭さ、利回り8%に対して3.5%での融資など、不動産投資に対してある程度の知識がある人であれば、案件自体が立ち行かなくなることを予想できたのだそう。つまり、初心者が不動産投資に手を出す場合には、会社からの説明の言葉を鵜呑みにすることなく、キャシュフローの計算、建設地周辺の情報、物件の情報などを予め調べて慎重に進めていかなくてはならないのです。

また、提出する資料は自らで確認することが大切。今回のように、スマートデイズ社側によって書き換えられたオーナーの資産状況も、自らでチェックすれば明らかに不正が行われていることがわかるはず。そして、不法行為が行われていると認識した時点で弁護士側に説明・相談をすれば、このような自体は免れた可能性が高いのです。

「かぼちゃの馬車事件」を教訓に、不動産投資を行う際は自らのリスクもしっかりと考えた上での決断が必要だと言えるでしょう。

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